家族信託をやめる・終了したいときの手続きについて

家族信託をやめる・終了したいときの手続きについて

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家族信託契約を締結したものの、一度締結した家族信託契約を無効にしたいというケースもあるでしょう。

「相続税の関係から問題がある契約内容になっていると税理士から言われた…。」

「自分の知らない間に他の兄弟が父と家族信託契約を締結していた!不当だから、無効にしたい!」

このような場合、どのような手続きを取るとよいのでしょうか?

家族信託契約の終了事由

家族信託には、委託者の死亡など、発生した出来事により自動的に終了するケースや契約内容に該当することで終了するケースがあります。

  • 委託者及び受益者の合意で信託を終了させたとき
  • 委託者が死亡し、死亡により終了する旨の信託契約を組んでいたとき
  • 受益者と受託者とが同一人物となり、受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が1年以上継続したとき
  • 受託者が欠けた状態となり、新受託者が就任しない状態が一年間継続したとき
  • 信託の終了を命ずる裁判があったとき
  • 信託財産についての破産手続開始の決定があったとき

このような終了事由があり、信託法163条および164条1項において定められています。

今回は、意図的に信託契約を終了させたいという点にフォーカスして、終了事由から抽出して解説します。

[1]委託者・受益者の合意による終了

委託者及び受益者は、その合意により、いつでも信託を終了することができます(信託法164条)。

家族信託においては、委託者と受益者は同一人であることがほとんどですが、この場合には1人で決定して終了させることができることになります。

また、もし信託契約に受託者を解任する定めを設けている場合はその定めにより終了するため、家族の状況に応じて信託の終了に関する定めを定めておくと良いでしょう。

[2]後見人を選任し終了

もし委託者兼受益者の認知症の症状が進行してしまった場合は法的行為が認められなくなるため、[1]の合意による終了を実行したくても合意による終了はできないことになります。

例えば周囲の家族が受託者の行動を不満として解任させたい場合は、委託者の成年後見人の申立てをして、後見人が選任されれば、後見人が本人を代理して合意による終了をすることができるようになります。

後見人は、成年被後見人の代わりに財産管理や身上監護を行う権限を有していますから、財産管理の権限においては、受託者に似た権限を有することになります。

成年後見制度の特徴

後見人は本人の資産の保護を目的として職務を行うため、自由度のある財産管理は難しくなります。

また、一度後見制度を利用開始すると、希望により利用終了することはできず、後見人への報酬の支払いが生じるなどの特徴があります。

後見人制度の利用について検討する前にその特徴についてしっかり把握しておきましょう。下記記事もご参照ください。

→『家族信託と成年後見の違いは?どちらを使うべき?

[3]信託監督人の設置

家族信託では受益者が受託者の行為を監督できますが、受益者がいても受託者を監督できないときに「信託監督人」を設置することが可能です。

  • 信託監督人は信託契約で定めることができる
  • 信託監督人が定められていない場合、利害関係人から家庭裁判所に信託監督人の選任を申し立てることができる

信託監督人はいてもいなくても受益者による監督を妨げることはありません。そのため信託契約の当初より定めておくと安心だといえます。

信託監督人については下記記事もご参照ください。
→『信託監督人とは?〜家族信託を監視・監督する重要な役割〜

[4]裁判所に終了の申し立てを行う

信託開始当時に想定していなかった事象が生じた場合、裁判所の命令によって信託を終了させる方法もあります。

信託契約を開始した当時、予見することのできなかった特別の事情が発生した場合、信託を終了させることが受益者の利益に適合すると判明するようなケースも起こりえます。

信託を終了させた方が受益者の利益になると判明した時には、利害関係人などから家庭裁判所に申立てることで、裁判所は信託の終了を命ずることができるのです。(信託法165条)

[5]契約内容の無効を求める訴訟を提起する

「父は認知症なのに、いつの間にか他の兄弟が信託契約を締結していた」など、信託契約の締結行為が無効である旨を裁判によって明らかにし、信託契約の無効を求める方法もあります。

これは信託契約を締結した時点で、契約の当事者が意思能力を有しなかったときに、その契約行為を無効とするものです(民法3条の2)。

契約が締結された当時、高齢の親が認知症のため意思能力を失っていたり、財産を信託するつもりはなかった、などの理由で無効を主張することが考えられます。

信託契約を公正証書で作成していた場合であっても、裁判により信託契約が無効とされる場合はあり得ます。

公証人が信託契約公正証書を作成する場合は、契約締結の際に委託者の本人確認、意思確認を行いますが、その判断も絶対的ではないということです。

ただし、その無効を立証する負担は、無効を主張する原告側の負担となりますので簡単ではありません。

また、相続時の遺留分を侵害するような信託契約である場合に無効を主張されるケースも考えられます(民法90条)。

いずれにしろ、訴訟提起は費用も時間もかかるため、慎重な検討が必要です。

身内間のトラブルを避けるためにも、信託契約時に周囲への説明や同意を十分行っておく必要があるといえるでしょう。また、契約内容について、他の親族の権利を侵害しないよう、十分な配慮が必要だといえます。

●参考記事:『仲の悪い家庭で家族信託を利用するときの注意点 4選

信託契約を終了させる方法

以上、信託契約を終了させる方法や無効を求める方法について解説してきました。

せっかく締結した信託契約を終了させなくても済むように、きちんとした検討と、他の家族への十分な説明を行った上で、信託契約を締結することが重要です。

もしものトラブルに備えた信託の仕組み作りや信託契約の法的な整合性など、組成する際には充分な検討が必要だといえます。

対応が難しい場合や契約内容の変更を要する事態になった場合については司法書士法人等の専門家へ相談されることをお勧めします。

この記事の監修者
竹中 章(たけなか あきら)

司法書士
竹中 章(たけなか あきら)

北海道生まれ、福岡・名古屋・千葉育ち/平成22年司法書士登録 相続、家族信託、事業承継、企業法務等、総合的なご相談対応を行っている。

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