家族信託のデメリットと注意点は?デメリットの解消方法も解説

家族信託のデメリットと注意点は?デメリットの解消方法も解説

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家族信託のデメリットとは何でしょうか?

近年マスコミで取り上げられることが増えつつある家族信託ですが、必ずしも良いことばかりではありません。受託者に課せられる義務や税制面での扱いなど、利用にあたって注意しなければいけないポイントがあるのも事実です。

今回は気になる家族信託のデメリットについてお話しします。

家族信託とは? 仕組みとメリットを簡単に解説

家族信託のデメリットを解説する前提として、家族信託のメリットについて簡単に触れておきましょう。

「信託」とは財産を信じて託すことです。

つまり家族信託とは “あなたの財産の管理を家族の誰かに信じて託すこと” を意味します。

「契約書(家族信託契約書)に、あなたが願う財産の処分や管理の仕方を記載しておき、指名した家族の誰か(=受託者)がその内容に沿った管理をする」
これが家族信託の基本的な仕組みです。

家族信託を利用すると

・ 効率的な介護費用の捻出
・ 二代以上先まで財産の行方の指定
・ 認知症発症後の相続税対策の継続

など、遺言や成年後見では対応が難しかったことも実現できます。

「遺言や成年後見制度よりも格段に自由度が高い。」それが家族信託の大きなメリットです。

 ただし家族信託にはメリットだけではなく、実はデメリットも存在します。万能と絶賛されることの多い家族信託ですが、やはりデメリットと考えられるポイントもあります。

家族信託のデメリット

家族信託のデメリットは以下が考えられます。

・ 受託者の承諾が得られない可能性がある
・ 受託者の義務が意外と重い
・ 受託者が仕事をしてくれない不安がある
・ 委託者・受託者だけで契約が成立してしまう
・ 身上監護ができない

受託者の承諾が得られない可能性がある

 家族信託は財産を託す人(=委託者)と託される人(=受託者)がいてはじめて成り立つものです。ですから、いくらあなたが家族信託を利用して家族に財産の管理をまかせたいと望んでも、受託者のなり手がいなくては家族信託は成り立ちません。

 家族信託をしたいけれど、信頼して財産を託したいと思った家族に掛け合ったところ、残念ながら承諾を得られなかった。こういったケースも多いのは事実です。

 承諾を得られない理由は様々ですが、その理由の一つに「信託」という言葉の持つイメージがあります。

 家族信託に馴染みのない一般の人が“信託”と聞くと、どのようなイメージを抱くでしょうか?

 おそらく多くの人は「投資信託」が思い浮かぶのではないでしょうか。

 家族信託と投資信託は全く別の話なのですが、投資という言葉が一人歩きしてまうと、投資=怪しい=お年寄りを騙す…どうしてもこの図式にハマってしまいます。

 家族信託は投資信託とはかけ離れたものですし、ちゃんと話をすれば、少なくとも投資信託とは別物であるということを伝えるのはそこまで難しいことではないのですが、「家族ゆえに」そのような誤解が解けないまま話が進まなくなってしまう、ということもあるのです。

 とても難しい問題ですが、受託者の承諾が得られないことには話が進まないので、コミュニケーションを重ね、理解してもらうよう努力する他ないでしょう。どうしても承諾を得られないのであれば、信託銀行や信託会社に依頼して、家族信託をあきらめ商事信託を選ぶのも一つの方法です。

 また、家族間のコミュニケーションだからと侮らずに、あえて初めから専門家を交えて、専門家からしっかりと説明してもらう、という方法もあるでしょう。

受託者の義務が意外と重い

 家族信託については、どうしても先立つ人の希望や願いといった、委託者側の気持ちに重きをおいて話をされることが多くなってしまいがちです。しかし財産の管理を託される人、つまり受託者の立場も考えることが大切です。

 というのも家族信託が成立すると、受託者には通常とは違った特別な義務が課されるからです。家族といえども仕事として財産の管理をまかされるわけですから、自分の財産よりもさらに高い注意を払って管理する必要がでてきます。

受託者の具体的な義務には以下のようなものがあります。

・ 善管注意義務
・ 忠実義務
・ 分別管理義務
・ 信託事務を第三者に委託する際の選任・監督義務
・ 帳簿等の作成・報告・保存義務

信託の目的にしたがって常識の範囲内の管理をしていれば、これらの義務に違反することはそうそうないでしょう。しかし分別管理義務や帳簿等の作成・報告・保存義務を果たすには、それなりの手間を要するので注意が必要です。

