この記事では遺言書の種類や特徴について説明していきます。

遺産相続の方法を、その手続きにかかる費用という観点で、比較していきたいと思います。

「財産を希望する家族に、きちんと遺したい。」
「遺された家族がもめることだけは避けたい。」
「遺産は、自分が思うような使い方をしてほしい。」
「なるべくお金をかけずに対策したい!」

遺産相続についての思いは、十人十色。

その人にあった遺産相続の方法を選ぶお手伝いをするのが、相続の専門家の務めです。種類の増えた遺言方法について説明していきます。

種類が増えた遺言方法

法務局にて自筆証書遺言の「遺言書保管制度」が開始したことで、遺言書を残す方法が増えました。

[1]自筆証書遺言
・自宅保管(検認が必要)
・法務局保管(自筆証書遺言の「遺言書保管制度」)

[2]公正証書遺言(公証役場で作成)

[3]家族信託を活用

これらについて順に説明していきましょう。

[1]自筆証書遺言

最も費用が掛からない方法は「自筆証書遺言」を作成する方法です。遺言の内容を記載し、日付と名前を書き、自分の印鑑を押すことで有効な遺言書が出来上がります。

原則は、遺言をする人本人が、全文を手書きで書く必要がありますが、財産目録の部分については、印字したものでもよいという特例があります。

注意点1 書き方によっては相続手続きに使えない可能性も

自筆証書遺言は費用が掛からないというメリットがありますが、内容の有効性について注意点があります。

例えば、「自分の自宅は、長男に相続させる。」と書いた遺言書があったとします。

この遺言書があったとして、相続の時に長男は、この遺言書を使って自宅の名義を自分に変更することができるでしょうか?

実は、この内容の遺言書では、実際の自宅の名義変更の手続きには使用できない可能性があります。

なぜなら、「自宅」と表現している不動産がどの不動産のことなのか客観的に明らかでない可能性があるためです。

このような誤りを防ぐために、専門家に遺言書の内容をチェックしてもらう方法がお勧めです。専門家によって異なりますが、おおよそ2万円〜5万円程度でチェックしてもらえるケースがあります。

自筆証書遺言の場合は、専門家のチェックを受けると安心だといえるでしょう。

注意点2 自宅保管による紛失リスク

自筆証書遺言は、基本的には自宅で保管することになります。

自宅で保管する場合、遺言書自体を紛失したり、相続人の方々に見つけてもらえないという恐れもあります。

また、銀行の貸金庫などの保管も、実はあまりお勧めできません。

銀行の貸金庫は、ご本人が亡くなったあと相続人の方が開けることになりますが、貸金庫を開けるためには相続人全員の同意や戸籍謄本等の証明書類が必要です。

書類収集に時間がかかるため、遺言書の確認までに時間がかかることがあります。

貸金庫を開けるまでの間に、相続人の間で相続財産の分割方法について合意が成立したのに、貸金庫を開けたタイミングで遺言書が見つかってトラブルになった、というケースもあります。

注意点3 自筆証書遺言の執行には「検認」が必要

自宅に保管されている自筆証書遺言については、家庭裁判所に相続人が集まって内容を確認する手続きを経る必要があります。

検認手続きは自宅保管の自筆証書遺言のみが必要となり、その他の「公正証書遺言」や自筆証書遺言の「遺言書保管制度」を利用した遺言書の場合は、検認不要です。

検認のためには必要書類を用意して家庭裁判所に申し立てを行い、指定された検認期日に、少なくとも申し立てをした相続人が出席します。

この「検認」を終えることで家庭裁判所から「検認済証明書」が発行され、検認済みの遺言書である旨が証明されます。

ただし、検認は検認が完了した旨のみを証明するものであり、内容が真正であるかどうかは問われません。遺言書が本物なのかどうか、有効か無効かについては、別途、問われるものとなります。

遺言書の検認を申し立ててから検認期日までの期間は、おおよそ1〜2カ月程度かかります。しかも検認を受けずに勝手に遺言書を開封すると、5万円以下の過料が科されます。

このように自筆証書遺言にはさまざまな手続きが必要になるのです。

紛失リスク・検認を回避する「遺言書保管制度」

このような自筆証書遺言のトラブルを防ぐため、2020年7月から法務局による「遺言書保管制度」が始まりました。

所定の大きさの用紙(A4サイズ)で遺言書を作成したのち、法務局に持参して手続きを行うことで、その方が亡くなるまで遺言書を保管してもらえます。

● 法務局で遺言書を保管してもらえる

● 遺言書を預けた人の死亡届が提出されると、あらかじめ登録していた相続人などの住所あてに郵便で連絡をしてくれるサービス

● 費用は1件の遺言書の保管の依頼ごとに3,900円

● 相続開始後の「検認」も不要

遺言書保管制度を利用することで、通常、自筆証書遺言で必要な「検認」手続きも不要となります。低費用で自由度も高く、便利な制度だといえるでしょう。

[2]公証役場で作成する「公正証書遺言」

公証役場にて公証人に作成してもらう遺言書が「公正証書遺言」です。遺言書の有効性など、よくあるトラブルを避けたい場合にお勧めです。

手続き費用(公証人手数料)は資産額や相続人の数によって異なり、資産3000万円を1名に遺す遺言書であれば約4万円程度で作成できます。

財産額などにより費用は変動しますが、おおよそ10万円以内で作成できることが多いでしょう。

有効性の証明された遺言書となり、また、遺言書保管制度を利用した場合と同じく、「検認」手続きも不要となります。

【相続発生時や相続税について相談したい場合】

相続発生時の手続きや相続税について相談したい場合は、弁護士や司法書士、税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。

この場合には、依頼した専門家がこちらの希望を聞いて遺言書の案文を作成してくれます。起案等の手数料についてはおおよそ10万〜20万程度です。

[3]認知症対策もできる「家族信託」の活用

家族信託には、認知症対策の機能の他に、相続後の財産の承継先を決める機能があります。

つまり、家族信託の信託契約で定めておくことで、遺言書を作成したのと同じ効果が得られる内容にすることができるのです。(参考記事:『【動画で学ぶ家族信託 #2】家族信託ってどんなもの?』)

家族信託を利用するための費用は、信託する財産の総額によって変わりますが、仮に3000万円の金銭を信託する場合はおおよそ30〜40万円程度が相場となっています。

最初に少しまとまった費用がかかりますが、認知症対策と財産管理、そして遺産相続の手続きを兼ね備えた内容を作り上げることも可能であるため、検討する価値のある制度であると言えます。

家族信託と遺言書との比較について、過去記事でも解説していますのでご参照ください。
● 『家族信託と遺言、どちらの法的効力が強い?
● 『「遺言書作っていれば、認知症になっても大丈夫。」は本当?』 

まとめ

今回は、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「家族信託」についてご紹介しました。

法務局による「遺言書保管制度」は、自筆証書遺言でありながら「検認」等の家庭裁判所の手続きが必要ない遺言書を作成することができます。

また、遺言書の有効性についてのトラブルを避けたい場合には公正証書による遺言書を作成する方法もあります。

遺産相続の対策や認知症対策など、複合的に対策をしたい場合には家族信託の利用もお勧めです。

遺産相続は家族にとっても重要な意味を持ちますので、費用面、内容の充実度、家族の安心感など、優先事項を考えて検討してみてはいかがでしょうか。