▲ クリックタップすると動画が読み込まれます。
【関連記事】
・家族信託とは?わかりやすくメリット・デメリットを説明します
・家族信託は危険?実際に起こったトラブルや回避方法
・家族信託に必要な費用を解説!費用を安く抑えるポイント
・自分には家族信託は必要ない?家族信託が使えない・不要となる場合を解説
・【家族信託の手続き方法まとめ】手続きの流れ・やり方を解説
家族信託をご検討中の方へ

目次
自益信託で課税されてしまう例外がある
家族信託の事例として最も多いのは、父親が、自分が認知症になる前に財産を子供に託して、父親が委託者兼受益者、子供が受託者になる、いわゆる自益信託です。
この自益信託の形で不動産を信託財産とする信託契約時においては、贈与税、譲渡所得税、不動産取得税等の税金は原則かかりません。
課税されるとしても、不動産の登録免許税の0.3%や0.4%程度とわずかなものです。
ただし例外があり、税務上のみなし受益者である「特定委託者」に該当する場合に贈与税の課税対象となります。
「自益信託」には「特定委託者」が含まれる
税務署・国税庁は、相続税法上の規定により課税対象者を「受益者」としています。
受益権はその信託財産から経済的価値を受け取る権利であり、それを持っている人が担税力があるとされているためです。
つまり先ほどのケースでは、父親が課税対象者になります。
受益権はその信託財産から経済的価値を受け取る権利であり、それを持っている人が担税力があるとされ、名義が受託者になっても経済的な価値を受け取る人は受益者だからです。
そのため「自益信託」のことを「受益者等課税信託」とも呼びます。
ここで着目すべきが、「等」の部分です。この受益者「等」課税信託の「等」の中に、「特定委託者」の立場が含まれているのです。
相続税法の「特定委託者」とは?
特定委託者とは、下記①②の『両方』に該当する者を指します。(相続税法第9条の2)
① 信託の変更する権限を現に有している
② 信託財産の最終的に給付を受ける権利を持っている(受益者を除く)
「特定委託者」は税務上のみなし受益者であり、「特定委託者」に該当するのは、冒頭に上げた事例の受託者(子)なのです。
まず、要件②を見ていきましょう。
親が亡くなった後にその財産(信託資産)は子が相続により取得します。子は財産の帰属権利者という立場であるため、②の要件を満たすことになります。
次に①の「信託の変更する権限」について、信託法上、信託契約は委託者・受益者・受託者の合意によって変更できるとされています。
そして相続の際の相続税法施行令は、「この変更権限とは他の者との合意によってする権限を含む」としています。
そのため信託契約の受託者は、①の要件を満たしているということになります。
すなわち、一般的に行われる家族信託において受託者(一般的に「子」)は、①②のいずれにも該当することになり、相続税法上の「特定委託者」に該当します。
ごく一般的なパターンの信託契約で、受託者(一般的に「子」)が贈与税の課税対象ということになるのです。
課税されないための回避策は?
多くのケースで親が委託者(兼受益者)、子が受託者で設計することが多い家族信託ですが、この「税務上のみなし受益者」について、どのように解決すると良いのでしょうか。
[1]軽微な変更権限に設定すれば特定受託者に該当しなくなる
これは特定委託者について定めた相続税法に注目して信託契約を正しく設計することがポイントとなります。
相続税法では、第9条の2第5項(要件②)おいて、カッコ書きで
軽微な変更をする権限として政令で定めるものを除く。
と書かれています。
これは、信託の変更権限を有するが、その変更権限が軽微な変更権限だけであれば、この権限に該当しない、という主旨になります。
つまり、受託者が持つ「変更権限を軽微な変更に縮小する」 ことで特定受託者に該当しなくなるのです。
[2]受託者の変更権限を信託契約で規定する
受託者の変更権限を縮小し、それを相続税法的にも適合する内容にするには、信託契約で正しく受託者の変更権限を設定する必要があります。
まず、「軽微な変更権限」とは具体的にはどのような権限なのかというと、政令の規定で、
「信託の目的に反しないことが明らかである場合の権限」
と規定されています。(相続税法施行令第1条の7)
そこで、受託者(この場合の「子」)の信託の変更権限を、信託契約書中の条項において
「委託者、受益者及び受託者は、本信託を、信託の目的に反しないことが明らかである場合に限り、変更することができる」
と規定しておきます。
そうすれば受託者の持つ変更権限が「軽微な変更権限」に縮小されるため、「特定委託者」に該当しない信託契約となるのです。
契約作成には専門知識も必要
今回は自益信託であっても贈与税等がかかってしまうケースがあること、その対策として「受託者の変更権限を縮小」することで回避できることを解説しました。
当社において組成する信託は、これまでもすべて特定委託者課税のリスクに配慮した上で、契約書の作成をしています。
家族信託契約は、記載方法で注意すべき点や設計の仕方にコツが要り、専門知識の必要な部分があります。
設計段階から専門家へご相談頂けましたら、税務上でも法的にも問題のない契約内容の作成に尽力いたします。司法書士等の家族信託に詳しい専門家へぜひご相談ください。