「おやとこ」(https://trinity-tech.co.jp/oyatoko/)などを運営するトリニティ・テクノロジー株式会社(所在地:東京都港区、代表取締役:磨和寛、以下トリニティ・テクノロジー)は、家族信託などの利用動向を示す土地の信託登記件数について調査した。

調査サマリー

家族信託などの利用動向を示す土地の信託登記件数は、2022年上半期は昨年対比で149%増加 した。

土地の信託登記件数は毎年おおよそ120%の増加傾向にあったが、2022年は例年に比べ顕著に増加していることがわかる。

都市別では大阪エリアで170%、千葉エリアで166% などの増加が確認された。

調査概要

調査概要:土地信託登記件数に関する調査
調査方法:法務省登記統計表 土地の登記のみの件数より調査
調査期間:2022年8月30日

≪利用条件≫

  1. 情報の出典元として「おやとこ」の名前を明記してください。
  2. ウェブサイトで使用する場合は、出典元として、下記リンクを設置してください。
    URL:https://trinity-tech.co.jp/oyatoko/

調査結果

家族信託は私契約であるため、その利用件数を正確に把握することは出来ない。

そこで本調査では家族信託の利用状況の動向を把握するために、不動産を信託した際に必須となる不動産(土地)の信託登記件数の調査、「家族信託」のウェブ上における検索件数の調査、成年後見制度との利用件数推移の比較を行なった。

※家族信託について:家族信託とは?メリット・デメリット・費用をわかりやすく解説

昨年対比170%のエリアも。2022年の土地信託登記件数の動向

不動産を信託した場合には当該不動産について信託した旨の登記手続きを行う必要があるため、家族信託の動向を把握するためには不動産の信託登記件数が参考となる。

※信託の登記は商事信託などの家族信託以外の信託においても発生するため、当該件数は家族信託の件数とは一致しない。

昨年対比170%のエリアも。2022年の土地信託登記件数の動向

出典:法務省 登記統計表 土地の登記のみの件数
https://www.moj.go.jp/housei/toukei/toukei_ichiran_touki.html

※2022年は6月までの実績値より算出した推計値を使用

土地信託登記件数は2016年には4,520件であったが、毎年おおよそ20%の伸び率で増加し続け、2022年においては6月までの時点で昨年比149%で推移しており、年間では約20,000件近くまで上ると予測される。

2022年6月までの土地信託登記件数の昨年対比をエリア別に見ると、大阪で170%、千葉で166%、東京で156%、横浜で154%などと都市圏を中心に増加した。

インターネット検索回数から見る家族信託の認知度の上昇

「家族信託」のインターネット検索回数を調査すると、その認知度が毎年増加していることが分かる。

インターネット検索回数から見る家族信託の認知度の上昇

出典:Googleトレンド
※2014年の検索回数を1とした場合の相対値
※2022年は6月までの実績をもとにした年間推定値

はじめて家族信託というキーワードが一般に現れたのは、信託法が改正された2006年である。

信託法が改正されたことにより、一般家庭での財産管理における信託活用の道が開かれ、一部の専門家の中で「家族信託」という新たな手法が見出された。
その後しばらくは家族信託が大きな注目を浴びることはなかったが、2014年から徐々に検索回数が増加し、2017年にNHKなどのマスメディアに大きく取り上げられたことをきっかけに、大きく検索回数が増加したものと考えられる。

家族信託の普及の要因

家族信託の普及の要因としては、認知症患者数の増加による資産凍結対策を必要とする人の数が増え続けていること、それに応じて金融機関などにおける家族信託への対応が広がっていることなどが主に挙げられる。

厚生労働省によれば、2012年に450万人だった全国の認知症患者数は、2025年には700万人を突破し、高齢者のうち5人に1人が認知症となる時代に突入すると推計されている。
また2050年には人口約1億人に対し、高齢者が約3800万人(人口対比約37.7%)、認知症患者が約1000万人(同約10%)となる見込みである。

家族信託は主に高齢者の認知症による財産凍結の対策として利用されるため、高齢者や認知症患者数の増加に伴い家族信託の利用者数は今後さらに増加すると考えられる。

家族信託の普及の要因

出典:厚生労働省老健局 認知症施策の総合的な推進について
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000519620.pdf

金融機関の対応の広がり

家族信託を利用するためには、信託財産を管理するための専用口座の開設(信託口口座)が必要となる。これに対応している金融機関は2016年時点においては三井住友信託銀行などごく一部の金融機関に限られていたが、家族信託の利用者数増加を受けて家族信託用の口座開設に対応する金融機関が増加した。

