家族信託を利用するときの銀行の選び方

家族信託を利用するときの銀行の選び方

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高齢の方の預貯金を家族で管理する方法として、「家族信託」という制度が普及し始めています。

家族信託は自身での財産管理が難しくなった際に備える方法です。元気なうちに家族信託を契約しておくことで、将来、認知症などのため預金が引き出せなくなるようなトラブルの対策となります。

家族信託では預貯金や不動産などの資産を家族に預けることができ、預かった財産に預貯金がある場合は専用の「信託口口座」に資金移動して管理をします。

この信託口口座は、どの銀行で作成するのがよいのでしょうか?

この記事では、信託口口座の種類や銀行の選び方について説明いたします。

家族信託と信託口口座

家族信託の利用目的として一番多いのが預貯金の管理です。

認知症などで本人の意思能力が低下した場合に預金口座の利用が凍結される可能性があるため、資産所有者(家族信託の「委託者」)が家族に管理を依頼することで、預貯金が使えなくなるリスクに備えることができます。

預貯金を信託財産に含める場合は、信託契約後に専用の「信託口口座」を作成します。この専用口座へ「委託者」が資金を送金して、「受託者」が管理をはじめるという手続きになります。

信託法では「分別管理義務」といって、受託者自身の預貯金とは分けて管理することが求められているからです。

[1]信託勘定(しんたくかんじょう)口座
[2]信託屋号(しんたくやごう)口座
[3]受託者の個人名義の口座

預貯金を信託しておくことで、「委託者」の生活費や介護費用、固定資産税などの税金の支払いも信託口口座から支出できるようになります。

信託口口座の特徴

どの口座も信託契約により「受託者」が管理する口座ですが、それぞれ特徴があります。

  • 信託法が適用される信託勘定口座であるかどうか
  • 通帳の名義(表記)
  • 口座名義人の「受託者」が死亡した際にどのような取扱いになるのか

主にこのような違いがあります。それぞれの口座の特徴を見ていきましょう。

[1]信託勘定口座

この口座は、家族信託を組成したときに作った契約書を提出して作成する口座です。家族信託の契約書を提出して作成するため、信託法や、契約書の通りの口座の運用が可能になります。

口座の名義人の表記も特徴的で、一般的に「信託口」という表記が入ります。

《例》

○○信託 受託者□□ 信託口
委託者○○ 受託者□□ 信託口

※財産を預ける「委託者〇〇」と資産を預かる「受託者□□」の名前が両方入る。

信託勘定口座は、都市銀行・地方銀行を中心に取扱いが広がってきています。(※参考『信託契約対応の銀行一覧【まとめ】』)

また、口座作成の際に費用がかかるケースもありますので、取引を予定している銀行に事前に確認しておきましょう。資産状況によって費用が5万円〜10万円程度、掛かる場合もあります。

「信託勘定口座」固有のメリット

信託口口座は信託法に基づく口座であり、一般の個人口座はないため、口座の凍結を受けることもなくなります。

例えば、受託者が死亡した場合、通常の口座であれば、名義人の相続開始(死亡判明)とともに口座は完全に凍結されます。

そうなると受託者の相続人全員の戸籍謄本を提出するなど、相続手続きが完了した後でないと口座の資金を動かすことはできません。

しかし、信託勘定口座であれば相続開始により凍結されることもなく、次の受託者へ口座の資金を引き継ぐことができます。受託者の個人口座とは取り扱いが異なるのです。

[2]信託屋号口座

信託勘定口座は、非常に限られた銀行でしか作成ができないため、実務上、利用がしづらいのが現状です。

銀行によっては、信託勘定口座は作れないけれど、口座名義人の表記に「信託口」と入れることであればできるという場合があります。

このような場合に作成するのが「信託屋号口座」です。

信託口という表記が口座名義人表記に入るので、一目見ただけで信託口口座だと判明するのが作成のメリットです。口座名義人の表記は、信託勘定口座と同様です。

《例》

○○信託 受託者□□ 信託口

※財産を預ける人と預かる人の名前が両方入る。

口座自体は、普通の口座と同様のルールが適用されますので、受託者が死亡した場合には、通常の相続手続きを経る必要があります。

信託屋号口座は信託勘定口座よりも比較的、開設しやすいという特徴があります。対応の銀行について事前に確認しておきましょう。

[3]受託者名義の別口座

本来であれば、「信託勘定口座」や「信託屋号口座」といった口座の開設が望ましいのですが、家族信託や口座開設に対応している銀行には限りがあります。

受託者が新たに開設した個人名義の口座を信託口口座とする方法もあります。

銀行によっては預金を目的別に管理できるように開設できる所もありますが、一方で、個人名義口座の開設数に制限を設けている所もあります。

利用を検討している金融機関でどのような取扱いになっているか、事前確認が大切です。

また、一般的な口座開設となるため受託者の個人名義であり、一見、この口座が信託口口座なのかどうか判別がしづらいというデメリットがあります。

そして[2]と同様、受託者が死亡した場合には通常の相続手続きを経る必要があります。

注意点【1】信託口口座は年金の振込先に指定できない

信託口口座に資金移動した後、委託者がそのまま預金口座を残して使い続けることもできます。

個人口座を年金受給口座として残し、水道光熱費や住宅費などの口座引き落としを継続することもできます。トラブルの生じない範囲で預金残高を残し、委託者の自由も叶えることができます。

