「遺言書作っていれば、認知症になっても大丈夫。」は本当か?

「遺言書作っていれば、認知症になっても大丈夫。」は本当か?

最終更新日 更新日: 公開日 公開日:

認知症になってしまうと遺言やエンディングノートを遺せないので、早めに準備しておきましょう!という話を耳にすることがあると思います。

すでに預金の情報や医療や介護についての希望をまとめたり、家の中を整理したり、遺言書やエンディングノートを用意している方もいらっしゃると思います。

では、遺言書があれば備えは十分でしょうか。

認知症になった際には、財産管理が難しくなるリスクもあるのです。口座に年金が入ってきても、介護費や生活費、水道光熱費の支払いにきちんと充てることができるのでしょうか。

実際の手続きと合わせてお話していきます。

遺言書≠認知症対策

遺言書を書くために、エンディングノートを活用して情報をまとめている方もいると思います。

エンディングノートは多様な種類が発売されており、遺言書を作るための下書きや構成にもなる優れモノです。

遺言を遺すことで自分が亡くなった後、家族にわかりやすくしておくことができ、また、財産の行き先もクリアにしておくことは、本人にとってもご家族にとっても安心ですよね。

ただし、これらの準備も重要ですが、認知症の件についてはいかがでしょうか。

例えば遺言書であれば、法的な効果も持ちますが、あくまでも遺言者が亡くなったときから効力を発生します。

そして、現代の日本では、65歳以上の人で認知症を発症している人は15%と言われ、2025年には65歳以上の5人に1人が認知症を発症すると推計されています。

認知症になった時の備えとして、遺言書やエンディングノートは役立つでしょうか。

備える方法になるかというと、具体的な対策にはならない、というのが実際のところなのです。

預金口座の凍結について

仮に認知症を発症したとしても、その進行度合いや症状は人それぞれだと思います。

ただし、金融機関の窓口では、口座名義人の意思能力が低下していると受け取った場合、多くのケースで口座利用の凍結を行うことがあります。

例えば親族がご本人とともに窓口で手続きをしようとする際や、代理のようにして窓口に行った際でも、金融機関は本人の意思確認を行います。

金融機関としては口座名義人の財産を守らなければなりませんから、本人以外のご家族がある程度まとまった資金を動かそうとする場合には、通常以上に本人確認等が厳しくなります。

具体的に何を確認されるかというと、

  • お金を動かすことへの本人の意思の確認
  • 本人の身分証の提示
  • 来店した本人の家族の身分証明書の提示
  • 場合によっては名義人と来店者の関係性の分かるもの

などが必要です。

認知症で意思確認が難しく引出がどうしても必要な場合、資金の移動記録が残る振込に切り替えることを勧められたり、介護施設や病院からの請求書の提示も必要になってきます。

認知症の程度にもよりますが、電話または面談による意思確認が難しい場合は資金を動かすことは難しくなるでしょう。

本人の意思能力がないと判断すると、預金保護のため凍結手続きをする可能性が高くなるのです。

金融機関が勧める「後見人制度」

認知症により金融機関での引出しが難しい場合、どうしたらよいのでしょうか。

一部の金融機関では、独自の認知症対策制度の取扱いも始まっていますが、取扱いとしては一部に限られています。

全国的な傾向として、金融機関では「後見人」を付けることを推奨しているのです。

後見人とは

金融機関が勧めることも多い「後見人」とは、「成年後見制度」の中にある「法定後見人」という制度を指します。

認知症などの症状により判断能力が低下した場合の法定代理人を決める制度で、家庭裁判所に「法定後見人」の選定を申し立てて利用します。

本人の判断能力が低下してしまうと、資産を動かすために利用できるのは、この法定後見制度のみというのが一般的です。

しかし、法定後見人として弁護士等の専門家が選定されるケースが大半であり、親族が後見人になったとしても第三者の後見監督人も選定されるケースが多いのです。

そのため親族にとっては財産管理がしにくくなる点や、専門家後見人・後見監督人に一定の報酬の支払いが必要となる点など、負担感の大きい制度なのです。

ご自身が認知症になってしまうことを不安に感じている段階であれば、上記のような状況に陥る前に、あらかじめ他の後見制度(任意後見人)の検討をお勧めします。

成年後見制度の「任意後見人」とは

成年後見制度には他の後見制度もあり、ご自身の判断能力が確かなうちに契約をしておく「任意後見」という制度もあります。

誰に後見を依頼するか、どういった管理を依頼するかを個人で決めて契約することができる制度で、実際に自分の判断能力が低下したときには家庭裁判所に申し立ててもらって利用を開始することができます。

任意後見の契約書は公証役場で作成することが条件となり、実際の利用開始には家庭裁判所による「任意後見監督人」の選定が行われるという条件があります。

それでも、上述の「法定後見」と比較すると自身の意向を反映しやすい制度だといえるでしょう。

全く知らない第三者が選定されるのではなく、親友や遠縁の人物など、信頼できる人に財産の管理などを任せておくことが可能となる制度です。

任意後見と併せて検討したい「家族信託」

また、任意後見制度以外に、認知症発症〜遺言効力発生までの間の対策として話題となっているのが「家族信託」です。

家族信託も任意後見制度と同様に、本人の判断能力があるうちに自分の信頼できるご家族や親族へ財産の管理を依頼し、「信託」という形で契約をします。

信託契約を行うため、本人の意思能力がはっきりしている段階で手続きをする必要があります。(※関連記事:『家族信託は早めに検討した方がいい理由とは』)

資産のうち、何を信託してどのように管理してもらうのかは、家族の中で決めることができるため、非常に自由度の高い制度だといえるでしょう。

信託する方(委託者)と信託を受ける方(受託者)との契約で成立するため、家庭裁判所など公的機関の管理も受けることがありません。(※関連記事:『家族信託はいつ始めるべき?』)

まとめ

今回の記事のポイントをまとめると以下の通りです。

① 遺言書があっても認知症対策としては不十分

② 認知症になると資産が動かせなくなる可能性が高い

③ 認知症対策として、事前に備えるのなら「任意後見制度」「家族信託」が有効!

将来のリスクに備えるために、どのように任意後見人や家族信託を利用すればいいのか、また、遺言書やエンディングノートの活用方法など、過去記事でもご紹介しています。(※関連記事:『家族信託・遺言と一緒に作るエンディングノートのすすめ』)

超高齢社会の日本で、認知症対策が取れるうちに早めに検討し、安心できる人生設計を立ててみるのはいかがでしょうか。

カテゴリー: 認知症と家族信託

この記事の監修者
梶原 隆央(かじわら たかひさ)

司法書士
梶原 隆央(かじわら たかひさ)

神奈川県出身/平成21年司法書士資格取得 トリニティグループの信託部門にて、実家信託から信託財産数億円に及ぶ信託、自社株式の信託等、幅広く信託案件に対応。

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