銀行の代理人カード(家族カード)と家族信託どっちがいい?

銀行の代理人カード(家族カード)と家族信託どっちがいい?

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銀行預金の引き出しや振り込みの手続きは、原則、ご本人に限られています。

しかし、高齢の方をサポートしているご家庭では、本人のキャッシュカードを家族が預かって、代わりに預金の管理をしていることもよくあるでしょう。

この記事では、本人のキャッシュカードを家族が預かって管理し続けることのリスクと、銀行のサービスである「家族カード」、そして「家族信託」という制度の比較についてご紹介したいと思います。

親のキャッシュカードを預かって入出金…なぜ危険?

介護費用の支払いや施設利用費、水道光熱費、税金関連、町内会費などの費用を準備するなど、高齢者の日常生活をサポートする役目も大変だと思います。

口座振替に変更できないケースや、いまだに現金での取扱いに限られている支払い先があり、親のキャッシュカードを預かったままだけれど、もう仕方がない、と考えているご家族もいらっしゃるでしょう。

今現在は管理ができているため、このままの方法で問題ないのではないかと受け止めている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、親のキャッシュカードを預かって預金を管理することには、以下のような落とし穴があります。

リスクを知っていただき、なるべく早めに対策を取られることをお勧めします。この記事には、具体的な対策方法も書いてありますので、ぜひ、最後までお読みください。

【1】キャッシュカードの利用限度額の引き下げ

2018年ころから、各金融機関が高齢者の口座の利用限度額を引き下げる取り組みを始めていることはご存じでしょうか?

日本経済新聞2018年12月25日の記事では、りそな銀行、埼玉りそな銀行では、70歳以上の高齢者のATMでの振込限度額を一律10万円とすることが報道されています。

このほかにも、多くの金融機関で高齢者の口座について、通常よりも利用限度額を引き下げる取り組みをしています。

これは、高齢者を狙った特殊詐欺の被害を減らすために行われている取り組みです。

もし窓口で70歳以上の方が多額の預金を引き出そうとした場合は、お金の使い道や振込先など、詳しくお伺いして被害やトラブルを防止する取り組みがなされています。

しかし預金管理をしている家族としては、ある日を境にATMでの引き出し額が急に制限されてしまうと、必要なお金を用意することができずに困った事態となります。

【2】定期性預金の解約ができない

日々使うお金は普通預金に入っているけれど、介護等でまとまったお金が必要になった時には定期預金で対応しよう、残高があるから大丈夫、と考えていても、解約手続きが窓口に限られるケースもあります。

通常、定期性預金も一部解約などATMでの取引も可能なのですが、今や多数発生している金融被害のため、金融機関によって個別の対応を設定していることがあります。

親の定期性預金をATMで一部解約しようとしたら、画面上に「窓口にお越しください」との表示が出て口座名義人本人が操作したものではない点を指摘されることもあります。

預金者からの依頼であること、本人に必須の支払いであること等を明らかにしても、預金保全のため利用停止の取扱いになる可能性もあります。

【3】通帳・キャッシュカードの再発行ができない

通帳やキャッシュカードを紛失してしまったり、磁気が取れて使えなくなってしまう事もあるでしょう。

このような再発行の手続きも、口座名義人が行う必要があります。

ご本人で手続きができない場合には再発行の手続きそのものが不可能となり、意思能力が確認できないと判断されれば預金利用の停止を受けてしまいます。

もし本人が窓口へ行けない場合は、代理人が取引に必要な書類を揃えて来店し、銀行が本人の意思確認の上で取引を行う、という流れになります。

キャッシュカードの代理での利用や手続きに不安がある場合は、必要書類について金融機関に確認をしてみると良いでしょう。

名義人本人の状況によっては、次項で説明する「代理人カード」を利用できるケースもあります。

銀行で作れる「代理人カード」の特徴

上述のように、銀行側は顧客の預金を守る目的でさまざまな制限を設けています。

キャッシュカードを預かって払い出せているから問題ないだろうと思っていても、必要な時にお金が引き出せないというケースが起きてしまうのです。

ここで、ほとんどの金融機関では、口座名義人の方と生計を同じくする家族が銀行に出向いて手続きを行えば、家族が預金を引き出すための「代理人カード(家族カード)」を発行してもらうことができます。

「生計を同じくする家族」に当てはまるかどうかなどの利用条件は銀行によっても取扱いが異なりますので、利用先の金融機関に問い合わせてみましょう。

代理人カード>預かったキャッシュカード

ほとんどの金融機関で、代理人カードの発行は無料で受けられます。

それならキャッシュカードを預かってATMで入出金し続けるよりも、代理人カードを持っていた方が無難だということになるでしょう。

預金の入出金は金融機関との取引ですので、身内のサポートのためとはいっても、慎重にならなければならない点だといえます。

家族カードは比較的手軽に発行できるという利点がありますので、発行条件に該当するなら切り替えを検討しましょう。

本人の認知症など、心身の不調が見られ始めた初期の頃、家族が急いで対応しなくてはならない時期に役立つサービスだと言えます。

※参考記事:『【認知症患者の銀行口座管理】家族が暗証番号を聞くのは違法?