ただし、信託口口座は委託者の個人口座ではないため、年金の振込先に指定できない点に注意しましょう。

もともと年金受給権などの個人に帰属する権利は信託の対象にすることができないため、年金は個人口座への振り込みという形で残すことになります。

そのため、例えば、振り込まれる年金は固定費の支払い等に充てることで有効活用できます。

仮に口座が凍結されたとしても、意思能力の低下が理由の場合、名義人死亡時とは異なり、口座引き落としの支払い等については継続されるためです。

注意点【2】預貯金を信託しなかった場合のリスク

信託口口座の作成には一定の手間もかかりますが、もし信託口口座を作成せず、そのまま委託者の個人口座にまとまった額を残していた場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。

委託者(親)名義の口座については、認知症など意思能力が低下した場合に口座の利用が制限されると入出金できなくなってしまいます。
(※参考記事『認知症で親の銀行口座が凍結される!事前対策を解説』)

一度、口座が凍結されると、成年後見人などの法定代理人を選定する手続きが必要になります。

信託契約をしても、受託者は法定代理人ではない点を意識しなくてはなりません。

個人口座は他の人物の名義に変更できない

仮に信託契約書で委託者の個人口座を指定したとしても、委託者名義の口座は個人の口座であるため、相続手続き等を除いて、他の人物の名義には変更できません。

そのため信託の際には、別途、信託口口座を用意して、委託者がその口座へ資金を移動した後に受託者が管理を行うことになります。

信託契約をしていても、すべての資産を自由に管理できるわけではないため注意しましょう。

信託口口座を開設する銀行の選び方

これまでは対応している所はかなり限られていましたが、信託口口座対応の金融機関もここ数年で全国的に増えてきています。 (※参考『信託契約対応の銀行一覧【まとめ】』お取り扱いについては各金融機関にご相談ください。)

信託口口座の開設先の銀行はどのように選ぶとよいのでしょうか。

(1)「信託口」表記の口座を希望する場合

家族信託は、財産を預ける「委託者」のために行う制度です。

財産を預ける人からすると自分の大切な資産であり、家族とはいえ自分以外の人の名義の口座に入金されることを不安に思う方もいらっしゃいます。

このような、預ける人の感情面に配慮するのであれば、口座名義人表記に、預ける人の名前と「信託口」という表記の入った「信託勘定口座」や「信託屋号口座」を利用するのがよい場合があります。

また、自宅や収益不動産を信託財産に含める場合、不動産の所有権移転登記や信託登記をします。

信託口口座を不動産のやり取りで使用する予定がある場合は、「信託口」表記のある口座の方が不動産の名義とも一致するため明確だという利点もあるでしょう。

銀行によっては、信託勘定口座の作成は司法書士などの専門家を介した受付になっている例もあります。

そのため、まずはどの銀行がどういう口座を作れるのかを、司法書士などの専門家に相談するとよいでしょう。

(2)受託者の利便性

信託口口座を管理する受託者の利便性も重要です。

  • 受託者が利用しやすい所にATMや支店はあるか
  • インターネットバンキングは使えるか
  • ATMの預金の引き出し限度額はいくらか

などの項目をチェックしてみてください。

受託者にとっては本人の日常生活に加えて委託者の資産管理を行うため、受託者の利便性も重要なポイントとして優先していきましょう。

取引状況の記録と管理

信託口口座を管理するにあたっては、財産を預けている人が、口座の管理状況を確認したいときにいつでも報告をすることができるように、その口座の入出金に関する情報を整理しておく必要があります。

取引状況の管理は、インターネットバンキングの取引明細や、通帳のコピーなどで作成できます。ATMで入出金する際も記帳を忘れないようにしましょう。

通帳を忘れて未記帳取引になった場合は、ATMの利用明細を持ち帰り、次の記帳のタイミングまで管理簿で保管しておくと取引明細が途切れなくなります。

このような管理の点からも、利便性の良さが銀行選びのポイントとなりそうです。

まとめ

家族信託でお金を管理する信託口口座を作成する際には、銀行の選び方が非常に重要になります。
(※参考記事『家族信託の口座(信託口口座)のつくり方』)

家族信託が普及してきているとはいえ、専用の「信託勘定口座」や「信託屋号口座」については、金融機関でも特定の部署で対応しているというケースもあるようです。

個人で口座開設手続きを進める方法もありますが、専門家を通した方がスムーズに進む可能性もあります。

そのため、家族信託の組成や金融機関での取扱いなど、家族信託に関することであれば司法書士等の専門家にご相談いただけたらと思います。

この記事の監修者
梶原 隆央(かじわら たかひさ)

司法書士
梶原 隆央(かじわら たかひさ)

神奈川県出身/平成21年司法書士資格取得 トリニティグループの信託部門にて、実家信託から信託財産数億円に及ぶ信託、自社株式の信託等、幅広く信託案件に対応。

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