【家族信託を活用した相続対策】かかる税金や具体事例も紹介

【家族信託を活用した相続対策】かかる税金や具体事例も紹介

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認知症対策として知られている「家族信託」ですが、設計の仕方により相続税対策にもなります。

この記事では、相続の対策としてどのように家族信託を活用できるのか、また、実際の活用事例や関係する税金の面について、わかりやすくご紹介します。

家族信託はどんな仕組み?

はじめに家族信託の仕組みについて簡単に解説します。

家族信託は「自分が持っている財産を、信頼できる家族に託して、自分の代わりに管理運用してもらう仕組み」であり、高齢となる親が、自分の財産管理を信頼できる子どもに託すことができるようになる仕組みです。

家族信託には、財産を預ける立場の人(委託者)財産を預かって管理運用する立場の人(受託者)財産から得られる収益を受け取る立場の人(受益者) の3者が存在します。

委託者と受益者は同じ人にすることができ、ほとんどの場合、家族信託を始めるときは委託者=受益者(自益信託)とします。

一番多い事例は、親が委託者兼受益者となり、子どもを受託者として家族信託契約をするケースです。

受託者である子どもは、家族信託契約で決めた目的のために、信託契約で決めた方法に従って委託者(親)の財産の管理運用を行います。

信託した財産は、形式上は受託者である子どもが所有するものとなり、親の生活費や介護費・入所費などに支出できるようになるのです。

家族信託の仕組みを使った相続対策|遺言書や後見制度との違いは?

相続対策として家族信託を利用したい場合、どのような方法があるのでしょうか。また、遺言書や成年後見制度とはどのように異なるのでしょうか。これらの疑問点について解説します。

【1】自分の死亡後も財産の管理について指定できる

家族信託では、契約のスタート時点ではその多くが委託者=受益者となり、財産からの収益を委託者自身が受け取るようにしています。

そして同時に、自分が亡くなった後に受益権をどうするか、という内容についても家族信託で決めておくことができるのです。

◆ 遺言書との違い

財産を引き継ぐ人を指定する場合、「遺言書」でも指定が可能です。遺言書に、どの財産を誰に相続させるかを記載することにより、相続人の指定を実現することができます。

ただし遺言書で指定することができるのは、自分が亡くなった時点(一次相続)での相続人に限られます。

自分が指定した相続人がさらに死亡した場合(二次相続)の承継者までは、自身の遺言書で指定することはできません。

依頼の形で一次相続人に希望の内容を伝えることはできますが、二次相続の際の遺言書の内容まで強制することはできないのです。

◆ 家族信託なら二次相続も指定できる

一方、家族信託であれば二次相続の承継者についても契約で決めておくことができます。

家族信託契約で自分が死亡した時(一次相続)の受益者を指定できることはもちろん、二次相続のときの受益者についても決めておくことができるのです。

親族間の人間関係に心配があったり、この財産はこの子に引き継がせたいという意向など、相続にまつわる心配事は人それぞれだと思います。

このように二次相続まで相続財産を指定することができますので、指定をしたい場合には家族信託を検討する価値は非常に高くなるといえます。

◆ 優れている「遺言書と家族信託の併用」

ただし、遺言書と比べて家族信託契約がそれだけで完全に優れているというわけではありません。相続税対策は、遺言書と家族信託を併用することで、より希望に沿った内容を組むことができるからです。

とくに家族信託では対象とできない財産もあるため、その場合は遺言状との併用効果が高まります。

《家族信託できない財産》

信託は原則として、「金銭的な価値がある」「分離可能」「特定できる財産」が信託できます。例えば宝石や絵画、自動車、知的財産権も信託可能です。

家族信託できない財産として、「農地」や「年金受給権」などの一身専属権、借金やローンなどのマイナスの財産が挙げられます。

ただし、不動産にローンが残っている場合でも信託財産とすることは可能です。

金融機関の抵当権が設定されている場合でも、あらかじめ金融機関の承諾を得ることで信託できるようになります。

年金については口座に振り込まれた残高は信託できますが、受給権そのものは信託できないという考え方です。

また、農地については「農地法」の規制があり、信託できない財産とされています。(農地の宅地転用許可が出れば信託可能となります。)

そのほか、金銭的価値に置き換えることができない「名誉・称号」や、家族信託の受託者口座の開設が可能な証券会社が少ないため実務上、信託が難しい「投資信託商品」などは信託しにくい財産となります。

