家族信託ではなく成年後見制度を使うべき事例3選

家族信託ではなく成年後見制度を使うべき事例3選

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家族信託は、認知症対策として非常に有用な制度です。

しかし、私どもが司法書士としてご相談を頂く事例の中には、家族信託では問題が解決できない場合も存在します。

今日は実際にあったご相談の中から、3つの事例をご紹介します。

※個人情報保護の観点から、ご相談内容を若干変更し、仮名でご紹介しております。

台風で倒壊寸前!ボロアパートのオーナーが認知症に!

神奈川県にお住いの小森さん(55歳・男性)からご相談があったのは、ある年の4月頃でした。

お父様が認知症になってしまったので、相談したいというのが最初のお問い合わせでした。

小森さんのお父様は、元公務員で、現役の時代にはアパート投資を熱心にされていて、ご相談当時もアパートを1棟保有されていらっしゃいました。

そのアパートは木造で、築45年。 すでにボロボロで、次の夏に台風が来てしまったら、倒壊してしまう恐れがあるぐらいの状態でした。

さらに問題なのは、現在でも入居者さんがお住まいということ。 もし、建物が台風などで壊れて、入居者さんが怪我をするようなことがあれば、建物の所有者である小森さんのお父様に賠償の責任が生じることになります。

なんとしても次の台風の時期までの間に、応急処置だけでも済ましておく必要がありました。

修繕には、建築施工会社の見積もりでは、約2000万円の費用がかかるとのこと。

お父様の建物の修繕費ですので、当然その費用は、お父様の預金から支出すべきです。

しかし、ここで大きな問題が生じました。 お父様が重度の認知症を患っていらっしゃったのです。

銀行預金から2000万円を引き出すとなると、銀行の窓口で本人が預金引き出しの手続きを行わなければなりません。

しかし、ご本人が重度の認知症を発症してしまっているため、この手続きができず、修繕費用を支出できない状態になっていたわけです。

ご本人が認知症を発症しているとはいえ、預金を引き出す意思表示さえできれば銀行預金を引き出すことができることがあります。

私は、小森さんからご依頼を受け、銀行の担当者の方に掛け合い、お父様がお住いの介護施設まで同行し、お父様の認知症の程度がどの程度かを確認していただく機会を設けました。

お父様とお会いしてみると、すぐに預金の引き出しは難しいと判断できました。

私と銀行の担当者がお声掛けしてみても、こちらを見ていただけず、打ち合わせの席にも座っていられない状態まで、認知症が進行していたのです。

こうなってしまうと、ご本人名義の預金から修繕費用を引き出すことはできません。

また、認知症がここまで重症だと、家族信託を使って息子さんに財産の管理権限を託す手続きも行うことはできません。

預金を引き出すために、唯一残された制度は、成年後見制度。

家庭裁判所の監督を受ける後見人が、本人の預金を管理する制度です。

費用も高額ですし、財産の利用にもかなりの制約がかかるため、一般的に利用を避ける方が多い制度です。

しかし、小森様には、成年後見制度を利用する以外に道はありませんでした。

認知症が重症化してから何かしようとすると、選択肢が成年後見制度しかなくなってしまうわけです。

会ったことの無い親族の生活費を立て替え続けて5年で総額600万円に!

多摩市にお住いの加藤さん(35歳)からご相談がありました。

加藤さんは、一人っ子で、幼い時にお父様を亡くされているので、家族は、お母様お一人でした。

ご相談内容は、そのお母様が5年前に亡くなった時にさかのぼります。

お母様には、重度の知的障害を負っている健治さんという弟様がいらっしゃいました。

健治さんは、都内のグループホームで生活しており、国からもらえる障害年金と、親から相続した預金で日々生活されていましたが、その預金の管理はすべて、加藤さんのお母様が担当されていました。

加藤様のお母様が亡くなってからしばらくして、健治さんが住んでいるグループホームから加藤様に連絡がありました。

話を聞いてみると、お母様が亡くなってから、健治さんの生活費の支払いが滞っているので、滞納分も含めて支払ってほしいというお話。

実は、加藤さんは、この時初めて健治さんという親戚がいることを知ったのです。

加藤さんは、見ず知らずの親戚の生活費を立て替えなければいけない状態になってしまいました。

お母様は、グループホームに入居している健治さんの保証人になっていたので、その保証人の義務を相続している加藤さんは、法的にも、グループホームの利用料を支払う義務があるということになります。