◎ 銀行の家族信託への対応状況(一部抜粋・発表当時の資料から引用)

2016年
三井住友信託銀行が信託口口座開設に対応開始
広島銀行が民事信託に対応したローン商品の取扱開始

2017年
武蔵野銀行が家族信託サポートの取扱を開始
栃木銀行が民事信託預金口座の取扱を開始
琉球銀行が家族信託サービスの取扱を開始
四国銀行が民事信託コンサルティング業務の取扱を開始

2018年
オリックス銀行が家族信託サポートサービスを開始
山口銀行・もみじ銀行・北九州銀行が民事信託サポートサービスの取扱を開始
七十七銀行が民事信託契約に基づく預金口座の取扱を開始
沖縄銀行が家族信託サポートサービスの取扱を開始
池田泉州銀行が民事信託コンサルティング業務の取扱を開始

2019年
京葉銀行が家族信託の取扱を開始
千葉興業銀行が民事信託コンサルティング業務の取扱を開始
十六銀行が受託者向け信託口口座の取扱を開始
仙台銀行が民事信託口預金口座の取扱を開始
宮崎銀行が家族信託サービスの取扱を開始
紀陽銀行が民事信託受託者向けサービスの取扱を開始
広島信用金庫が民事信託コンサルティング業務を開始

2020年
長野銀行が家族信託の取扱を開始
第四銀行が家族信託の取扱を開始

2021年
平塚信用金庫が民事信託業務の取扱を開始
愛媛銀行で『民事信託』の顧客紹介業務の取扱を開始

2022年
横浜銀行とトリニティ・テクノロジーが家族信託に関する業務提携を発表
広島銀行が民事信託マネジメントサービスの新商品導入を発表
肥後銀行が民事信託関連サービスの取扱を開始
常陽銀行とトリニティ・テクノロジーが家族信託に関する業務提携を発表

◎ 証券会社の家族信託対応状況(一部抜粋)

2017年
野村証券が家族信託による証券口座開設に対応

2018年
廣田証券が民事信託における受託者の口座取扱を開始

2019年
大和証券が民事信託(家族信託)サポートを開始

2020年
楽天証券が、IFAを通じた家族信託サービスを開始

2021年
東海東京フィナンシャル・ホールディングスが民事信託での投資の受付を開始

2022年
SBI証券がトリニティ・テクノロジーとの家族信託に関する業務提携を発表
めぶき証券とトリニティ・テクノロジーが家族信託に関する業務提携を発表

◎ その他、家族信託あるいは類似サービスを提供する金融機関(一部抜粋)

かながわ信用金庫
北國銀行
さわやか信用金庫
芝信用金庫
十六銀行
城南信用金庫
西武信用金庫
世田谷信用金庫
第四北越銀行
千葉銀行
中国銀行
東和銀行
百五銀行
福井銀行
みずほ信託銀行
山形銀行
横浜信用金庫

上記の通り、家族信託の利用に対応するサービスを提供する金融機関は増加しており、家族信託がより身近になってきていると言える。

成年後見制度の利用件数の推移

最後に「成年後見制度」の利用件数の推移についても言及する。

一般には政府や自治体において、認知症を発症し財産の管理に問題が生じた場合には成年後見制度を利用することが推奨されているが、成年後見制度の利用には一定の費用を要する、自由な財産管理ができなくなるといった問題点が存在することから、その普及は進んでいない。

成年後見制度の利用件数は、2017年に34,249件、2021年に39,809件と直近5年間における増加率は約16%に留まっており、家族信託と比較すると、成年後見制度の利用件数は伸び悩んでいることが分かる。

参照:【調査レポート】2021年の成年後見制度申立件数は増加。しかし普及率は低迷続く(トリニティ・テクノロジー株式会社)

なお政府においては、成年後見制度の利用者数の伸び悩みについての課題を踏まえ、後見人に対して支払われる報酬体系の見直しや、柔軟な制度運用を可能にするなど、抜本的な制度の見直しが検討されている。

参照: 成年後見制度利用促進専門家会議

以上、家族信託の利用動向を調査した。

高齢化による認知症患者数の増加や、成年後見制度の普及率の低迷などから、家族信託を中心とした認知症による資産凍結対策の需要は今後も増加するものと考えられる。