財産を託された以上、受託者にはそれなりの管理義務が課されます。

家族信託を円滑に進めるためには、単に受託者になる了解を得るだけでは不十分です。受託者には特別な義務が発生することもしっかりと伝え、話し合う姿勢が大切です。

そうでなければ家族信託をすることで、かえって相続人の間にトラブルを生じさせる結果を招きかねません。それでは本末転倒です。

分別管理義務

分別管理義務とは、受託者自身の財産と委託者から託された財産を、それぞれ分けて管理しなければならない義務のことです。

たとえば金銭なら信託財産用に別口座をつくり管理するのが一般的です。そうしないと自分のお金と家族信託でまかされたお金の区別がつかなくなってしまうからです。

また、不動産を信託した場合には、その旨を登記しておかなければなりません。
登記は通常司法書士に依頼します。手続きには司法書士の手数料、登録免許税といった費用がかかります。

特に、登録免許税は不動産の評価額に応じて課税されるもので、不動産の価値が高いと、それだけこの金額も高くなります。(税率は不動産の評価額の0.4%とされています。)

帳簿等の作成・報告・保存義務

年に一度、信託財産について賃借対照表などの必要書類を作成し、その内容を受益者に報告しなければならない義務です。

作成した書類は10年間保存する必要もあります。

受託者が仕事をしてくれない不安がある

前述のとおり家族信託における受託者には特別の義務が課されます。

しかし、その義務がきちんと全うされるか否かはまた別の話です。

信じて仕事を任せたのですから義務違反などあろうはずがない、そう期待したいところです。ですが、ものごとに絶対はありません。

委託者本人が存命中であれば自ら受託者をコントロールできますが、意思能力を喪失してしまったあとや亡くなってしまったあとに義務違反をされた場合は困りものです。

そこで受託者が適切に仕事をしてくれない事態に備えて、家族信託は受託者を見張る制度を用意しています。具体的には信託監督人や受益者代理人がこれにあたりますが、こちらについては後ほど解説します。

委託者・受託者だけで契約が成立してしまう

家族信託は委託者と受託者の二人がいれば契約が成立してしまいます。

相続発生後に行われる遺産分割協議であれば相続人全員の同意が必要になるところ、家族信託は、相続人全員の了解を得ずとも相続財産について話を進めることができるのです(被相続人が存命中に遺産の流れについて決定する点は、遺言の作成に近いですね。)。

これは一見メリットのようにも思えますが、実際にはトラブルに発展しやすい特徴ともいえます。なぜならば、自分の知らないところで勝手に話を進められたと、腹を立てる相続人もいるからです。
遺言であれば、被相続人が単独で作りますが、家族信託は委託者と受託者(相続人のうちの一人)が共同で作りますから、遺言とは他の相続人の捉え方も全く異なることになります。

家族によっては、本来自分が得られたであろう財産を奪われたと感じる人もいるでしょう。このあたりの心情を考慮しないで家族信託の話を押し進めると、遺留分侵害などの相続争いに繋がる原因となります。

すなわち、家族信託をするにあたっては、受託者はもちろんのこと、受託者以外の家族全員の了解も得ておくのが理想なのです。

身上監護ができない

家族信託はあくまでも財産の管理を託すことができるのであって、(法的な)身の上の監護は託すことができません。

すなわち、家族信託を用いても、本人の代わりに住居の契約を交わしたり、介護サービスや入所施設の契約を交わすことまで任せることは難しいのです。

身の上の監護、つまり福祉にまつわるあれこれを本人の代わりにさせたいときは、家族信託ではなくて、成年後見制度が適しています。

家族信託はよく「自由度が高い、柔軟な設計、無限の可能性を秘めている」といった評価をされることがあります。しかし、それらはあくまで“財産の管理”においての話であって、生活環境を整える身上監護についてはまた別の領域になりますので、要注意です

ただし、実際問題としては、上記のような契約行為は、家族や親族がいれば、その家族や親族が代わりに手続きを行うことで、後見制度を使わずともクリアできる場合もあります。

家族信託のデメリットを解消する方法

前述で解説したとおり、万能との呼び声の高い家族信託であっても、やはりデメリットは存在することをご理解いただけたかと思います。

では先に挙げたデメリットを解消する方法はあるのでしょうか?

