家族信託は司法書士・行政書士・弁護士のうち誰に頼むべきか?

家族信託は司法書士・行政書士・弁護士のうち誰に頼むべきか?

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家族信託を行うにあたっては、法律・登記・税金・不動産売買(賃貸)といった幅広い専門知識が必要になります。

専門家が依頼を受けた場合でも、契約に漏れがないよう、司法書士、弁護士や税理士、公認会計士といった他の士業のサポートを受けるケースもあるのです。

そのため個人の方が自分自身で家族信託の契約まで完了させるのは非常に難しく、専門家のサポートが必要だといえます。

家族信託を専門家に依頼する場合、費用はどのくらいかかるのでしょうか。

家族信託のコストは大きく2つに分けられます。

  • 実費部分(公証人手数料、登録免許税など)
  • 専門家への報酬

コストを考える上では専門家への報酬がポイントになるでしょう。

今回は、法律の専門家である弁護士、司法書士、行政書士の中でどの士業に依頼したら良いのか、費用対効果を含めて解説します。

家族信託とは

まず、家族信託の概要について解説します。「信託」とは、自分が有する現金・預金・不動産といった財産を信頼できる他人に託して管理・運用・処分してもらうことを言います。

投資信託のような金融商品も、この信託の一種です。

家族信託においては、

  • 委託者:財産の所有者であり財産を託す人
  • 受託者:財産の管理・運用・処分を託される人
  • 受益者:託された財産から経済的利益を受ける人

3つの役割があります。

法的にはそれぞれ別の人を設定することも可能ですが、贈与税がかからないように設計するため、「委託者=受益者」にしてスタートします。

また、従来の一般的な信託は、受託者が金融機関や法人であることがほとんどでした。信託銀行などが受託者となり、依頼を受けて資産の管理を行います。

これに対し、家族信託は家族が受託者となる点に大きな特徴があります。

家族信託では、財産を預けるのが自分の親族なので、信託契約の内容を柔軟に決めることができるのです。

このようなメリット面から、家族信託は新しい資産管理の方法や相続対策として注目を集めています。

《家族信託について詳しくはこちらを参照》

専門家に依頼する際の費用について

家族信託においては、現金や不動産といった財産を家族に管理・運用してもらうため、契約の締結や名義変更、信託登記といった手続きが必要になります。

税務上や信託契約に問題はないかというチェックが必要ですし、信託登記については通常の登記手続きとは異なる内容のため一般的に司法書士に依頼して登記手続きを行います。

一見すると報酬は高額に見えますが、これらの信託関連の手続きを確実に締結するため専門家を利用する費用となります。

まずはコンサルティング費用に含まれる内容について見ていきましょう。

(1)コンサルティング費用

家族信託の相談から設計・組成をする際にかかる費用です。信託の内容によって、報酬の金額には違いがあります。

相場は財産額の1%(最低30万円)からであり、1億円以上は0.5%〜という設定が多いようです。ただし設計の難易度によって加算のある場合があります(加算額は0.5%程度)。

例として、不動産(評価額)2500万円、金銭2500万円を信託する場合、報酬は50万円になります。不動産を含む財産全体の評価については各専門家・事務所で異なる可能性があります。

● 不動産の評価額について

不動産には時価(売買される際の相場)、路線価(土地の相続税計算の基準)、固定資産評価(固定資産税計算の基準)の3つの評価額があります。

信託契約は財産の大きさにより費用が上がりますので、どの評価方法を採用するかによってトータルコストも変わる可能性があります。

不動産については、時価相場を1とすると路線価が0.8、固定資産税評価が0.7程度になります。

一般的には、固定資産評価額を参照するケースが多いかと思われますが、専門家に正式に依頼をする際にはどの評価を採用しているか確認をしておくとよいでしょう。

(2)契約書作成費用

家族信託契約書の作成費用で、相場は10〜15万円程度です。上記のコンサルティング費用と一体とされている場合もあります。

(3)登記費用

信託財産に不動産が含まれている場合に登記費用が必要となります。司法書士に依頼した場合の相場は10〜15万円程度です。

登記のみを司法書士に依頼して、他のコンサルティング・契約書作成を弁護士等に依頼する方法もありますが、その場合は登記のために契約書のチェックなどを別途、行う必要が出てきます。そのためこの相場より高くなる可能性があります。

