要約

  • 成年後見制度とは、認知症・知的障害・精神障害などによって判断能力を喪失してしまった人の援助者を選び、法律的に支援する制度
  • 成年後見制度には第三者が介入する・費用が高い・財産活用に制限があるという3つのデメリットがある
  • 可能であれば任意後見あるいは家族信託の活用を検討することがオススメ
  • 法定後見・任意後見・家族信託のどれを利用すべきかは状況により異なるため、まずは専門家にご相談を

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高齢の親の判断能力が低下した際などに利用される「成年後見制度」について、認知症患者の拡大とともに毎年3万4千件を超える申立てが家庭裁判所になされています。

最高裁判所事務総局家庭局 成年後見関係事件の概況

高齢になると判断能力の低下のため預金口座などが凍結されてしまうことがあるため、後見制度はその解決方法としてよく知られている制度です。

家庭裁判所を通すため難しいイメージもありますが、申し立て件数のうち95.5%が認められているという、認知症の高齢者への対策としては非常に助かる制度となっています。

ただし成年後見制度の利用に際してはデメリット部分も多く、注意が必要な部分もあります。

実際に利用する段階になって実情が分かり、失敗したと後悔する点もあるのです。

この記事では、成年後見制度の注意点やデメリットの中から、3つのポイントに絞って解説します。 家族が将来、同制度を利用するかもしれないと考えている場合はぜひ参考にしてみてください。

成年後見制度を利用する際の3つのデメリット

成年後見制度とは、認知症などにより判断能力が低下してしまった人の生活と財産を保護することを目的として作られた制度です。

家庭裁判所に申し立てることで判断能力のなくなってしまった人の後見人(代理人)を選任し、その後見人を監督することで後見を受ける人の生活と財産を守ることを目的としています。

ただしこの制度を利用する場合、以下の3つのデメリットを見込んでおかなければなりません。

【デメリット1】 後見を受けている人の生活や財産に関して、

裁判所や弁護士・司法書士などの第三者が介入する制度である

【デメリット2】 後見事務の手間が発生する・後見人に対する

報酬(費用)が発生する

【デメリット3】 相続対策や資産運用など、後見を受けている人が所有する

財産の変更や活用ができなくなる

これらのデメリットについて、それぞれ詳しく解説していきます。

[1]後見を受けている人の生活や財産に関して、裁判所や弁護士・司法書士などの第三者が介入する制度である

家庭裁判所により後見人が選任されて後見が開始すると、それまで滞っていた預金の払い戻し等が可能となります。

この後見人には本人の親族または弁護士や司法書士といった専門家が就任します。統計的には、全体の8割が専門家の後見人です。

これは、身寄りのない高齢者が利用する支援事業所が裁判所への申し立てを行うこともあるため、その数値を含んだデータとなっている面もあるといえるでしょう。

ただし、親族が後見人を希望して認定された場合でも、後見人を監督する立場として「後見監督人」が選任されるケースがあるのです。

後見監督人の選任は家庭裁判所に一任されており、家庭裁判所が所有している名簿に登録された弁護士・司法書士などの専門家が選任されます。

そのため、後見制度を利用する場合には、いずれにしても後見人または後見監督人として、弁護士・司法書士などの専門家が関与する可能性が高くなるのです。

後見を受ける本人の財産が極めて少ない場合には、親族の後見人のみで後見がスタートする場合もありますが、認知症の場合は基本的に本人が亡くなるまで、後見人を通して財産の処分を行うこととなります。

後見人も家庭裁判所や後見監督人の監督を受け、報酬の支払いも発生する、という状態が続くことになるため注意が必要な面も持ち合わせているのです。

専門家などの第三者が生活に介入するという難しさ

後見制度の利用がはじまると、本人の財産状況や生活状況(収入・支出)を家庭裁判所にすべて開示しなければなりません。

その情報は後見人や後見監督人にも共有されます。 (正確には、後見人が本人の財産状況を調査し、家庭裁判所に報告します。)

