家族信託は使い方を間違えると、贈与税などの思わぬ課税を受けたり、家族の信頼関係にひびが入ってしまったり、困った事態になることもあります。

「家族信託を使ったら、大変なことになった!」
「こんな風になるならやめておけばよかった。」

実際に相談を受けた中から「家族信託の大失敗事例」を3つご紹介します。

家族信託について検討している方は、この記事を読んで、失敗しない家族信託の使い方を知っておきましょう。

要約

  • 兄弟姉妹に黙って親子1対1の契約で家族信託を進めた場合、後々トラブルになりやすい
  • 契約書の内容に誤りがある場合、契約書そのものが無効になるケースも
  • 契約内容や信託の状態によっては不動産取得税がかかってしうことも
  • このような失敗の原因は、多くが専門知識不足によるもの
  • 家族信託の経験が豊富な専門家に相談して失敗・後悔しない契約をしましょう

家族信託をご検討の方へ

あなたのご家庭にとってなにが一番合った財産管理の方法なのか、ご状況に応じた適切な対策を一緒に考えさせて頂きます。

認知症による資産凍結に関するお悩みや、家族信託・成年後見を用いた具体的な対策方法など、専門家へお気軽にお問合せください。

【1】家族信託で兄弟姉妹の仲が悪化

家族信託は、財産を預けたい人(委託者)と、財産を預かる人(受託者)との間で、「信託契約」という契約を締結することで利用できます。

例えば、親の財産を子供が預かる家族信託の場合では、親子1対1の契約だけで家族信託ができるのです。

ただし子供が複数人いる場合、信託契約を締結することを他の兄弟姉妹に伝えていなかった場合、または、伝え方が十分ではなかった場合、トラブルになりやすいため注意が必要となります。

家族信託では、受託者が預かった財産の管理・処分が出来るようになりますし、信託契約で「親が死亡した場合、残った信託財産は、長男が受け取る」というような受託者に有利な内容を記載しておくことができるためです。

​預かる1人が他の兄弟姉妹に黙って財産を掌握したかのように受け取られてしまうケースも考えられますので、信託の目的や預かる財産については説明の上、同意を得ておくことが非常に重要となってきます。

家族信託の契約書はどのように作るのでしょうか。インターネットで調べてみると、個人で作成するケースや専門家にお願いするケースなど様々です。実際に個人でも作れるものなのかどうか、また、専門家に依頼した場合のメリットや費用の面についてくわしく解説します。
【完全版】家族信託の契約書の書き方や注意点を司法書士が解説

【事例】実際にあった「弟に財産は1円も渡さない!」と決められた家族信託

自分が知らない間に、父親と兄が家族信託を契約していたというBさん。

父親の死亡により兄と相続について話し合った際、兄が家族信託を使って、父親の全財産を預かっていたことを知りました。

さらに四十九日を終えた時、兄から「お前には1円も渡さなくてよい契約になっているから」と言われたそうです。

母親はすでに他界。Bさんは本当に自分には1円の権利もないのかと悩んでいました。

【対応策】弟は最低限の「遺留分」を請求できる

Bさんは兄に対して、自分の相続する権利を主張することはできないのでしょうか?