《参考》その他の実費関係

上記のような報酬部分以外に、下記のような実費部分が必要となります。(金額は財産額に応じて異なります)

  • 公正証書作成 …… 2~10万円以上
  • 登録免許税(不動産を信託財産とする場合)…… 5~15万円前後(不動産が土地1筆・建物1棟の場合)
  • その他実費 …… 郵送費、住民票、評価証明書、登記簿謄本等の取得費用(1~3万円程)

公正証書作成手数料とは、家族信託契約書を公正証書とする場合にかかる費用です。

公正証書を作成する場合は公証人に支払う手数料が必要となり、この額は信託の対象となる財産の額によって決まります。

登録免許税の額は、固定資産税評価額の1,000分の4です。例えば、固定資産税評価額が1,000万円の不動産を信託財産とする場合にかかる登録免許税は4万円となります。

家族信託の費用について解説→家族信託に必要な費用はどのくらい?

家族信託における弁護士・司法書士・行政書士の違いとは

家族信託は家庭の事情に合わせて信託を組み立てる必要があるため、財産の額や、信託する財産の中に不動産があるかどうか、財産の承継先はどうするのかなど、家族ごとに課題が異なるものです。

また、同じ内容で依頼しても、士業によってカバーできる範囲が異なるため、単純に報酬額だけで判断することもできないのが実状なのです。

一見報酬が安く見えても、信託登記を別途、司法書士に依頼するため追加で登記手数料が発生することになった、ということもあり得ます。

そのため専門家に依頼を検討している場合は、費用面に加えて、できるだけ家族信託全体をカバーできる専門家がコスト的にも良いといえるでしょう。

昨今、家族信託の費用相場が固まりつつあるため、専門家の種類による報酬の差は実はそこまで大きくありません。

そのため、どこへ相談すれば良いのか、専門家に家族信託を依頼する場合の費用について比較してご紹介します。

家族信託に関する部分に限定して、各専門家の得意分野や対応できる分野などを簡単にまとめました。

■弁護士■

<得意分野>
法律全般(弁護士により専門分野あり)、裁判、交渉

<対応分野>
家族信託において、全て対応できます。(ただし、税務申告を除く)

<依頼すべきケース>
信託をすることにより紛争が顕在化する恐れがある場合は、弁護士に依頼をするのが良いでしょう。

例えば、推定相続人間の後継ぎ問題や財産承継の方法などで、信託をすることにより紛争が顕在化したり、法律的に複雑な問題を抱える場合があります。

資産家や地主さんは、このようなケースに当てはまりやすいかもしれません。

紛争解決は弁護士の専門分野でもありますし、代理人として交渉してもらうことをお願いすることもできます。

なお、司法書士と行政書士は、紛争が顕在化した場合に代理人となることはできません。

■司法書士■

<得意分野>
登記

<対応分野>
家族信託において、ほぼ全て対応できます。

<依頼すべきケース>
財産に不動産が含まれる場合は、登記の専門家でもある司法書士への依頼が安心だといえます。

信託登記では「信託目録」の作成が必要であり、何をどこまで記載するのかについて、司法書士の裁量が必要な面があります。

法的には弁護士でも登記を取り扱うことが可能ですが、弁護士からの依頼で司法書士に確認が来るケースがあります。

弁護士に依頼した場合でも登記のみ、司法書士に外注されるケースが多いのです。

とくに家族信託の場合、信託の登記は不動産登記の中でも例外的で少し特殊な登記であるため、信託財産の中に不動産がある場合は、登記の専門家である司法書士に依頼するのが最適だといえます。