これらの情報は個人情報として管理されますが、本人の財産状況を含め、家族の暮らしが家庭裁判所や後見人等に知れてしまうことに抵抗を感じる親族もいるでしょう。

また、本人のための支出についても、家族が生活費を立て替えた場合は後見人に対して領収書を提示して請求しなければなりません。これら1つ1つの手続きを長年継続することになります。

さらに立て替えた分であっても、後見人から「本人の生活費として評価できない」「生活に不必要な費用なので請求には応じられない」といった対応をされてしまうことも考えられます。

専門家の後見人は後見制度を厳格に運用する責務があり、家庭裁判所も管理を担うため、一般の感覚よりも厳しい管理内容となることを事前に知っておく必要があるといえます。

[2]後見事務の手間が発生する・後見人に対する報酬(費用)が発生する

後見人はその職務として、後見を受けている本人の法律行為を代理し、財産を管理します。

また、後見開始直後および、その後最低1年に1回のペースで、家庭裁判所に対して後見を受けている本人の財産状況(収入と支出を含む)を文書にして提出しなければなりません。

この報告は後見制度を利用中、ずっと続きます。常に本人の生活状況などに関して領収書などの記録を保管しておかなければならないのです。

また、弁護士や司法書士といった専門家が後見人となる場合や後見監督人が選任された場合には、これらの方に対して報酬を支払わなければなりません。

支払いは後見を受けている本人の財産から支出しますが、決して少なくない報酬の支払いが続くため、この点でも負担が大きいといえるでしょう。

後見人や後見監督人の報酬に関する詳細はこちらをご参照ください: 後見人等の報酬の相場は?

[3]相続対策や資産運用など、後見を受けている人が所有する財産の変更や活用ができなくなる

このように家庭裁判所は 「本人の財産保護の観点」からその監督を行うため、親族にとっては以下のような負担が始まります。

  • 同居の親族と共同生活をしている場合でも生活費の負担割合を明確にしなければならない。
  • 本人の財産を他の親族の利益のために使用・活用することができない。
  • 不動産投資や株式投資など、積極的な資産運用ができなくなる。
  • 相続対策としての不動産購入や保険の加入などができなくなる。

《生活費の負担割合の明確化について》

通常、同居している親族の生活費を1人1人の負担分に明確に分けていることは少なく、その負担割合の内訳は曖昧になっていたり、誰か一人がまとめて負担するなどのケースが多いでしょう。

そして後見を受ける本人が生活費の柱となる収入を得て家族とともに暮らしていた場合、子の生活費の仕分けが問題になりやすいのです。

後見が始まると、原則的に本人の財産は本人のためにしか使用できなくなります。

つまり本人の収入により生活を賄っていたほかの親族は、後見開始以降、自らの生活費を工面する必要が出てくるのです。

例外的に、同居の親族の生活費を本人の財産から負担して問題ないものと判断するケースもありますが、条件があります。

  • 同居の親族に収入を得る力が全くない
  • 後見を受ける本人がその者を養うだけの収入を得ている
  • 現に後見開始前からその者を養っていた

これらをすべて満たす場合には、後見開始後もその親族の生活費について認められています。

また、後見を受けている人に扶養義務がある場合にも、その義務の範囲内での親族の生活費の負担は問題ありません。

ただし、その金額は「相当の範囲」に制限されますので、これまで通りの生活が維持できるとは限らず、支出は基本的に制限されるようになるといえます。

本人の財産を他の親族の利益のために使用・活用することができない

後見制度では、後見を受けている本人のための財産保護であるため、本人が潤沢な財産を持っていたとしても、その財産を活用して親族のために活用することは原則、認められていません。

例えば、本人が親族のために不動産を購入しようとしていたり、数年後に教育費などの資金を渡す予定だったとしても、後見制度の利用開始以降は、そのようなやり取りはできないことになります。親族内で約束があったとはいえあきらめるしかないのです。

