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今回は、家族信託で財産を預かる「受託者」について解説します。
誰が受託者になれるのかという点は、家族信託のご相談の中で、よくいただくご質問です。
その中でも、今回は、
[1]未成年者
[2]家族(子、孫などの直系親族)以外
[3]複数名
[4]委託者
[5]受益者
これら5つの立場・状況にある方が、家族信託の受託者になりうるか、解説していきます。
目次
[1]未成年者
【例】未成年者の孫
⇒ 未成年者であるため、このケースでは孫を受託者にはできません。
信託法で、未成年者を受託者とすることはできない、と定められています。
【信託法第7条:信託は、未成年者を受託者としてすることができない。】
未成年者は、親などの法定代理人の同意を得なければ原則として有効な法律行為(契約など)をすることができません(民法第5条)。
そのため、未成年者のお孫さん等を受託者にすることはできないことになります。
[2]家族以外の人(子、親などの直系親族以外)
【例】【例】甥、姪、おじ、おばなど直系親族以外の人、血縁関係のない第三者
⇒ いずれも受託者にすることができます。
信託法第7条(未成年者は受託者となれない)以外に受託者になれる人を制限する規定がないためです。
家族信託は、名称に「家族」とついているので、その名の通り家族間でしかできないのでは?と考えがちですが、実は家族間でなくてもできるのです。
民事信託を誰にでもわかりやすくする意味で「家族信託」という名称が用いられているにすぎません。
[3]複数名
【例】長男、次男2人両方に受託者になってほしい場合
⇒ 2人とも受託者とすることはできます。
信託法上に複数の受託者を想定した規定が存在します。
ただし、複数受託者を定める場合の注意点があります。それは、信託契約の中に受託者それぞれの権限が定められていない場合、受託者の過半数の一致が必要となる点です。
《受託者が複数の場合の注意点》
仮に、例のように長男、次男の2人を受託者として定めた場合、受託者の権限行使には過半数の一致が必要です。
つまり、受託者2人の一致が必要となりますので、仲違いしてしまった場合には受託者の権限行使ができなくなってしまうといったリスクがあります。
そのため、「信託契約に長男・次男とも関与してほしい」という場合には、2名とも受託者とするのではなく、長男を受託者、次男を受託者の監督をする「信託監督人」に設定する方法がおすすめです。
[4]委託者本人
委託者本人が受託者になると、財産を預ける人と預かる人が同じ人物になります。
これは「自己信託(信託宣言)」といって、委託者本人が受託者となって「受益者のために」自分の財産を管理運用することをいいます。(信託法3条3項)
自己信託では、利益を受ける受益者は、家族のケースや他人のケースもあります。
【例】親御さんが自分の財産の委託者兼受託者となり、障がいのあるお子様を受益者として、そのお子様のために自分の財産を管理する場合
[5]受益者
信託された財産を受益者のために管理運用する立場が受託者なので、受益者が受託者になるという設定はあまり想定されていないケースだと思います。
これは相続発生時に運用される方法で、下記のような事例があります。
【例】委託者兼受益者がA、受託者がBの場合に、信託契約の規定により、Aの死亡により受益者がBとなる場合
⇒ この場合、受託者と受益者が完全に一致してしまいますが、この状態でも1年間は信託の効力を維持することが可能です。
(1)受益者=受託者の場合は「信託の終了事由」に該当する
ただし、上記の状態で1年経過すると、信託の終了事由に該当します(信託法第163条第2号)。
信託法第163条2号は「受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が一年間継続したとき」に信託が終了すると規定しているからです。
(2)信託の終了事由に該当しないケース
【例】委託者兼受益者がA、受託者がB、信託契約の規定により、Aの死亡により受益者がB、C、Dとなる場合
⇒ もともとの受託者Bに加えて、C・Dという受託者ではない人たちが受益者になるケースです。
受益者と受託者は完全一致していないため、終了事由には該当しないことになります。1年経過後も信託はそのまま継続し、終了しません。
(3)受益者連続型信託の場合は贈与税に注意
信託財産の承継を定めている受益者連続型信託の場合、贈与税の面で注意が必要です。
受託者が信託財産の給付を最終的に受ける権利を持っている場合、受託者が相続税法上の「特定委託者(税務上のみなし受益者)」に該当すると課税対象となる可能性があります。
このような想定しない課税を回避するには信託契約の書き方に注意が必要です。
以前のコラム(【家族信託のリスク!?】特定委託者課税のリスクと対策を解説します!)で解説していますので、ぜひご参照ください。
受託者の職業について
5つの立場・状況にある人について、受託者になれるかどうかを見てきました。
では、受託者の職業的にはどうでしょうか。
受託者が公務員の場合
受託者が公務員で、収益不動産を管理していく場合、副業禁止規定には抵触しないのでしょうか。
『公務員(副業禁止者)が家族信託の受託者になることは可能か?』
専門家は受託者になれるのか?
また、家族信託のトラブルを回避するには専門家に受託者になってもらえばよいのではという考え方もあると思います。
では、専門家は受託者になることはできるのでしょうか。こちらの記事『司法書士・税理士・弁護士は家族信託の受託者になれるのか』にて解説しています。
受託者について信託契約の設計が重要
「家族信託で受託者になれるのは誰か?」について、ご説明いたしました。
家族信託という名称でありながら、家族以外でも受託者になれる、という点がポイントです。頼れる家族がいない方でも、家族信託を活用できる可能性はあるということです。
受託者を誰にするかは、家族信託をするにあたって非常に重要なポイントになります。
また、贈与税の部分でも信託契約の設計が重要となりますので、不明な点等ある場合は、ぜひ専門家にご相談ください。