●家族信託の契約書の書き方とは?→【完全版】家族信託の契約書について解説

■行政書士■

<得意分野>
書類作成

<対応分野>
信託契約書の作成

<依頼すべきケース>
信託契約書を含む書類作成は行政書士の専門分野です。ただし弁護士、司法書士とは異なり、登記を扱うことはできません。

そのため、家族信託で信託財産に不動産がなく、かつ、紛争も顕在化しないケースであれば行政書士への依頼も検討できるといえます。

例えば、シンプルに預金資産のみを家族信託したい場合や、信託契約書だけ専門家に作成してもらいたい場合などが該当するでしょう。

【結論】家族信託は司法書士への依頼が圧倒的に多い

家族信託で専門家へ相談する場合、司法書士に依頼されるケースが一番多いようです。

国内金融機関の統計によると、金融機関に持ち込まれた「信託口口座(信託のための専用口座)」の開設依頼の持ち込み件数から推計された割合は、司法書士がかかわる案件が7~8割、弁護士は1割強、残りが税理士と行政書士という内訳だったといいます。

(※参照:第21回弁護士業務改革シンポジウム【第10分科会】民事信託の実務的課題と弁護士業務/第二東京弁護士会・公式サイト「今こそ民事信託」)

これは、司法書士は業務として相続登記・成年後見といった家族信託と親和性の高い業務が専門である点が一番の理由だといえるでしょう。

家族信託そのものが平成19年に登場したばかりの制度であることもあり、すべての専門家が家族信託に精通しているとは言えない状況です。

そのなかで家族信託にマッチした専門家として、司法書士が位置していることが選ばれている理由だといえるでしょう。

また、家族信託では利用がスタートした後も受託者としての手続きにサポートが必要になったり、相続についての調整が必要となるなど、その親族ならではの悩みも出るケースがあります。

そのため気軽に継続して相談を受けられる士業が重宝されているという点も司法書士が選ばれる理由の1つだといえます。

このように、家族信託については司法書士のサポートが現在のところ大半を占めている状況にあります。

《司法書士がサポートするメリット》

  • もともと登記・遺言関係を日常的に取り扱っている
  • 業務として成年後見制度の実務にも精通している
  • 普段から契約書作成も行っている
  • 不動産の信託が含まれる場合、登記まで一貫して依頼できる
  • アフターサポートまで含め、報酬の面からも気軽に相談しやすい

