要約

  • 「代理人」は不動産売買の契約や事務手続きはできるが売却するには本人の「意思確認」が不可欠
  • 認知症で本人の「意思確認」が出来なければ「代理人」が不動産を売却することはできない
  • 成年後見制度を活用することで売却は可能だが、費用や手間などデメリットが多い
  • 家族信託では受託者に不動産を売却する権限を与えた場合、売却をすることができる
  • 「意思能力」に不安がある場合には家族信託を活用しましょう

家族信託をご検討の方へ

あなたのご家庭にとってなにが一番合った財産管理の方法なのか、ご状況に応じた適切な対策を一緒に考えさせて頂きます。

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認知症となり判断能力が低下してしまった場合にできなくなる事の代表例として、「不動産の売却」が挙げられます。

ゆくゆくは自宅を処分したい、相続対策で不動産の売買をしたい、など想定している人もいることでしょう。

しかし、資産の売却には本人の意思・判断能力が必要であり、身内が代理をしようとしても代理人だけですべての不動産の手続きは出来ないのです。

その理由は、不動産取引の手続きにあります。

この記事では、不動産取引の手続きや流れに加え、なぜ代理人を立てても不動産の売却ができないのかについて解説していきます。

不動産取引の手続きとその流れ

まずは不動産取引の手続きとその流れについて簡単に見ていきましょう。一般的に不動産取引は、 ①売買契約②決済(引渡し) といった2段階で行われます。

最初の売買契約では、売主と買主が取引する不動産に関する売買契約を締結します。この段階では、まだ売買代金の支払いや不動産の引渡しをする必要はありません。

実際に売買代金の支払いや不動産の引渡しを行うのは、次の「決済(引渡し)」の段階となります。 売買契約の日から数日空け、最終的な「決済(引渡し)」を迎えることになります。

決済(引渡し)では、買主は売主に対し売買代金の支払い、売主は買主に対して不動産の引渡しを行うことで、不動産の取引は完了します。

売買契約と決済(引渡し)を分ける理由ですが、これは、売買契約を締結した後、金融機関の融資(住宅ローンなど)に関する最終的な審査などの手続きが行われるためです。

不動産取引において代理が可能な手続きの例

では、不動産の取引において家族が代理人になった場合、本人に代わってどのような手続きをすることができるのでしょうか。

どの範囲まで代理権を与えるかは本人の判断となりますが、「一部の例外を除いて」、不動産取引にかかる全ての手続きをすることが可能となります。

《代理が可能な手続き》

売買契約の段階:売買契約
決済(引渡し)の段階:不動産の引渡し、売買代金の受領、領収書の発行など

ただし、この「一部の例外」が重要となるのです。

それが、決済(引渡し)の段階で司法書士が行う、所有者本人への「本人確認・意思確認」です。

【代理不可】登記のための「本人確認・意思確認」

不動産を売買した際には、売買によってその不動産の所有権が移転したことを示すため、登記がなされます。

この登記については、司法書士が行う仕事になります。

司法書士は登記すべき事実が実際にあったことを確認するために、決済(引渡し)の場に同席し、当事者間で不動産の売買が完了したことの確認を行います。

決済(引渡し)に同席をした司法書士は、売買における最終的な確認として、当事者に「本人確認・意思確認」といった手続きを行います。

「本人確認」とは、売主の場合、本当にその場に同席している方が「売主本人であるか」を確認する手続きです。

また、「意思確認」とは、売主の場合、今回売却する予定の不動産について「本当に売却する意思があるのか」を確認する手続きになります。

登記を引き受けた司法書士は売主本人に対して、これらの手続きを必ず行う必要があります。

そのため、不動産売買の一連の手続きを代理人に依頼している場合でも、この「本人確認・意思確認」の手続きだけは本人が直接対応しなければなりません。

意思確認の際には、生年月日、年齢、干支や、取引物件についての経緯なども確認をされます。

売主本人が認知症などにより、司法書士の「意思確認」の際に、売却にかかる意思を明確に表示することが難しい場合には、代理人が売買契約を締結した後だとしても、最終的には不動産を売却することはできません。

このように、不動産売買に関しては代理人が手続きを進めていても、本人への「本人確認・意思確認」は必須であり、これをクリアできなければ、最終的に不動産を売却することはできないということになります。

この場合、法定後見人を裁判所に選任してもらい、後見人が法定代理人として契約をしない限り、有効な契約にはならないのです。

信託財産なら本人確認・意思確認は「受託者」へ

家族信託をした不動産を売却する場合の手続きはどうなるのでしょうか。

不動産を信託し、その信託契約の中で受託者(財産を預かる者)に不動産を売却する権限を与えた場合には、以後は受託者の方が単独で不動産の売却をすることができます。

この場合、「受託者=売主本人」として扱われますので、登記に関する司法書士の「本人確認・意思確認」も受託者に対して行われることになります。

このように、不動産を信託財産としていた場合には、受託者が売却に関する一連の手続きを全て行うことができるようになります。

もともとの所有者である委託者の判断能力の状態にかかわらず、不動産の売却は可能となります。

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これから不動産取引に備えるには

不動産の売却には、売買契約の締結から不動産の引き渡し、売買代金の支払い等の流れがあり、代理人でも手続き可能な部分もあれば、本人に限られる部分もあります。

登記の際には司法書士による売主本人への「本人確認・意思確認」という手続きが必須なのです。平成20年に犯罪収益移転防止法が施行されたことに伴い、特定事業者として不動産業者(宅建業者)も本人確認を行うことがあります。

このように代理人が本人を代理できない部分があるため注意が必要です。

不動産の取引にはケースにより年数のかかる場合があります。とくに相続税対策を想定している場合は、取引に年数をかけるケースもあるでしょう。

不動産を売却する際の手続きについて不安なく進めたい場合、家族信託を契約していれば年数がかかる計画でも安心できますし、取引の継続に不安材料が無くなります。

不動産の取引の可能性がある、自宅を売却する時点での判断能力に不安がある、という場合には、家族信託を活用することを検討してみて下さい。

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