家族信託の利用により相続についても指定できるため、後継者を想定しているご家族の場合、信託契約を非常に便利だと感じるかもしれません。

家族信託を利用するご家族の中には、信託法で守られているという安心感もあり、
「代々、守ってきた資産があるから、家柄を守るためにも、家族信託で跡継ぎを決めて財産を承継させていきたい」
という方は一定数いらっしゃると思います。

つまり、「家族信託を将来ずっと継続させたい」というものです。

仮に将来の後継者をすべて決めることができるような仕組みを作ることができたとします。

では、その仕組みをもとに信託契約に則って家族信託を永久に継続させることは可能なのでしょうか?

今回は、このような信託契約の永続性が可能かどうかについて解説します。

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信託法上の終了事由

まず、家族信託の永続性を考えるために、信託契約の終了事由について確認しておきましょう。

主な信託の終了事由として以下のような規定があります。

【信託法163条】

1号 信託の目的を達成したとき、又は信託の目的を達成することができなくなったとき。
2号 受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が1年間継続したとき。
3号 受託者が欠けた場合であって、新受託者が就任しない状態が1年間継続したとき。
9号 信託行為において定めた事由が生じたとき。

【信託法91条】(概要)

受益者連続信託のみ、信託から30年を経過した後は、受益権の新たな承継は1度しか認められない

上記のような終了事由のうち、とくに予期しない終了を迎える項目としては、163条3号の「受託者が欠けた場合」でしょう。

受託者が個人であり受託者が死亡した場合、この事由に該当して終了する可能性があります。

信託契約を出来るだけ長期間永続させることを考える際に、この163条3号の受託者の欠員と、91条の期間制限について確認していきます。

受託者の欠員による終了

受託者の欠員による終了を避けるには、二次受託者をあらかじめ決めておいたり、受託者を複数名にしたり、一般社団法人等の法人にしておく等の方法があります。

手軽なのは受託者を複数名設定しておく方法でしょう。受託者が複数である場合は、全員が欠けた段階で初めて163条3号の適用を受けます。

受託者が複数になると、受託行為の実行の際に全員の意見の一致が必要となるなどの不便さはありますが、受託事務を共有することができるというメリットがあり、お互いに引継ぎをしやすいという利点があります。

親族の年齢層によっては受託者を複数名に設定しておくことで安心感のある運用が可能となります。

信託法上の期間制限による終了

もう一つの終了事由である信託法91条の規定について、詳細を見てみましょう。

信託法91条
(受益者の死亡により他の者が新たに受益権を取得する旨の定めのある信託の特例)

受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含む。)のある信託は、当該信託がされた時から30年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間、その効力を有する。

この条文は、

  • 受益者の死亡により他の者が受益権を取得する旨の定めが信託契約に定められている場合の信託(受益者連続信託)について適用される
  • 信託契約から30年後にその定めによって受益者が受益権を取得したら、その人の代まで続く

受益者連続型信託で信託から30年経過後、新たに受益権を取得した者が死亡するまでという規定です。その代で終了するという期間制限が設けられています。

つまり、信託から30年を経過した後は、受益権の新たな承継は1度しか認められないという「30年ルール」があるのです。

[1]期間制限に該当しない信託契約とは

そうすると、受益者が死亡することのない法人であれば、91条の期間制限は適用されないことになります。

法人であれば永久に信託を続けることはできるのでしょうか。

例えば商事信託においては受益者が法人であり、受益権だけが転々と売買されることもあります。

しかし家族信託においては、個人間で信託契約をしており、そのほとんどが委託者兼受益者という「自益信託」です。

つまり、委託者=受益者であり、個人であるため受益者が死亡する時期がいずれ来てしまいます。このように見ていくと、条文の規定からは逃れられないのでしょうか。

[2]一定期間で次に承継する方法なら永続できるのか?

91条の適用範囲に該当しないように受益権を承継させていけば、永久に続けることができるのではないのか、とも考えられます。

例えば、受益者が死亡する前に、順次承継させていく方法などです。

受益権を取得してから一定の年数経過で次の代の者に承継させる、あるいは年齢で〇歳になったら次の代に承継させるなどの方法です。

このような引継ぎ方法で永続させられるのでしょうか。

[3]実際の運用上は認められていない

上記[2]の方法について、条文をそのまま読んだ文理解釈によれば終了事由を免れる可能性がありますが、実際の運用上、認められるかどうかは疑問が残ります。

というのも、信託契約により次世代以降の人が拘束され続けるのは好ましくないという主旨があるためです。

学説からも、91条が直接適用できなくても、類推適用や公序良俗(民法90条)違反として、無効となる可能性も指摘されています。

そのため現段階では、永久的な運用については実務上、難しいと考えた方が良さそうです。

信託契約にも限界あり

今後の学説、判例の蓄積によるところもありますが、家族信託は最初の信託契約のみで永久に続けることは難しいと考えておいた方がよいでしょう。

その他、一般的な民法上の契約でも契約の上限が20年や50年という制限が多いため、家族信託においても実際の運用上の限界があることを理解しておかなくてはなりません。

このような制限が見込まれる家族信託ですが、それでも現状のルールで、おおよそ2代〜3代程度の継続は可能です。代々継続させる趣旨での運用方法として十分活用する価値はあると言えのではないでしょうか。

また、30年の期間経過後に、必要に応じて新しく信託契約を結び直すことも選択肢となり得ます。

このような信託契約を永続させたいという視点の場合、信託契約の変更方法や、意図的に終了させる手続きについても確認をお勧めします。

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