代理人カードの限界

ただし、親のサポートで家族カードを発行する場合には注意点もあります。

認知症を発症しているケースでは、個人差はあるものの症状が進行し、意思能力が確認できなくなる可能性もあるからです。

預金口座本人の意思能力の低下によっては、代理人カードも継続して利用できなくなる金融機関があります。

取引先の数だけ手続きが必要?

年齢とともに介護費の手出しが増えたり、介護施設への入所を検討したり、資金準備を考えたり、さまざまなサポートが必要になることでしょう。

とくに預金については、定期預金や投資信託商品などの解約や払い戻しが必要になるかもしれませんので、早めに預け先の金融機関をリストアップしておきましょう。

本人が失念している場合もありますので、年に1回ほど住所確認で郵送される通知などを元に、ご本人に確認をしておくと安心です。

ただし、複数の金融機関での取引がある場合、判明した預け先の数だけ、個別の手続きが必要となります。

キャッシュカードがあっても暗証番号を忘れてロックになることも多く、また、定期性預金などの解約について、本人以外の取引方法には金融機関ごとに違いがあります。

つまり、よく利用する金融機関の家族カードがあるから大丈夫だと思っていても、資産全体を見たときに限界が来ることがあるのです。

預金口座の凍結とは

意思能力が確認できない場合など、金融機関では預金保全のため取引を停止することがあります。公共料金の自動引き落とし等の支払いは継続されますが、凍結による不便さは生じます。

家族カードが発行されているケースでも、本人の意思能力や利用方法に問題はないか等の状況に応じて、利用停止は行われます。

相続発生時とは異なり、入出金の全取引停止とはなりませんが、年金が振り込まれても払い戻すことができない、という状態になってしまうのです。

ここで金融機関としては「法定代理人」を求めてきます。預金額の大小に関わらず、適正な取引のため、「成年後見人」などの代理人による取引を勧められます。

※参考記事:『認知症で親の銀行口座が凍結!事前対策について

成年後見制度とは

成年後見制度とは、家庭裁判所に申し立てをおこない、家庭裁判所が選んだ後見人が財産を管理する制度です。

後見人は、凍結された口座からお金を下ろすことができ、不動産の売却などの必要があれば法定代理人として取引をすることができます。

預金が凍結されて他に選択肢がない段階になった時、非常に有効な方法になるといえますが、家庭裁判所を通す必要があり、家族が後見人に選ばれるとは限りません。多くのケースで弁護士・司法書士等の専門家が選ばれます。

家族が後見人に選定されたとしても、「後見監督人」として専門家が追加で就任することもあります。

これらの専門家にはもちろん報酬が必要で、金額も裁判所が定めた額となります。

《専門家報酬》

● 基本報酬(管理財産の額による)
5000万円未満…月額2~4万円
5000万円超 …月月5~6万円

● 付加報酬

成年後見制度にはこのような特徴があることから、信託制度の一つである「家族信託」が注目されているのです。

  • 代理人カードだけでは完全な認知症対策とならない
  • 成年後見制度には上述のような費用の負担が大きい
  • 家族信託であればこれらの不安や負担を軽減しつつ資産のサポートが可能となる

ここまでの内容から以上の内容が分かります。

▼ 保険契約がある場合

もし、認知症保険など保険契約がある場合、早めに「代理請求人」の手続きをしておきましょう。

保険の手続き者を指定することができ、保険の対象となる事態になった際に手続きを迅速に進めることができます。

別世帯の場合は委任状などの必要書類がある場合もありますので、保険の種類や契約内容、手続きについて確認しておくと安心です。

※参考記事:『【認知症患者の保険請求】指定代理請求人の届出をしましょう

【徹底比較】家族信託 v.s. 代理人カード

上記で触れましたが、認知症の進行により預金取引が凍結してしまう問題については、金融機関から案内される通りに「成年後見制度」を利用すれば解決できるということになります。

ただし、後見制度は家庭裁判所に申し立てる必要があり、また、専門家報酬がかかるなど費用の負担が大きいという特徴があるため、実際の利用には二の足を踏んでしまうのではないでしょうか。

他には方法がないのだろうか、選択肢はないのか、という際に、条件に合う段階であれば「家族信託」の利用が可能です。

もし本人の意思能力がしっかり残っているならば

家族信託の利用には、本人の意思能力がしっかり残っていることが前提となります。認知症に罹っていても、本人が元気であれば他にも選択肢があるのです。

家族信託は裁判所を通す必要もなく、第三者に資産を管理されることもありません。本人の意思能力がしっかりある段階であれば、厳しい制度以外の選択肢もあります。

しかし「家族カード」を利用していて、手続きが簡単なこともあり、そのままずるずると使ってしまうこともあるのではないでしょうか。

仮に認知症などの症状が進行してしまうと、金融機関の判断により預金取引を停止されてしまいます。その後の選択肢は「成年後見制度」のみとなってしまうのです。

代理人カードは便利な制度ですが、そのデメリット面をしっかり知り、早めに他の方法を検討することをお勧めします。

ここで、認知症の症状を有しているケースを事例として、「家族信託」を利用した場合と、「代理人カード」を利用した場合との比較から注意点を解説します。

[1]代理人カードは認知症になると使えないのが原則

代理人カードは家族内で複数の利便性を高めたサービスであり、認知症対策のサービスではないという点に注意が必要です。

【代理人カード】
代理人カードは口座名義人の意思能力が確認できなくなると使用できないのが原則です。一般的に金融機関は「成年後見制度」の利用を勧め、法定代理人との取引に限定します。