《家族信託と遺言書の併用》

これら信託できない財産がある場合は、将来の相続内容について遺言を作る必要があります。

家族信託と遺言書との併用で、より良い相続方法につながる可能性もありますので、それぞれの特徴をよく理解したうえで活用していきましょう。

【2】自分の判断能力がなくなったとしても受託者が相続税対策として資産運用を続けられる

相続税はお金持ちだけの話と思っていたら、不動産価格の上昇により思いのほか相続税が高くなることが分かった、というケースもあります。

将来、相続が発生する時点での相続税がいくらになるのか、未確定な部分もあるでしょう。

相続税の対策としては、財産の評価額を下げることがポイントとなります。

たとえば預貯金をそのまま所有するのではなく、不動産を購入することで財産の評価を下げる方法があります。

不動産を購入する際に借入れを利用すると、さらに遺産総額を低くすることもできます。

不動産など大きな額でなくても、夫婦二人分の墓地や墓石、仏壇や葬儀プランを購入しておくことも相続税対策の1つになるのです。

《判断能力の低下の不安を支える家族信託契約》

しかし、高齢になり判断能力に自信がなくなってくると、相続税対策のために自分の財産の運用を検討したり、単独で契約をしていくことに不安を感じるケースもあるでしょう。

相続税対策で役立つと分かっていても、借入れなど、自分の年齢で新しい借金を負うことに悩むこともあると思います。

そのような不安がある場合、家族信託契約を活用して財産を家族や親族などに託し、相続税対策のための運用を任せる方法が考えられます。

家族信託契約を結ぶときの契約内容で決めておくことにより、将来、認知症になるなどして自分の判断能力がなくなった後も、そのまま継続して資産運用を家族に任せることができます。

不動産の取得や建築に年数がかかる場合でも、不安なく資産運用の状態の維持・継続が可能となるのです。

◆ 成年後見制度との比較

判断能力を失った場合の財産管理の手段としては、家族信託のほかに「成年後見制度」もあります。

成年後見制度は、本人が意思能力を失ったあと、家庭裁判所に申し立てて後見人を選任してもらい、財産管理などを行う制度です。

この制度は家庭裁判所を通して被後見人(判断能力を失った人)の財産を守るための制度であるため、基本的にリスクのある資産運用や節税対策などは認められていません。

あくまでも、本人の財産を「守る」ことを目的としています。

そのためこれから資産運用や相続税対策を考えているなら、親族の協力で実行できる家族信託のほうが活用度や自由度の面で有利だといえます。

家族信託に関わる税金とは

家族信託による相続の対策を考えるときに、家族信託の利用で発生する税金のことが気になるかもしれません。

以下、一般的に家族信託でかかる可能性のある税金について解説します。

(1)受益者にかかる可能性のある税金

受益者(財産の収益を受け取る立場の人)にかかる可能性がある税金は以下のとおりです。

① 贈与税

贈与税は財産を自分以外の人に無償で譲渡したときにかかる税金です。(年間110万円までの贈与であれば贈与税はかかりません。)

家族信託で信託財産から収益が生まれる場合、委託者と受益者が同一(自益信託)であれば利益が所有者以外の人に動くわけではないので、贈与税は基本的に課税されません。

ただし、委託者と受益者が別の人である場合には、受益者は信託財産から収益を受け取るため、委託者から受益者へと贈与が行われたものとみなされて、贈与税が課税される場合があります。(相続税法9条の2第1項)

法的には委託者と受益者を別の人に設定することは可能ですが、このような背景があるため家族信託においてはほとんどの場合、委託者=受益者として信託を設定しています。

② 所得税

所得税は、給与や不動産収入などの所得に対してかかる税金です。家族信託で信託財産から利益が生じた場合は、受益者に対して所得税及び住民税が課税されます。

例えば信託財産として賃貸マンションがある場合、家賃収入に対して所得税及び住民税がかかり、受益者に課税されます。

ただし家族信託においては①贈与税で解説したように、一般的に委託者=受益者のため、委託者がもともと納めていた所得税を受益者の立場で納めるだけです。

家族信託を始めたことが理由で税金が増える、という主旨ではありません。

③ 相続税

相続税は、遺産総額が一定金額以上ある場合に、遺産を相続する人に対してかかる税金です。

家族信託において将来、「委託者=受益者」が死亡した場合に、受益者としての権利(受益権)が相続人に移った場合には、遺産を相続したものとして相続税がかかります。

相続税額が大きくなると想定される場合には、家族信託を活用するにあたり、税理士などの専門家に相談しながら設計するとよいでしょう。

(2)受託者にかかる可能性のある税金

受託者(財産管理を委託された人)にかかる可能性がある税金としては以下のものがあります。

なお、形式上は受託者に課税されるものであっても、実際には受託者が自己負担して支払うケースは少なく、信託財産の中から必要経費として支払うことが一般的です。

① 固定資産税(不動産がある場合)

不動産の所有者には、不動産の評価額に応じて毎年、固定資産税の支払いが義務つけられています。

不動産を信託財産にした場合、形式上、不動産の所有権は受託者のものとなるため、受託者宛てに固定資産税の納税通知書が届くのです。

受託者は、信託の事務処理に関連する費用として、預かった信託財産からこの固定資産税を工面します。

なお、通常は不動産の所有者が変わると新所有者に対して不動産取得税がかかりますが、「所有権移転」については信託の場合、不動産取得税がかかることはありません。

② 登録免許税(不動産がある場合)

登録免許税は、登記をするときにかかる税金で、不動産を信託する場合、その不動産の所有権を委託者から受託者へ名義の変更をする段階で登記手続きを行います。

信託財産の場合は「所有権移転登記」と「信託の登記」です。

この登録免許税については信託財産から費用を支払うのが通常ですが、登録免許税は不動産の評価額に基づいて算定されるため高額になるケースもあります。

具体的には、不動産の評価額の0.4%(土地については0.3%)という税率です。

例えば、評価額10億円の建物を保有している場合、それを信託し移転登記すると400万円の 登録免許税が発生することになります。

※家族信託で必要となるの費用についてはこちらをご参照ください
家族信託の費用について

家族信託は相続税対策や節税対策になる?

