家族信託は、高齢になって認知症などのリスクが生じても、柔軟に財産管理ができるメリットの多い制度です。

しかし、一部、家族信託では取り扱うことのできない内容や、対象外となる事柄があります。

該当するケースは少ないかと思いますが、家族信託で対応の難しい事柄について確認しておきましょう。

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【1】身上監護などの代理行為

家族信託は財産を預けることにより、受託者が代わりに財産管理をすることができる仕組みです。

そのため受託者は信託資産について、信託契約に定めた内容に権限が限られており、例えば、委託者の「身上監護」にあたる行為はできません。

身上監護とは、その人の生活、治療、療養、介護などに関する法律行為を代わりに行うことをいいます。

受託者は法定代理人ではないため、信託契約で定めた事項しか行うことができないからです。

身上監護に該当する行為とは

身上監護については家族が代わりに手続きできるため、一般的には大きな問題になることはあまりありませんが、家族が海外や遠方に居住しているケースもあり、状況によっては身上監護について対策が必要なケースもあります。

身上監護については以下のような内容が挙げられます。

① 医療に関する事項……医療契約の締結など
② 住居の確保に関する事項…………借家の賃貸借契約の更新など
③ 施設への入退所及び処遇の監視・異議申立て等に関する事項…………施設への入退所契約など
④ 介護・生活維持に関する事項…………介護保険の認定申請、介護サービス契約の締結など
⑤ 教育・リハビリに関する事項

信託契約の中に身上監護に関する規定を盛り込むこともできますが、役所への届け出や入退院手続きなど、本人の名前での契約が必要な場合があります。

法定代理人の権限を有する成年後見人でなければできないこともあり、家族信託制度ではカバーしきれない部分が存在しています。

身上監護できる家族がいない場合の対策法

家族が海外や遠方に居住しているケースなど、状況によっては身上監護を代理する人がおらず、対策の必要なケースもあります。

一般的には家族信託契約に加えて任意後見などの成年後見制度を併用し、身上監護に備える方法が採られます。

資産の管理のみ家族信託で身内や知人などが契約し、身上監護のみ成年後見制度を利用する方法です。

身上監護のみ成年後見制度を利用する方法

成年後見制度には家庭裁判所が後見人を決める「法定後見」と事前に任意の後見人を決めておくことのできる「任意後見」制度の2種類があります。

もし委託者の意思能力がある段階であれば任意後見制度を利用することができ、本人にとって適した人物を「任意後見人」として契約して将来に備えることができるのです。

【2】相続時の遺留分請求について

家族信託を契約して財産を信託資産にすると、その名義は信託の旨が記載された上で受託者に移ります。

もし所有資産すべてを信託すると相続財産としての資産はなくなるのではないか、という意見もあるかもしれませんが、委託者が死亡した場合、信託した財産も相続財産となります。

信託契約で相続する人の指定をすることはできますが、家族信託をしたら相続のことを考えなくていいという話にはなりません。

通常、相続時に発生する「遺留分侵害額請求」についても、当然に受けることになります。

これが認められると遺留分制度が崩壊しますので、家族信託をしたとしても、遺留分侵害額請求を排除することはできないものとされています。

遺留分侵害額請求とは

遺留分侵害額請求は、遺留分権利者が、自己の遺留分を侵害する遺贈又は贈与を受けた者に対して、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる権利です(民法1046条)。

理論構成は様々ですが、委託者兼受益者の死亡により、財産を承継すると死因贈与に類似するため、遺留分侵害額請求の規定が準用又は類推適用されると考えることができるでしょう。

したがって、相続争いを避けるためには遺留分も考慮し、他の相続人の遺留分を侵害しないような額に限って信託契約を行ったほうがよいでしょう。

相続時の資産の引き継ぎにおいて、一次相続、二次相続で遺留分請求がどのような取扱いとなるのか、下記記事で解説しています。

【3】信託財産と非信託財産の間での損益通算

相続に引き続き、所得税に関する話を続けます。

所得については損失が出た所得によっては、他の所得の利益と差し引きをして確定申告をすることができます。

《損益通算できる所得》

  • 不動産所得
  • 事業所得
  • 譲渡所得(土地建物や株式等に関するものを除く)
  • 山林所得

さらに利益から損失を差し引いても引ききれない損失の余りが生じた場合は、確定申告で残りの損失額を翌年以後3年間にわたり繰越して控除することができるという特例があります。

ここまでが損益通算の原則的な取扱いですが、家族信託を行うと、信託している不動産と信託していない他の不動産所得との間での損益通算は認められなくなります。

信託した不動産については、個人が「受益者」である場合、信託不動産から生じた収入を超える分の不動産所得の損失がある場合であっても、その損失はなかったものとされます(租税特別措置法41条4の2、同施行令26条の6の2)。

《例》A不動産とB不動産を所有

● 信託をしない場合
A不動産とB不動産間において損益通算可能

● A不動産とB不動産、2つとも一緒に信託した場合
同一信託内のため損益通算可能

● 2つの不動産のうち、片方のA不動産のみを信託した場合
損益通算は認められない

《片方のA不動産のみを信託し、損失が出た場合》

A不動産の築年数が経過したため大規模修繕を行った結果、A不動産が1年間で稼ぐ収益(家賃収入)よりも大規模修繕の修繕費の方が高くなり大幅マイナスとなった場合、A不動産から生じた損失は信託外のB不動産の収益から差し引きできなくなります。

もちろん、損失の3年間の繰越し控除も認められません。

そのため信託資産について検討している段階で、もし大規模修繕など大きな損失が発生することが見込まれている不動産がある場合は、損益通算ができない点を検討して信託契約を設計する必要があります。

まとめ

以上、家族信託ではできない事柄についてご紹介してきました。

該当するケースはそこまで多くないといえますが、もし該当する場合は対策の必要な面が出てきます。

状況により信託契約の内容を変更する必要がある場合は、委託者・受託者等の当事者が意思能力を有していることが条件となります。

そのため信託契約の変更については出来るだけ早期に対応しましょう。

契約内容の整合性や法的な合理性について判断の難しいケースもあると思います。

下記記事もご参照いただき、組成内容や契約内容の法的な面については司法書士法人等の専門家へのご相談をお勧めします。

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