【家族信託と相続】家族信託をしたら相続や税金はどうなる?

【家族信託と相続】家族信託をしたら相続や税金はどうなる?

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家族信託を利用している家族で、委託者が亡くなった場合、どのような手続きになるのでしょうか。

例えば、父の認知症対策のために家族信託をしていて、息子を受託者、父を委託者兼受益者としていた場合、通常の相続と異なる手続きになるのでしょうか。

今回は家族信託を利用中の家族に相続が発生したケースについて解説します。信託契約の内容により手続きが異なる点にご注目ください。

●参考記事:家族信託とは?メリット・デメリット・費用をわかりやすく解説

相続による財産承継が生じないケースとは?

民法では、相続は死亡によって開始し、相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するとされています(民法882条、896条)。

そのため委託者兼受益者が亡くなれば、何もしなくても相続が開始することになります。

信託財産の承継も、相続により自動的に承継されるものだと思われますが、信託法は民法の特別法とされているため異なる部分があります。

特別法は、特別ルールという意味であり、信託法が、一般ルールである民法に優先して適用されることを意味します。

そのため財産の大部分を信託している場合など、信託財産については信託法のルールにより承継されるため、民法の相続による財産承継がほとんど生じないというケースもあり得るのです。

ただし、すべての財産が信託出来るわけではありませんので、例えば信託の対象外である「農地」などについては通常の相続と同じように承継されます。

ここで、委託者兼受益者に相続が開始した場合に、信託契約の中で注目するポイントを3つ挙げます。

(1)どの財産が信託されているのか信託契約書で確認
(2)委託者死亡により信託が終了する契約かどうか
(3)受益権の承継方法について信託契約に定められているか

以下、1つずつ見ていきましょう。

(1)どの財産が信託されているのか信託契約書で確認

まず、委託者兼受益者の財産のうち、どの財産が信託されているのかという確認が重要です。

信託されていない財産については、当然通常の相続が開始するため、信託していない財産の承継方法について、遺言がなければ、遺産分割協議によって決めていくことになります。

信託財産については、信託契約書を確認していきましょう。

また、不動産であれば信託の登記がされているため登記簿を見れば信託財産かどうか分かります。金銭についても、信託口座が作成されているケースであれば分かります。

(2)委託者死亡により信託が終了する契約かどうか

家族信託では、委託者(兼受益者)が死亡したとしても、そのことで当然に信託が終了するわけではありません。

信託を終了させる事由については信託契約で自由に定めることができるため、契約内容に沿った形で終了するかどうかが決まります。

これが民法と異なる点です。

もし民法と同じように委託者(兼受益者)の死亡により終了すると定めている場合は、信託も終了し、信託財産を清算することになります。

清算手続きを経た後の残余財産について、信託に定めがあるかどうかで行き先が決まります。

まず、信託契約で承継人が決められている場合は、その帰属権利者等に承継されることになります。信託契約に基づいて承継されるため、相続による承継は起こりません。

そして承継の指定がない場合は、信託法に従い、委託者の相続人が帰属権利者として承継することになります(信託法182条)。

そのほか、信託していない財産がある場合は、その財産の相続手続きを進めることになるのです。

(3)受益権の承継方法について信託契約に定められているか

このように、信託契約で決められているかどうかにより、信託のルールが適用されるか、相続のルールが適用されるかが決まっていきます。

そのため信託契約の内容が非常に重要になるのです。

【受益権を指定しないケース】

ここで、信託を始める段階では、誰に財産を承継させるかまでは決めることができない、あるいは決めたくないという場合を想定しましょう。

特定の人を指定せず、承継先については相続に任せて、一般の相続と同じように受益権が承継される(遺産分割協議の対象にもなる)というケースです。

このケースに当てはめるには、信託契約で相続を決めていない状態にする必要があります。

委託者の死亡によって信託が終了する旨が契約に明記されておらず、かつ受益権を承継する人の定めがない契約です。

一般的な相続の手続きにするためには、以下のような契約内容にする必要があります。

  • 受益者連続型信託にする
  • 受益権を承継する人の定めを設けない
  • 相続により受益権が承継されることを注意的に明示しておく

このような内容で信託契約を作成しておきます。

受益者連続型信託とは、複数世代にわたって信託財産を承継する取り決めであり、相続開始後に承継する人を柔軟に決めていくことが可能となる方法です。

相続税はどうなるの?

委託者(兼受益者)の死亡により、受益権や残余財産を取得した場合は、相続税の対象となります(相続税法9条の2)。

信託のルールによる承継であれ、相続のルールによる承継であれ、人の死亡により、財産を得るという意味では、通常の相続と何ら変わらないからです。

そのため、信託契約で承継人を決めておく場合は、相続税の納付についても考えておく必要があります。

相続税の多さから承継について相談を受けることがあります。

信託契約で承継人を決めていたものの、想像よりも相続税が多かったため、すでに相続は開始しているが、遺産分割協議をして承継を検討したいという内容です。

しかし信託契約で承継先を決めている場合は、委託者もすでにいないため、その段階では変更ができません。

このような事態を防ぐためにも、最初の信託契約を決める段階が重要となります。

承継や相続の取り決め、相続税の可能性については専門家へ相談し、信託契約の内容を決めていく方が将来の問題を回避しやすくなるのです。

信託した不動産を相続する場合についてはこちらの記事で解説しています。
【完全版】不動産を家族信託する方法・税金・デメリットなどを解説

承継についても充分な検討を

信託契約の内容によって、信託契約によるのか、相続のルールによるのか、信託財産の承継を決めることができます。

すでに信託契約を締結してしまったけど、相続を考えたら都合が悪い内容なのでは、という不安がある場合は専門家へご相談ください。委託者に意思能力があれば契約を変更することができます。

信託契約については、相続が発生した場合についても想定した上で契約内容を作成することが非常に重要になってくるのです。

●相続対策についての参考記事:【遺言 vs 家族信託】費用で比較する、遺産相続対策3選

カテゴリー: 家族信託と税金

この記事の監修者
竹中 章(たけなか あきら)

司法書士
竹中 章(たけなか あきら)

北海道生まれ、福岡・名古屋・千葉育ち/平成22年司法書士登録 相続、家族信託、事業承継、企業法務等、総合的なご相談対応を行っている。

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