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家族信託を活用すると、相続の際に遺留分の回避に使えるのではという話を耳にすることがあります。

家族信託では相続について、委託者自身の一次相続だけでなく、子世代の二次相続についても指示をする契約内容を設計することができるからです。

遺留分の回避が出来るかどうかについて、仮に本当ならすごいことですが、実際のところ相続の際にはどのように扱われるのでしょうか?

相続時の遺留分回避についての一般的見解は?

遺留分の回避の話については、厳密な意味での「相続財産」の考え方がポイントとなります。

例えば死亡した際に支払われる死亡保険金は、相続税の計算上、みなし相続財産となりますが、保険契約から生じる給付金です。

厳密には法律上の相続財産ではなく、原則として遺留分の請求の対象とはなりません。

そして家族信託の受益権についても信託契約から生じるものであって、そもそも相続財産に当たらないのではないかという視点を根拠にしています。

信託契約の受益権は相続法のルールにはない権利であり、その相続についても遺留分は発生しないのではという考え方です。

ただしこの考え方は、実務上、否定する見方が一般的となっています。

家族信託で二次相続まで指示をする場合、1回目の承継では遺留分は発生しますが、2回目以降の承継では遺留分は発生し得ないという通説的な見解もあるからです。

今回、二次相続まで指定している信託契約を例として、遺留分の発生について解説します。

ただし、遺留分の発生の有無について司法の判断が変わる可能性もあります。

また、遺留分回避の目的で信託契約をしたとみなされる場合、信託契約が無効と判断される可能性もありますので、信託契約を遺留分回避の目的で契約することは避けましょう。

「1回目の承継」では、遺留分は生じる

相続が発生した時点で受益権がどう扱われるのか、家族信託の事例をもとに見ていきましょう。

例えば、委託者A(兼受益者)の財産を、信託契約によって、残余財産または受益者連続型の受益権としてC(長男)に承継させた場合、D(次男)からCに対して遺留分の請求ができるでしょうか。

基本的に、このような家族信託の「1回目の承継」では、遺留分請求の対象になるというのが一般的な見解です。

平成30年9月に出された家族信託の判決でも、上記のケースでDは遺留分請求権を持つという大前提をもとに判断が行われました。

「2回目以降の承継」について遺留分は発生し得ない

注目すべきは「2回目以降の承継」の遺留分です。二次相続まで指定している事例を考えてみましょう。

例えば上記の事例で、委託者Aは財産を直系男子に継がせたい意向をもっており、二次相続の受益者に孫であるG(次男Dの子)を指定するとします。

つまり一次相続で受益者をC(長男)、二次相続についてはCに子がいないため、次の受益者をG(次男Dの子)としました。

このパターンは後継遺贈型の受益者連続の信託に当たります。

このケースにおいて、まず相続税については、Aの死亡によりC(長男)に受益権が移った時点で課税されます。さらに、C(長男)の死亡によりG(次男Dの子)に移った時も同じく課税されます。

次に遺留分について考えてみましょう。

上述のように、1回目の承継(AからC)の時には、通説的見解として遺留分請求権が生じます。

そして後継遺贈型の受益者連続の信託を組成した場合には、2回目以降の承継について遺留分は発生し得ないというのが通説的な見解です。

長男Cに妻がいる場合、通常の相続であればCの妻が遺留分請求権を持つことになりますが、家族信託で指定している場合、Cの妻に遺留分は発生しないことになります。

つまり、家族信託で二次相続まで指定している場合、相続税については受益権の移動とともに課税されますが、遺留分については一次相続までとなるというのが多数の見解となっているのです。

二次相続で遺留分の請求権が発生しない理由

なぜ、家族信託では二次相続で遺留分が発生しないのでしょうか。そのロジックは以下のような理由によります。

信託契約は法律行為であり、意思表示は委託者Aが行なっています。

自分の財産を誰に承継させるかということを、A自身が決めているわけです。

法律では意思主義をとりますから、意思を表示した人を起点として財産は承継されていると考えられます。

そのため、二次相続では受益権がCからGに移ったわけではなく、Gは信託契約に基づいてAから受益権を取得したと考えることになるからです。

このように家族信託に遺言の機能を加えることができます。家族信託と遺言の力関係についてはこちらの記事『家族信託と遺言、どちらの法的効力が強い?司法書士が解説します』で解説しています。

【注意点】司法の判断が変わることも

ここまでのように、家族信託では一定の見解が支持されています。

ただし、長男Cの死亡により二次相続が発生した際に、Cの妻からG(Aの孫・Dの子)に対して遺留分請求がされたときに、最終的に司法でどう判示されるかはわかりません。

信託契約の組み方によっては判断も変わる可能性もあります。

今回の話は、信託法に明記されているわけではありませんが、信託法の立法担当者である寺本昌広先生が書かれた「逐条解説 新しい信託法」(商事法務)という書籍の260ページ(注5)に記載があります。

相続に家族信託を活用する方法として、下記のような関連記事もあります。

まとめ

家族信託を活用すると、1回目の承継では遺留分は発生しますが、2回目以降の承継では遺留分は発生し得ないという見解です。

しかしながら、あくまでもこれは通説的な見解であるため、最終的な司法の判断はケースバイケースになります。

また、信託契約が明らかに遺留分回避目的であると認められれば無効にもなり得ますので、そういった目的には用いないようにしましょう。