もし、認知症を発症した後に代理人カードの利用を続けていることが銀行に発覚すれば、預金について重大な問題となる可能性もあります。

【家族信託】
家族信託は認知症に備えて信託契約に基づいて資産の管理を家族に依頼します。財産の名義人の意思能力が低下した後でも、管理名義人の家族が取引を継続できるため問題は生じません。

[2]代理人カードの払い戻しには利用限度額の制限を受ける

先ほどの解説の通り、高齢者の口座の利用限度額を引き下げる金融機関が多くなっています。代理人カードでも同様の制限が適用されます。

【代理人カード】
代理人カードを利用しているご家族も、この利用限度額の制限を受けるため、あらかじめ利用限度額の増額の手続きを行っていない場合には、思うように預金を引き出せないということも起こり得ます。

【家族信託】
一方、家族信託では、財産の名義人の方から預かった金銭を、子などの預かる方(受託者)名義の口座に移します。

多額の引き出しが必要になったとしても受託者が取引できるため、限度額の制限を受けることがありません。

[3]代理人カードでは定期預金は引き出せない

普通預金の払い戻しと、定期性預金の解約等は取扱いが異なります。

【代理人カード】
定期預金を引き出すためには、定期預金の解約の手続きを行う必要がありますが、取引額や預金種類により、金融機関側で制限を設けている場合があります。
代理人カードの発行を受けている家族だとしても、ATMでの定期預金の解約や資金の払い戻しが出来ない可能性もあります。

【家族信託】
家族信託の場合は、家族信託の利用を開始する時点で、財産の名義人の方の口座から、子などの財産を預かる方(受託者)の口座へ預金を移します。

資金移動のあとの預け方も、普通預金でも定期預金でも自由です。

家族信託を利用する際は、金融機関の選び方にもポイントがあります。関連記事『家族信託を利用するときの銀行の選び方』もご参照ください。

家族信託の仕組みについて

このように家族信託は使い勝手の良さが大きな特徴だといえます。その内容について、改めて説明を添えておきましょう。

家族信託は一般的に、親族間で資産管理の信託契約を結んで管理してもらう方法で、預貯金の残高を移して管理してもらったり、自宅不動産の管理や売却を代行してもらう契約になります。

預貯金の管理や不動産の取引について、本来であれば名義人本人が直接手続きをするため、意思能力や契約能力が必須です。

しかし、高齢となった際、必要な時に名義人本人が取引できないという事態も起こり得ます。

この不安を解消できるのが、資産を家族に依頼する家族信託です。

資産管理を引き受けた「受託者」親族が、本人に代わって手続きを進めることができます。不動産の売却益などを介護費用に充てる等の資金繰りが可能となるのです。

ただし、家族信託も信託契約という法的行為ですので、契約時点で資産保有者の意思能力・判断能力が確認できることが前提となります。

契約時点での条件がクリアできれば、資産管理を家族内で任せることができるという大きな安心が得られるのです。

家族信託>代理人カード>預かったキャッシュカード

身辺のサポートに加えて、親の預金を管理するのは大変な役割だと思います。進行していく症状であれば、介護の負担も大きくなるばかりです。

そんな中で費用の資金繰りを考えたり、立て替え払いをするのは大きな負担となるでしょう。

「親からキャッシュカードを預かって入出金している」「家族カードでいいだろう」

ついつい、今のままで何とかなりそうだという気持ちもあるでしょう。しかしその先には預金凍結というリスクが待っているかもしれません。

もしご本人の意思能力が維持できている段階であれば、家族信託の契約によりサポートが格段に楽になります。

「そうはいっても、もう契約は難しいだろうな」

無理だろうなと思っていても、一度、司法書士等の専門家にご相談ください。内容によっては信託契約が可能な場合があります。

選択肢はまだ残されているかもしれません。

できるだけ早めに情報を集めて、今の段階でできる対策をしっかり行っていくことをお勧めします。

カテゴリー: 認知症と家族信託

この記事の監修者
梶原 隆央(かじわら たかひさ)

司法書士
梶原 隆央(かじわら たかひさ)

神奈川県出身/平成21年司法書士資格取得 トリニティグループの信託部門にて、実家信託から信託財産数億円に及ぶ信託、自社株式の信託等、幅広く信託案件に対応。

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