不動産投資や株式投資など、積極的な資産運用ができなくなる

高齢者の中には資産を活用して資産運用を行っているケースもあるでしょう。

資産運用は、資産の購入・売却のタイミングが重要となりますが、後見制度が始まると後見を受ける本人の財産の「保護」が最大の目的となりますので、原則、積極的な運用は出来なくなります。

後見人は本人の資産の積極的な運用はできる限り控え、預金など、少なくとも元本が減少するリスクのない形で資産を保持することになるのです。

したがって、後見開始後は上記のようないわゆる資産運用はできなくなり、また、すでに収益目的で所持している不動産や有価証券は徐々に現金などに換価されていくことになります。

相続対策としての不動産購入や保険の加入などができなくなる

上記の資産運用と同様に、本人の直接の利益とならないという理由で、相続対策も行うことができなくなります。

相続税はその対策の有無で金額に大きな違いが発生する場合もあるため、相続対策が未了の場合には後見制度の利用を開始するか慎重に検討する必要があります。

成年後見制度について詳しくはこちらを参照ください:
成年後見制度とは?

後見制度の利用について問題の生じた事例

以上のように後見制度の注意点をご紹介してきました。

必要に迫られて手続きをするケースもあると思いますが、知らずに利用するだけでは後悔するケースも想定されます。

【事例1】専門家の後見人により同居の親族が疲弊

90代の母を60代の娘とその夫が同居して介護していた家庭において、娘が母親の後見開始の申立てをしました。

しかし娘の兄弟が候補者(申立をした娘本人)について反対の意を表したため、家庭裁判所によって弁護士が後見人に選任されたのです。

後見開始後、それまでと同様に娘夫婦が同居して母の面倒を見ながら、母の生活費に関しては後見人に領収書を提出して清算するという形で生活をしていくこととなりました。

しかし後見開始からしばらくすると、本人の生活費として後見人に清算を依頼した支払いについて、後見人からなかなか認めてもらえなくなったのです。

年金収入が中心だった同居の娘夫婦は、立て替えている本人の生活費の清算ができず、経済的にも困窮しはじめました。

何度も後見人に伝えても、生活費の清算は認められず、とうとう話し合いもできない状態になったのです。

このような状況になった場合でも、有効な解決策は存在しません。後見人と親族との相性が悪い等の理由では、後見人が解任されることはないのです。

本件でも娘が家庭裁判所に対して後見人の解任の申立てをしましたが、却下されてしまいました。

この事例に含まれる問題点は2つあります。

後見制度は優れた制度ですが、家族としては利用の必要性について、他の選択肢も含めて事前に充分に検討すべきでした。

また、身内に否定されたため仕方のない状況もありましたが、専門家の後見人であれば問題ないだろうと思い込んでいた点があるでしょう。

身内が後見人になると資産を自由に使ってしまうのではと考えて、親族に反対されるのも仕方のないことかもしれません。

親族の中に特定の親族を後見人にすることに反対しているものがいる場合には、その特定の親族が後見人に選任されないという傾向があります。

仮にその人が後見人に就くことができたとしても、第三者がその監督人に就く可能性が高くなります。

そのためやはり、親の認知症が疑われた早めの段階で、家族信託等の他の選択肢を検討すべきだったといえるでしょう。

《結果として分かること》

家族信託は決して不動産をたくさん保有する人やお金持ち家庭だけが利用する制度ではないのです。

親の判断力がある段階で預貯金のみの信託契約をすれば、より簡単に手続きも済ませることができた可能性もあります。

どうしても初期費用は掛かりますが、高齢の親だけでなく、親族を含めて全員が年々歳を取っていくことも忘れてはなりません。

早めに検討することで親族間で話し合う時間も取ることができた可能性もありますし、親本人の意向も取り入れた資産の使い方を組むこともできた可能性があったといえます。

【事例2】後見人についての知識があいまいなまま申立てをした事例