まず身上監護の問題については、家族信託ではなく(あるいは家族信託と併用して)、成年後見制度を利用することで解消できます。

成年後見制度であれば、後見人が本人に代わって老人ホームや介護サービスの利用の契約を本人に代わって行うことができるのです。

次に受託者がきちんと仕事をしてくれるかどうかの不安ですが、こちらも信託監督人や受益者代理人を選任することで、ほぼ解消されるといっていいでしょう。

信託監督人や受益者代理人は簡単にいえば、受託者が財産を管理する義務を適切に果たしているか否かをチェックさせる人員のことを指し、信託契約を交わすときに予め設置しておくことができます。

孫のための教育資金を息子に託したいけれども、もしかしたら息子が個人的な用途に使い込んでしまうかもしれない…このようなケースでは、チェック機関として信託監督人や受益者代理人を置くことをおすすめします。

さて、ここまでくると、最後の問題は、受託者及び受託者以外の家族の了解を得られるか否かの点です。

遺言であれば、財産の行方をすべて一人で指定できるのに対して、家族信託はそうはいきません。家族の理解を得られてはじめて、家族信託のメリットが活かされるのです。

特に受託者については、承諾を得られないと家族信託の契約そのものが成立しないので深刻です。受託者は原則無報酬で財産を管理し、それにともなって派生する帳簿等の作成・報告・保存義務などを守る必要がありますので、受託者になんてなりたくないと思われても仕方のない側面があります。

無報酬の点については、契約で別に定めれば受託人に報酬を与えることもできます。ただし、あまりにも高額の報酬は、最悪、税金逃れの疑いをかけられるリスクがあります。そうでなくとも受託人に報酬を与えると、それをよく思わない家族が出てくるかもしれません。

この問題を解消するには、結局のところ、家族とのコミュニュケーションを重ねる以外にないのが正直なところです。家族信託の制度そのものを理解してもらうのも大切ですが、もっと根本的な話として、委託者は、自分が認知症になった場合、あるいはこの世を去った場合に、残された家族にどうしてほしいのか、自らの希望を伝え、理解してもらうことが重要です。

制度や法律の問題でなく、感情や気持ちの問題です。

そのうえで自分の想いを実現するためには、家族信託を利用するのがベストな選択なのだということを説明をするのが良いでしょう。逆にここを明確に説明できないのであれば、家族信託の利用価値そのものを疑うべき余地がでてきます。

もちろん家族信託を利用すべきか否かの判断は、法律や税の問題も絡んでくるため、司法書士や税理士などの専門家の助言・アドバイスも有効であるのは間違いないです。

家族信託を進めるにあたって家族の理解を得るのは、時として大変な労力を要します。専門家のアドバイスを参考にしつつ、時間をかけてでもコミュニュケーションをはかることが大切になってきます。

家族信託を利用する時の注意点

ここで、家族信託を利用するうえで押さえておきたいこと、注意すべき点について簡単に紹介したいと思います。

特に相続税については勘違いされやすいところですので、この機会にぜひ確認しておきましょう。

・ 相続税対策にはならない
・ 損益通算で不利な扱いを受ける
・ 遺留分に配慮する必要がある

家族信託は相続税対策にならない

結論からいうと、家族信託をしたからといって相続税が軽くなることはありません。

一般に相続税対策とは、手持ちの財産の評価額を下げることで、相続人が将来負担するであろう税金の額を軽くすることを意味します。

この点、家族信託を利用したからといって相続人に引き継がれる財産の評価額は下がりません。それゆえ家族信託をしても、直接それ自体が相続税対策にはならないのです。

ただし本人が元気であればできたはずであろう相続税対策ができなくなる、この事態を防ぐことができる点では、家族信託は相続税対策において意味を持ちます。

相続税対策といえば、マンションを購入して賃貸したり、もともと所有している土地に賃貸アパートを建てたりと、不動産を動かすことで将来かかる相続税を軽減する方法が代表的です。

しかしもし本人が認知症をわずらってしまい、判断能力がなくなってしまったらどうでしょう?

判断能力が認められなければ、法律上、売買契約や賃貸契約を交わせなくなってしまうので、結果として、不動産を活用した相続税対策を諦めざる得ない状況になります。既に継続中だった相続対策も途中で断念せざるをえないでしょう。

この点のリスクを解消する意味で、家族信託はすぐれた効果を発揮します。

元気なうちに家族信託契約書を作成しておいて、自分にもしもの時があっても、他の家族に財産の管理をまかせるように設計することで、あらたに相続税対策をとる、あるいはそれまでやってきた相続税対策を難なく継続することができるのです。

損益通算で不利な扱いを受ける

前述で、家族信託をつかっても相続税を軽くすることはできない旨をお伝えしました。

しかし軽減どころか、家族信託の利用の仕方によってはかえって税金を高くおさめなければいけない結果を招きます。

それが損益通算の話です。

たとえば賃貸アパートを二棟所有していたとして、A棟が黒字、B棟が赤字だったとします。

この場合、通常であれば、A棟のプラス部分とB棟のマイナス部分を合算したものを所得として扱うことができます。マイナス部分を合算すると、黒字がでているA棟のみを事業所得として計算するよりも所得が低くなるのです。

