成年後見制度を利用する理由で一番多いのは●●だった

成年後見制度を利用する理由で一番多いのは●●だった

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認知症が進行して重症化すると、ご自身で日常生活の管理が難しくなったり、意思表示ができなくなることもあります。

財産の管理ができなくなることもあり、行動が難しくなるだけでなく、法的な行為について取引が認められないことになります。

このような事態を支えるために、民法では「成年後見制度」という制度があります。

この記事では成年後見制度の解説とともに、主にどのような理由で家庭裁判に申立てを行っているのか、裁判所の公表データをご説明します。

統計の結果から、意思能力の低下により法的にどのような不都合が生じるのかが見えてくることと思います。

成年後見制度とは?

成年後見制度とは、認知症などの病気や障害により通常の判断能力を失ってしまった人の代わりに、財産を管理する人(後見人)を選任するための制度で、家庭裁判所への申立てを行います。

後見人は家庭裁判所の審判により決められます。希望通りに家族が後見人に選ばれるケースもあれば、専門家が選定されるケースもあるのです。

申立ての審査に通り、後見人が家庭裁判所に選任されると、後見制度を利用できるようになります。

認知症患者の急増と成年後見制度

厚生労働省のデータによると、全国の認知症の患者数は増加傾向にあります。

2012年に450万人だった患者数は2025年には700万人を突破すると推計され、高齢者のうち5人に1人が認知症となる時代に突入すると見られます。

認知症患者数の推移 (推計)認知症患者数の推移
出典:厚生労働省老健局 認知症施策の総合的な推進について https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000519620.pdf

また、2050年段階の推計として、人口約1億人(推計)に対し、高齢者人口が約3800万人(対人口比:約37.7%)、認知症患者が約1000万人(同:約10%)と見込まれています。

日本の超高齢化に伴い、認知症の方の財産管理の問題はその重要性を増しているのです。

成年後見制度の利用件数

高齢者と認知症の患者の方が増えているため、成年後見制度を利用する方の数も増えています。次のグラフを見ると件数は上昇傾向にあることが分かります。

成年後見制度の利用件数

この増加は、単純に高齢者の数が増えているということだけが原因ではありません。

成年後見制度の制度が開始した平成12年(2000年)は、成年後見制度の申立件数は、わずか8956件でした。

この年の高齢者(65歳以上の方)の人口は、約3079万人ですので、高齢者の約3500人に1人が利用していたにすぎません。

その後、2020年には高齢者の人口は3622万人と過去最高を更新しています。

この年の成年後見制度の申立件数は37,235件というデータであるため、高齢者の1000人に1人が利用している計算となります。

2000年時点と比べると、20年後に利用割合は3.5倍にまで増加したということになります。

成年後見制度の申立て理由

このように申立て件数が増加している成年後見制度ですが、実際にはどのような理由で利用しているのでしょうか。裁判所が実施したアンケート結果を見てみましょう。

【成年後見制度 申立ての動機】

1位 預貯金等の管理・解約(37.1%)
2位 身上保護(23.7%)
3位 介護保険契約(12%)
4位 不動産の処分(10.4%)
5位 相続手続き(8%)
6位 保険金受取(4.2%)
7位 訴訟手続(2.1%)
…  その他(2.5%)

参照 : 成年後見関係事件の概況(最高裁判所事務総局家庭局)

申立ての主な理由として一番多いのは「預貯金等の管理・解約」であり、重要な理由だと分かります。しかし意外にも、その割合は4割にも至りません。

それぞれの理由について、具体的に解説しましょう。

[1]預貯金等の管理・解約

割合として最も多いのが「預貯金等の管理・解約」です。

預貯金の口座名義人が銀行の窓口やATMまで出向くのが難しくなったり、預金の引き出し手続きができなくなったりすると、金融機関側は預金保護のために利用停止にすることがあります。

そうなると、親族でも代わりに預金を下ろすことができなくなり、成年後見制度を申し立てざるを得ないのです。

金融機関や取引状況によっては、病状等の証明書類の提示により家族が代わりに預金を引き出すことに応じてくれる場合もありますが、これはあくまで例外的な扱いです。

原則としては、口座名義人の意思確認ができない場合は、後見人との取引でなければ利用を制限されることになります。

[2]身上監護/介護保険契約

身上監護や介護関連については、介護関連で必要となる手続きを指しています。

ご本人の介護施設を探したり、施設と契約をしたり、デイサービスを利用するといった手続きを「身上監護」といい、もし周囲に家族がいれば、手続きをしてもらうことができます。