後見開始の申立てをする際には、後見人としたい方を「候補者」として裁判所に申し立てることが可能です。

しかし、候補者として掲げれば誰もが選任されるわけではありません。

現在、候補者として掲げた場合に選任される後見人は、本人の4親等内の親族か、弁護士・司法書士といった専門家のみとなっています。

この事例では、そのことを正確に理解していない親族が、普段介護でお世話になっている知人を候補者として後見開始の申立てを行ったのです。

当然ながらこれは認められることなく、専門家が後見人として就くことになりました。

この事例は任意後見制度との知識の混雑によるものと考えられます。

同じ後見制度でも、裁判所が後見人を決める「成年後見」と、本人の判断力があるうちに任意の後見人を選定しておく「任意後見」があるためです。

任意後見の利用にはやはり家庭裁判所を通す必要がありますが、依頼する本人が選定したのであれば恩人を後見人に設定することも可能だったのです。

もともと、申立をしたきっかけは病院から契約のために必要といわれたことが理由でした。

必要に迫られての手続きでしたが、後見制度について事前に調べることができれば、また、本人の判断能力があるうちに意向を聞くことができれば、他の方法で進めることもできた可能性もあります。

家族信託と成年後見制度について:
家族信託と成年後見、どちらを使うべき?

後見制度の利用に迫られているのかどうか充分な検討を

後見制度を利用すると、裁判所の監督が始まることを意味します。

また、後見人として司法書士や弁護士といった第三者が生活に介入する可能性が高い点、本人が意思能力を回復するか死亡するまで終了することができない点、などの様々な制約を伴います。

これらの制約に対応することは、親族としても負担になる可能性が考えられますので、後見制度の利用を考える前に必要性について充分な検討が必要だといえます。

後見人がいれば大丈夫、という安心感はありますが、判断が難しい場合には、利用の必要性について、また、利用可能な他の方法はないかどうかも含めて、司法書士や弁護士などの専門家に相談してみることをお勧めします。

認知症に対するリスクに備える

後見制度利用者の7割近くが、認知症を理由に成年後見制度の利用を開始しています。後見制度利用の目的としてもっとも多いのは、銀行口座等の解約手続きです。

しかも、後見制度の利用開始までには期間が必要で、申し立ての約7割が決定までに2か月ほどの時間を要しています。

家族が希望する利用目的と、利用開始までにどうしても時間がかかりやすいというデメリットから、見えてくる対策方法があります。

1つ目は、家族信託の利用です。

家族信託を活用すれば、後見制度のような第三者の介入や財産活用上の制限を受けることなく銀行口座やその他財産の管理が可能となります。

家族信託について詳しくはこちらをご覧ください:
家族信託とは

もう1つは、「任意後見制度」の活用です。

任意後見制度とは、本人が元気なうちに任意の人物と後見に関する契約を結んでおき、認知症などで判断能力が低下してしまった段階で、その契約に基づいて後見が開始するという制度です。

監督人が必ずついてしまうなど注意点はありますが、認知症になってから後見人をつける法定後見制度よりも後見人の権限などについて柔軟に設定ができるという特徴があります。

任意後見制度についてはこちらでも解説しています:
任意後見について

認知症対策は早めに考えておくべき課題

認知症などの判断能力の低下は、誰もが抱えるリスクです。

厚生労働省のデータによりますと、2025年には65歳以上の5人に1人が認知症を発症すると推計されています。

また、85歳以上になるとその55%以上の方が認知症になるともいわれ、今は大丈夫であっても、将来は適切な判断ができなくなるかもしれません。万が一に備えて準備しておくことは大変重要な課題だといえます。

この記事を参考に、現段階でどのような対策が必要か、どのような選択肢があるのか、ぜひ検討をしてみてください。

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