このように相続対策として活用しやすい家族信託ですが、家族信託をすることで節税対策は可能なのでしょうか。

実は、家族信託の制度を利用しても直接的な節税の効果はありません。

資産を一定以上持っている人の場合、相続税を心配することが多いでしょう。家族信託を利用することで何らかの相続税への効果があるかと言うと、ないというのが実状です。

但し、前述したように、家族信託をしておくことで、委託者の意思能力喪失後も相続税対策を続けられる、といった効果が生じるため、間接的な節税効果は得られると言っていいでしょう。

●参考記事:家族信託すると税金(相続税・贈与税)は安くなる?

【活用事例】家族信託による相続対策

家族信託による相続対策として、実際にどのようなものがあるでしょうか。具体的な活用事例を紹介します。

事例① マンション建設を行うために家族信託

Aさんは80歳を過ぎていますが、自宅とは別に親から相続した土地を所有しています。この土地は、現在空き地となっており、毎年固定資産税を払うだけの状態になっていました。

このままAさんが死亡して相続が発生すると、Aさんの子どもに多額の相続税がかかってしまいます。

そのため、銀行から融資を受けてマンションを建設したいと考えていますが、マンションが完成するまでに2年程度はかかる予定です。

Aさんは少しずつ自分の判断能力の衰えを感じており、マンション建設まで自分の判断能力を維持できるのか、また、マンション建設後も自分で維持管理していくことができるのか心配です。

そこで、Aさんは一人息子のBさんを受託者とする家族信託契約を結ぶことにしました。

それにより、マンション建設に関する契約や銀行での融資の手続きなどをBさんに行ってもらうことができます。

万が一マンション建設中にAさんが認知症などになってしまっても、完成したマンションはBさんの名義で登記を行い、Bさんによりマンションの管理を行うことができるため、安心です。

事例② 二次相続の対策をするために家族信託

Aさんには2人の息子(長男B、次男C)がおり、2人に対して平等に財産を残したいと考えています。

ただ、Bには子どもがいますが、Cには子どもがいません。そのため、Cに残した財産が、Cの亡き後はCの妻に引き継がれてしまうことが気になっていました。

AさんはCの妻とは折り合いも悪く、できれば自分の財産がCの妻に引き継がれる事態は避けたいと考えています。

Aさんは、遺産の相続人を指定する方法として、まずは遺言書の作成を検討しました。

しかし、遺言書では、自分が亡くなった時の相続(一次相続)についての相続人を指定することはできても、相続人である子どもが亡くなった時の相続(二次相続)についての相続人を指定することができないことがわかりました。

そこで、Aさんは家族信託契約により、まず、自分が亡くなった時の受益者としてBとCを指定したのです。

息子2人には平等に財産を残しつつ、二次相続が発生した場合の受益者はBの子どもを指定しました。

このような設計にすることで、自分の血のつながった孫に財産を引き継がせる仕組みを作ることができたのです。

事例➂ 不動産の共有によるトラブルを避けるため家族信託

Aさんは賃貸マンションを所有していますが、それ以外に目立った財産はありません。

Aさんには子どもが3人(長男B、次男C、長女D)いて、3人に平等に財産を残したいと考えていますが、Aさんにはこのマンション以外の財産はほとんどないため、このマンションを3人に共有させるしかありません。

ところが、この3人の子どもたちは仲が悪く、マンションを共有した場合、トラブルが容易に想像できます。

不動産を共有財産にすると建て替えや売却には全員の合意が必要となるため、3人が共有することは避けたいと考えました。

そこでAさんは家族信託契約で長男Bを受託者とし、Aさんの亡き後の受益者は、B、C、Dの3人を指定したのです。

これにより長男Bが1人で不動産の管理運用を行うことができ、不動産の共有によるトラブルを避けつつ、収益は3人に平等に入る仕組みを作ることができました。

● 家族信託と相続について
家族信託をしたら相続や税金はどうなる?

資産の引き継ぎを想定した家族信託の活用

家族信託を利用しても、直接的な節税効果を期待することができるわけではありません。

ただし、家族信託を活用することで、自分の判断能力がなくなった後でも、信頼できる家族に相続税対策や資産運用などを託すことができます。また、家族信託は二次相続の対策についても有効です。

ご紹介した事例などを参照の上、家族信託の活用を検討してみてください。

カテゴリー: 家族信託と税金

この記事の監修者
梶原 隆央(かじわら たかひさ)

司法書士
梶原 隆央(かじわら たかひさ)

神奈川県出身/平成21年司法書士資格取得 トリニティグループの信託部門にて、実家信託から信託財産数億円に及ぶ信託、自社株式の信託等、幅広く信託案件に対応。

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