このように、家族信託は司法書士へ依頼すれば契約書の作成から登記手続きまでワンストップで完結しやすくなります。

登記のみ外注するケースの多い他の士業よりもトータルでの費用を抑えられる可能性の高い点、そして後々の相談もしやすいという点で多くの家族に選ばれているといえます。

相談する司法書士を選ぶ際の5つのポイント

では、司法書士を選ぶ際にはどのような点に注目したらよいのでしょうか。家族信託を相談する際の司法書士選びのポイントをご紹介します。

1 家族信託専門の民間資格を取得している

家族信託には「家族信託専門士」など、民間の専門家資格がいくつか存在します。

これらの資格を保有している専門家は、家族信託について最新の情報を習得しているため信頼性も高いといえます。

家族信託は契約が完了してから開始すると、その後の手続きもかなり煩雑なものが存在します。

これらのアフターフォローについてもサポートを求めるなら、家族信託関連の資格を保有した専門家に頼る方が安心でしょう。

2 家族信託の取り扱い実績

家族信託はまだ新しい制度のため、家族信託を取り扱う専門家は、士業の別を問わず、まだまだ多くはないのが現状です。

そのため家族信託の取扱件数についても確認しておきたいポイントです。

目安としては取扱件数10件以上あるかどうかが実績として信頼できる境目だといえます。

3 専門領域の横のつながりやネットワークを持っている

家族信託を行うにあたっては、法律・登記・税金・不動産売買(賃貸)といった幅広い専門知識が必要になります。

契約を正しく成立させるため、家族信託においては複数の専門家が一つのチームとなり連携しながら信託契約の締結やアフターフォローを行うのが一般的です。

司法書士、弁護士や税理士、公認会計士などの士業だけでなく、不動産鑑定士やファイナンシャルプランナー、保険代理店などのサポートを受けるケースもあります。

つまり他の専門家や関連会社とのネットワークを持っている専門家ほどスムーズな信託契約に結びつきやすいといえるでしょう。

また、家族信託については利用をし始めてから長年にわたって契約が続きます。

相談やアフターフォローなども必要となってきますので、他の専門家や関連会社との連携のある専門家ほど頼もしい存在となります。

選ぶ際のポイントの1つとして、事務所の連携やネットワークについても確認してみてください。

4 アフターフォローを丁寧にしてくれる

家族信託は信託契約を締結した後も、財産の運用・管理が続いていきます。

信託契約の内容の変更や取り扱う財産の内容の変更などが起きる可能性もあり、また、法改正・判例変更等による法律面の変化や、税制改正、財産の状況、社会情勢の変化に適応するための調整が必要となるケースがあります。

そうした事後的な調整も必要となる可能性がありますので、専門家の相談を継続して受けられるようなトータルでのフォローが重要です。

これらのアフターフォローの対応についても重要なポイントとなりますので確認をしてみてください。

5 司法書士が複数在籍している司法書士法人に相談する

司法書士には個人事務所と司法書士法人の2パターンがあります。

家族信託は取り扱う領域が広く業務量も膨大な量になりますので、司法書士法人であれば、複数の司法書士や事務スタッフが効率的に業務にあたるためスピーディに仕事をしてもらえるでしょう。

また、委託者(=受益者)が亡くなり相続となった場合は信託財産の登記手続きが必要です。

そのため家族信託が開始した後、長い年月を経て再度、司法書士に依頼をする可能性があります。

そのような段階を想定すると、複数の司法書士が在籍している司法書士法人であれば、情報を共有している複数の司法書士がいるという安心感があり、また、組織としても司法書士法人の方が長年存続する可能性が高いといえます。

家族信託については信頼できる司法書士へご相談を

不動産の信託取扱いを含めて、現在のところ家族信託の取扱い件数は司法書士が圧倒的割合のようです。

司法書士はもともと相続や登記、成年後見制度の実務などに携わっているため、家族信託との親和性が高い士業であることも選ばれているポイントだといえるでしょう。

ただし親族間での紛争が想定されるケースの場合はストレートに弁護士への依頼が早いでしょうし、契約書の作成のみを依頼したい場合や信託内容が預貯金に限られる場合などシンプル設計の場合は行政書士に依頼するという選択肢もあります。

しかし一般的な家族信託の相談の際には、実績をある程度持っている司法書士への相談がおすすめだといえます。

また、家族信託に限ったことではありませんが、専門家へ相談する場合は長い付き合いになるケースが多いですから、「この人なら安心して仕事を任せられる」という安心感があるか否かをよく検討してから依頼する司法書士を選ぶと良いでしょう。

当社にも多数の司法書士が在籍し、連携しながら家族信託を専門的に取り扱っております。

家族信託について専門家に依頼を検討されている場合には、取扱い件数も豊富な当社へのご依頼をぜひご検討ください。

この記事の監修者
森 賢治(もり けんじ)

家族信託コンサルタント
森 賢治(もり けんじ)

大阪市出身/宅地建物取引士 家族信託チーム、資産コンサルティングチームを兼任。一般個人の相続手続き、不動産決済といった業務を担当後、資産コンサルティング部門を立ち上げ。「相続×不動産法務×税務」等多方位から顧客をサポートします。

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