所得が低くなる結果として税金も安くなる、これが損益通算のメリットです。

 しかし家族信託を利用した場合、損益通算のメリットを受けるにあたり制限がかかります。信託のルールとして、信託に含めた財産と含めてない財産同士は、お互い損益通算の対象にならないとされているのです。

 黒字が出ているA棟は信託財産に含めるけれど、赤字のB棟は信託財産から外す選択をとってしまうと、損益通算のメリットを失うことになりますので注意が必要です。

遺留分に配慮する必要がある

 家族信託の信託内容を設計するときは、遺留分を配慮して考える必要があります。

 遺留分とは法律によって各相続人に与えられた、最低限の取り分、いわば最低保証のようなものです。

 遺留分の理解には専門的な知識がいりますので詳細は割愛しますが、簡単にいうと信託の内容は相続人の間で不公平が起こらないように設計しましょう、ということです。

 特定の家族のみを過度にひいきにする内容にしてしまうと、相続財産を全く与えられなかった相続人はいい気分がしないでしょう。本人が死亡したあとに、遺留分の額、つまり最低保証額を払え!となってしまい、揉めごとに発展する可能性があります。

 揉め事をつくらず財産をスムーズに相続人に引き継がせることが、家族信託においては大切なのですから。

家族信託の費用は高い?

 成年後見制度に比べると家族信託の費用は高いといわれがちです。初期投資の側面からいうと、それはある程度当てはまると思います。

 参考までに家族信託にかかる一般的な費用を紹介しておきます。

実費(税金など国におさめるお金)

・ 公証人手数料
・ 不動産登記の登録免許税

 公証人の手数料は託す財産の価額によります。1万円から5万円が目安です。

 不動産登記登録免許税として固定資産税評価額の0.3%から0.4%(0.3%は土地についてのみ。期間限定で減税扱いとされています。)を税金としておさめる必要があります。なお、登記を司法書士に依頼した場合は、司法書士に支払う報酬も別に発生します。

専門家に支払う報酬

・ コンサルティング報酬
・ 家族信託契約書作成報酬

 専門家に支払う報酬として、コンサルティング報酬と書類作成報酬が発生するのが一般的です。

 税金と違って国の規定により一律に定められているわけではないので、報酬は専門家によってまちまちです。また同じ専門家であっても、信託の内容によって変動があり複雑な設計であればあるほど報酬は高くなります。

 おおむね、信託財産の1%程度、最低金額30万円~40万円程度に設定されていることが多いようです。

家族信託における正しい専門家の選び方

 家族信託を扱う専門家はまだまだ少なく、司法書士や弁護士、税理士だからといって全員が適切に処理できるとは言い切れないのが現状です。

 それゆえ専門家を選ぶ際にはまず家族信託の実務を一度でも経験したか否かの確認をするべきです。重ねて年間の契約件数も聞いてみると良いでしょう。目安として、最も多く家族信託をこなす専門家で年間100件程度といわれています。

 なお、相談と受任では意味合いが大きく異なりますので、あくまでも受任件数を確認するようにしましょう。

 家族信託に積極的な事務所は、YouTubeやTwitterなど、SNSでの活動も活発な傾向があります。SNSで積極的に家族信託の情報を発信をしている事務所を探してみるのも有効な手段です。

まとめ

 家族信託は柔軟性のある設計ができ、遺言や成年後見制度では実現できないことも可能になります。

 しかしながら家族信託も万能ではなく、ケースによってはむしろ遺言や成年後見制度が適している場面もあります。利用の仕方によっては、税金面で不利な扱いを受けるなど、思わぬ落とし穴があるのも事実です。

 また家族信託の制度が未だ世間に浸透しきっていない状況もあり、家族の理解を得るのに困難をともなうケースもあります。説得に時間がかかることもあるでしょう。

 とはいえデメリットや注意点を理解したうえで上手く活用すれば、相続対策において最大限の効果を発揮するポテンシャルを秘めている事実に間違いはありません。

 司法書士や税理士など専門家のアドバイスをもとに、冷静な判断で家族信託の活用を検討することをおすすめします。

$1

カテゴリー:家族信託

タグ:デメリット注意点

この記事の監修者
梶原 隆央(かじわら たかひさ)

司法書士
梶原 隆央(かじわら たかひさ)

神奈川県出身/平成21年司法書士資格取得 トリニティグループの信託部門にて、実家信託から信託財産数億円に及ぶ信託、自社株式の信託等、幅広く信託案件に対応。

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