しかし身寄りのないケースなどでは身上監護を行う後見人が必要となるため、成年後見制度を利用するきっかけになっているようです。

[3]不動産の処分

介護施設への入居により実家が空き家になるケースや、介護費用をねん出するために自宅不動産を売却するケースもよく起こり得ます。

ここで、自宅不動産の名義人が認知症になってしまうと売却や処分もできなくなります。

不動産の売却には売買契約の締結が必要となるため、適切な判断能力を失っていると法律行為を行うことができないと判断されるためです。

適切な判断能力の有無については、不動産の売買に立ち会う司法書士や宅地建物取引士(不動産業者)が確認します。

問題があると確認された場合には、不動産の売却の手続きを中止する措置を取ることになります。

不動産の売却については、入所先の決定時期や売却の決意などのタイミングも関わってくるでしょう。

早めに家族信託などの対策をしておくことで、受託者に不動産の処分を任せることができます。希望の時期に手続きができるよう、早めに対策をしておくと良いのではないでしょうか。

[4]相続手続き

遺産分割協議など「相続手続き」の目的で後見制度を申し立てるケースもあります。

成年後見制度を利用する人がその親族の相続人となるケースもあります。

相続人が1名のみの場合は、その1名の相続人に財産の名義変更をすれば完了です。相続人が2名以上の場合は「遺産分割協議」が必要となり、財産の分け方で全員が合意する必要があります。

遺言書で配分されている場合でも、最低限の取得分を請求をする「遺留分請求」が起こされれば、その協議も必要です。

これらの分割協議がまとまらなければ、相続人のだれかが「遺産分割調停」を申し立てる可能性もあります。

そのためどのような取り決めになったとしても、相続人には意思能力が必須となるのです。

このように、相続が発生した場合に相続人の意思能力の有無が問題となることがあるため、相続手続きを目的とした成年後見の申立てが行われることがあるのです。

[5]保険金の受取り手続き

保険金の請求手続きも法律行為とみなされます。

保険の契約があり、家族が亡くなったり、病気になったり、事故に遭ったりした場合の保険請求には意思能力が必要です。

ただし、保険金を受け取る手続きのために成年後見制度を申し立てるというのは負担も大きいといえます。

そのため、保険請求をする人を事前に決める「指定請求代理人」を指定しておくと良いでしょう。

【指定代理請求人】

認知症保険などの保険契約がある場合は、早めに「代理請求人」の手続きをしておきましょう。手続きはそこまで煩雑ではなく、保険対象となった際に手続きを迅速に進めることができます。

指定される人が別世帯の場合、委任状などの必要書類がある場合もありますので、保険の種類や契約内容、手続きについて確認しておくと安心です。

※参考記事:『【認知症患者の保険請求】指定代理請求人の届出について

[6]訴訟手続

訴訟手続きというと縁遠い感覚もありますが、訴訟が必要なケースは意外と身近に潜んでいます。 

よくあるのは、不動産所有者と借地人・借家人とのトラブルなどです。

不動産を貸していて滞納分の家賃を請求する場合や、不動産から立ち退いて欲しい場合など、話し合いでの交渉がまとまらなければ訴訟に踏み切る場合があります。

訴訟自体は弁護士に依頼して任せるのが一般的ですが、弁護士との委任契約には不動産所有者本人の意思能力・判断能力が求められます。

成年後見制度の利用には一定の費用がかかり決して負担は軽くはありません。それでも後見制度を申し立てて、何とか解決しなければならないケースもあるようです。

※参考記事:『【家族信託の活用】父の代わりに保有不動産の立退き訴訟をしたい

まとめ

ご紹介した制度利用の理由については、預貯金の管理にとどまらず、理由や目的は分散していてさまざまであるといえます。

だからこそ、早期に対策できれば、他の選択肢も利用できたのではとも考えられます。

預金の管理(37.1%)や不動産の処分(10.4%)などは、早めに信託契約を結んでおけばその時点から管理を任せることが可能です。

収益のある不動産を所有していて訴訟の可能性もゼロではない場合は、信託不動産の訴訟についても受託者に任せることができます。

この訴訟手続(2.1%)も含めると、少なくとも全体の約半数(49.6%)は家族信託での対応が可能だといえるのです。

誰しも高齢になると不自由が生じたり、何らかの疾患を患ったり、認知症の症状が進行したり等、急に事態が悪化することもあります。

事情によっては『家族信託ではなく成年後見制度を使うべき事例』もありますので、必ずしも一概には言えませんが、それでも、高齢者が利用できる制度の特徴を比較して理解しておくことが重要だといえます。

選択肢が他になく不本意な手続きしかない状態に陥ると、高齢者ご本人も、家族も、共に負担を抱えていくことになります。

できるだけ選択肢を選べるよう、また、これからの人生に不安のないよう、早めに備えておくことをお勧めします。

カテゴリー: 成年後見制度

この記事の監修者
梶原 隆央(かじわら たかひさ)

司法書士
梶原 隆央(かじわら たかひさ)

神奈川県出身/平成21年司法書士資格取得 トリニティグループの信託部門にて、実家信託から信託財産数億円に及ぶ信託、自社株式の信託等、幅広く信託案件に対応。

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