調べてみると、お母様は、健治さんが受け取っている障害年金や、親から相続した預金を使って支払っていたということが判明したので、そのお金が振り込まれている預金口座を探したのですが、どれだけ探しても、通帳もキャッシュカードも出てきません。

いろいろな銀行や、役所に問い合わせてみても、個人情報保護の関係で、健治さんの預金がどの銀行に預けられているのかはついに分からずじまいになってしまいました。

それから5年間、加藤さんは、自分の給料から健治さんの生活費を立て替える生活が始まったのです。

その総額は、600万円にも上りました。

加藤さんも生活がだんだん苦しくなってきてしまい、意を決して私にご相談を頂いた、という状況でした。

私はすぐに、成年後見人の申立てをお勧めしました。

家庭裁判所に候補者を立てずに成年後見人の申立て手続きを行った場合、弁護士や司法書士、社会福祉士の方が後見人に選ばれます。

選ばれた後見人には、本人の財産状況を調査する権限があるので、健治さんの預金がどこにあるのかを正式に調査することができるのです。

成年後見は、本人の財産・債務を管理する仕事も行いますので、本人の預金のありかを見つけた後は、今まで加藤さんが立て替えた分の生活費を、清算する手続きも行ってくれます。

こうして、加藤さんは5年間立て替えた生活費600万円を清算し、以後、立て替える必要がなくなりました。

加藤さんのように、支援が必要なご本人(健治さん)の財産管理を、第三者に任せたいような場合には、成年後見制度を利用するのが最も良い方法となります。

子どもに重度の障害がある。自分が他界した後のことが心配

山本さん(65歳・女性)からご相談を頂いたのは、重度の知的障害をお持ちのお子様(崇さん・35歳)の将来についてのお話でした。

山本さんは、ご相談の前年、ご主人を亡くされており、今は崇さんと二人で暮らしているとのこと。

今は崇さんの障害年金や、夫が遺してくれた遺族年金などの財産で生活ができているのですが、自分が他界した後、子どもの生活の支援を誰が行ってくれるのかという心配をされていました。

障害を持った方を支援する仕組みとして、家族信託が利用されることがありますが、家族信託を利用する前提としては、次の2つのものが必要です。

①信託する財産 家族信託は、財産を管理するための制度なのでそもそも信託する財産がなければ、家族信託を行うのが適切とは言えません。

②信託する相手(受託者) 家族信託は、家族に財産を託す制度ですので、財産を託す(信託する)相手が必要です。必ずしも家族である必要はなく、友人などに信託することもできますが、少なくとも相手がいることが前提となります。

山本さんのご家庭には、信託する財産も信託する相手もいませんでしたので、家族信託を使うのは適切ではありませんでした。

そこで私は、崇さんの成年後見人の選任を申立てることをお勧めしました。

成年後見人は、精神上の障害によってご自身で財産管理などができない方の支援をするための制度ですので、知的障害の方の支援のためにも利用することができます。

崇さんに対して、成年後見人を申し立てれば、以後、崇さんの財産管理を成年後見人が行うこととなります。

現状は、山本さんが担当している業務も、成年後見人が行うことになるため、今まで通りの財産管理などはできなくなります。

しかし、何も対策をしないまま、山本さんが亡くなってしまった場合、山本さんが行っていた崇さんに対する支援を、誰かがスムーズに引き継ぐことができない状態になってしまいます。

このような事態をさけるため、あらかじめ、崇さんの成年後見人の選任を申し立てておくことは非常に重要なことなのです。

また、将来、崇さんの持つ財産が不足してしまったような場合には、生活保護の申請の手続きを成年後見人が行うこともできます。

財産の管理などの支援を託せる相手がいない場合には、成年後見制度を利用するのが最適解となる場合もあるということです。

まとめ

このように、ご家庭の財産管理の問題でのお悩みの解決策は、家族信託だけというわけではありません。

  • すでに認知症が重症化してしまっている場合
  • 支援が必要な方の財産管理などを第三者に任せたい場合
  • 託す財産や、託す相手がいない場合

このような場合には、成年後見制度が最適である場合もあります。

どのような選択が最適なのか、先ずは専門家に相談することろから始めるとよいでしょう。

カテゴリー:成年後見

タグ:事例

この記事の監修者
梶原 隆央(かじわら たかひさ)

司法書士
梶原 隆央(かじわら たかひさ)

神奈川県出身/平成21年司法書士資格取得 トリニティグループの信託部門にて、実家信託から信託財産数億円に及ぶ信託、自社株式の信託等、幅広く信託案件に対応。

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