本来であれば、Bさんは兄と2人兄弟のため、もし家族信託や遺言がなければ、全財産の2分の1は、法定相続分として相続する権利がありました。

しかし信託で相続の指定がされているという場合、まずは父親と兄との契約書を確認させてもらいましょう。

その上で、Bさんの「遺留分(いりゅうぶん)」に相当する遺産全体の4分の1の金額を、兄に対して請求することができます。

遺留分とは、各相続人に最低限認められている財産を相続する権利で、家族信託を利用したとしても無くなることはありません。

兄はBさんから遺留分の請求を受け、財産の4分の1に相当するお金を支払ったそうです。

家族信託を行う際には軋轢を生まないよう、家族内で情報を共有したり目的や信託財産について話合う必要があったといえます。

兄としては父親の認知症対策として始めた家族信託とのことですが、使い方を誤ると、兄弟の不仲を生む原因ともなってしまいます。

【2】契約書が「無効」?!家族信託の落とし穴

家族信託は歴史の浅い制度であるため、信託に関する情報もまだ充分に行きわたってはいません。

とくに「信託してはいけない財産」については注意が必要で、代表的なものとして「農地」があります。

土地の上に自宅の建物が立っていても、登記簿に記載された土地の種類が未変更で「田」や「畑」となっている土地がまれにあります。

登記簿上の記載によって信託できるかどうかが決まりますので、そのままでは信託することができないのです。

このような場合、農地の宅地転用許可を得て、土地の種類を「宅地」など、信託ができる地目に変更した後で信託登記をするという順番になります。

契約書の内容に誤りがある場合、契約書そのものが無効となるケースもあるのです。

そのため、個人で信託契約を成立させようとする場合には、注意点をチェックしていく必要があります。

できれば専門家に依頼して、内容に誤りのないよう、正しい契約書を作成しましょう。

家族信託は、高齢者の財産を家族が代わって管理する制度です。信託される主な財産には、預貯金などの他、土地や建物などの不動産が考えられます。ただし、信託する土地に地目が「農地」の物件があった場合、信託の対象にする際に注意が必要です。今回は地目が「農地」の土地について詳しく説明します。
農地は家族信託できるのか?司法書士がわかりやすく解説

【3】家族信託を利用したら、思わぬ税金が!

家族信託をスタートさせて不動産などの財産の名義を変更しても、贈与税や所得税などの税金はかからないのが原則です。

しかし、契約書の内容によっては、思いもよらない課税を受けることがあります。とくに注意が必要となるのが、「不動産取得税」です。

不動産取得税とは、他人から不動産を購入したり、新たに建物を建築したりした場合に課税される税金です。

通常であれば家族信託を使ったとしても課税されることはありません。

また、家族信託を利用し、親から不動産を預かったのち、親の相続が発生したタイミングでその不動産を相続した場合にも、原則、不動産取得税は課税されません。

このように、想定では課税されない税金ですが、相続のタイミングで注意が必要です。

不動産取得税が課税されないようにするため、契約内容や信託の状態が、一定の要件を満たしている必要があります。

①委託者=受益者の形が信託期間中、ずっと続いていること。
②財産を取得する人が、財産を預けた人(委託者)の相続人であること。
③財産を取得する人が、受益者としての地位を有すること

信託の契約書には多くの文言が盛り込まれますが、想定外の課税を受けないよう、このような要件も満たしながら正しく契約書を作成する必要があります。

ただし、条件に合うように信託契約を作成するのは非常に負担となります。そのため信託契約書の作成時点から専門家に相談してみてはいかがでしょうか。

家族の希望を組み込んだ内容で、法的な問題もクリアし、将来の相続時の問題にも対処できるような契約書を作成できるようになります。

契約書の変更は後からでも可能ですが、変更時点での委託者の意思・判断能力の状態によっては変更ができない可能性もあるため最初の契約書を正しく作成することが重要だといえます。

そのほか、家族信託にまつわるトラブルについて、こちらの記事でもご紹介しています。
家族信託の危険性、実際にあったトラブルや失敗事例を司法書士が解説

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家族信託で失敗・後悔しないためにも専門家に依頼をまとめ

家族信託の利用についてのトラブル事例を紹介させていただきました。

家族信託は、非常に便利な制度で認知症や将来への不安から普及していますが、今日お伝えしたように、

① 家族間の話し合い
② 経験豊富な専門家の関与
③ 税金にも配慮した契約書の作成

これら3点に留意して、信託契約を作っていく必要があります。

希望を盛り込みながら法的にも客観的にも正しい書類を作成することは非常に難しく、負担になる部分もあるでしょう。

家族信託を正しく活用し、不要な税負担を受けることのないよう、信託契約を熟知した専門家をぜひ見つけて頂きたいと思います。

家族信託は「認知症による資産凍結」などを防ぐ法的制度のこと。自分の財産(不動産、預貯金など)を管理できなくなったときに備えて、自分が保有する財産の管理や運用、処分をする権利を家族に与えておくことができる仕組みです。この記事では家族信託の仕組みやメリット、デメリットを解説します。
家族信託とは?メリット・デメリット・費用をわかりやすく解説

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