すでに成年後見人が付いている方のご家族から、うちも「家族信託はできますか?」あるいは「家族信託をしたほうがよいですか?」というご相談を受けることがあります。

家族信託について耳にして、認知症対策に効果があると聞いたので興味を持たれたようです。

すでに後見人が付いているケースでも、家族信託はできるのでしょうか?

以下、詳しく解説していきます。

要約

  • 後見人が付いている場合「本人」は家族信託することはできない
  • 「後見人」が家族信託をしようとしても既に財産管理権を持っているため認められない
  • 後見人をやめて家族信託に切り替えることは難しい
  • 後見人は一度始めると基本的に中止はできない
  • 成年後見制度の利用前に、併せて家族信託の専門家に相談をしましょう

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後見人が付いている「本人」が家族信託をすることはできるか

まず、家族信託について軽く触れておきましょう。

家族信託とは家族内で行うことのできる財産管理の方法の一つで、不動産や預貯金などの財産について、その管理・処分を信頼できる家族に任せる仕組みのこと です。

成年後見制度等の場合は、家庭裁判所の審判を要するため利用開始までに時間がかかり、また、後見人や後見監督人への報酬が必要となるためコストの面でもデメリットが指摘されています。

そのため、比較的活用しやすい家族信託が注目を集めるようになったのです。

家族信託については、以下にてご確認ください。

家族信託は「認知症による資産凍結」を防ぐ法的制度です。認知症が進行し意思能力を喪失したと判断されてしまうと、銀行預金を引き下ろせない、定期預金を解約できない(口座凍結)、自宅を売却できないなどのいわゆる「資産凍結」状態に陥ってしまいます。そのような事態を防ぐために、近年「家族信託」が注目されてきています。この記事では家族信託の仕組みやメリット、デメリットをわかりやすく解説します。
家族信託とは?わかりやすくメリット・デメリットを徹底解説します

では疑問への答えに移りましょう。

後見人が付いている場合に、被後見人である「本人」が家族信託をすることはできるのでしょうか。

結論としては「できません」

後見人が付くと、本人は契約などの法律行為を単独で行うことはできなくなり、本人が契約を締結したとしても、原則として取り消すことができる行為となります(民法9条)。

本人に意思能力がない場合は、契約を締結しても、そもそも「無効」とみなされ、契約が成立しないのです(民法3条の2)。

後見人が付いている場合、本人は認知症などによって、ほとんど意思能力を失っている状態にあることが多いと思われます。

したがって、本人が家族信託契約を締結したとしても、意思能力がなく無効となる可能性が非常に高く、本人が家族信託をすることは適切ではありません。

なお、後見人が付いている場合であっても、遺言についてのみ認められているケース があります。

本人が能力を一時回復した時に医師2人以上の立会いなど、一定の要件を満たせば、遺言をすることができるとされています(民法973条)。

したがって、遺言による信託(信託法3条2号)であれば家族信託もできる可能性はありますが、家族信託は内容が複雑であり、信託契約にはしっかりとした判断能力が必要です。

現実的には一次的な回復のみで本人が遺言による有効な信託契約をすることは難しいと言えるでしょう。

この記事では、成年後見制度の注意点やデメリットの中から、5つのポイントに絞って解説します。家族が将来、同制度を利用するかもしれないと考えている場合はぜひ参考にしてみてください。
成年後見制度の5つのデメリットとは?利用による問題点や生じた事例と対策も解説

「後見人」が家族信託をすることはできるか

では、本人に代わって後見人が家族信託をすることはできるのでしょうか?

これについては、そもそも家族信託をする必要性が認められません。

後見人は、本人の財産について財産管理権を有しているため(民法859条)、本人の代わりに、すでに財産の管理、処分を行うことができる状態です。

後見人がいることで認知症による問題は解決済みとも言えるため、家族信託をする必要はないのです。

それでは後見人があえて家族信託を行おうとして、例えば居住用不動産について信託契約を締結する場合を考えましょう。

このような財産処分には家庭裁判所の許可が必要となりますが(民法859の3)、成年後見制度の利用で充分役目を果たすことができる内容です。

家族信託をする実益が乏しいため、おそらく許可はおりないと考えられます。

預貯金などの金銭に関しては裁判所の許可は必要ありませんが、法律専門家が後見人や後見監督人として関与していれば、自らの責任問題ともなるため認めてくれないでしょう。

仮に専門家が関与していない身内だけの後見で、親族の後見人が金銭の家族信託を行った場合、そのことが家庭裁判所に知られると元に戻すように指導が入る可能性があります。

後見人をやめて、家族信託に切り替えることはできるか

では、後見をやめて家族信託に切り替えることはできるでしょうか。

一部の例外を除いて、ほとんどの場合は難しいと思われます。

成年後見制度の利用をやめるには、家庭裁判所による「後見開始審判の取消し」が必要です(民法10条)。

そして、この取消しをしてもらうためには、後見開始の原因が消滅したことが必要とされており、つまり、本人の認知機能や判断能力が回復した状態である必要があります。

取り消しを申し立てる場合、本人の判断能力が保護を必要としない状態に回復したという証明が必要です。

医者の診断書など、財産管理面など本人が自立してきたことを示す生活上の実例を証明する必要があり、審査には数か月を要します。

本人の能力の回復が認められ、後見開始審判の取消しがなされれば、当然、後見が無くなるため家族信託の契約も可能となります。

ただし認知症は回復の見通しが厳しく、進行性の疾患であるため通常は能力が回復することは難しいのが現状です。

そのため成年後見制度は一度開始すると、本人の資産保護を強固にする目的もあり、自由にやめることはできないのです。

成年後見制度は一度利用を始めると基本的に中止は不可能 だと考えておくべきでしょう。

成年後見制度については、こちらの記事でも解説しています。参考にしてみてください。

成年後見制度(せいねんこうけんせいど)とは、認知症や知的障害などで判断能力が低下した人の契約や財産管理のサポートを行う制度です。「成年後見人」を家庭裁判所から選任してもらい、本人に代わって様々な手続きを行なってもらいます。この記事では成年後見制度についてわかりやすく説明し、同時に最近注目を浴びている家族信託との比較についても解説します。
【完全版】成年後見制度とは?司法書士がわかりやすく解説

本人の判断能力があるうちに家族信託の検討を

以上のことから、すでに後見人が付いている場合は家族信託をすることはできませんし、その必要性も認められていません

つまり家族信託をするには、後見人が付くような段階になってからではすでに遅い ということになるのです。

家族信託と成年後見の違い を知り、本人の判断能力があるうちに早めに専門家に相談することが大切だと言えるでしょう。

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