【家族信託入門】仕組み・メリット・デメリットをすべて解説

【家族信託入門】仕組み・メリット・デメリットをすべて解説

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家族信託という制度の利用が、今、急速に広まってきています。

日本社会の高齢化・長寿化が進み、高齢者が持つ財産の管理や財産の保全の必要性が高まり続けていることがその主な要因です。

家族信託は、家族内で手軽に高齢者の資産管理・保全ができる手段として、現在、唯一無二の存在です。

今後もその需要は高まり続け、将来的には個人資産の管理のために欠かせない存在になるのではないかと思われます。

私たちトリニティグループは、家族信託の相談を多数受けてきた実績があります。

このページでは、家族信託について理解していただくために「家族信託とは何か」についてわかりやすく解説させていただきます。

家族信託の仕組みとは?

家族信託とは「家族内で信託契約をして自分の財産を託す」という方法です。

人間は歳を重ねるとともにさまざまな機能が低下してしまいます。機能低下が進み、そこで認知症などになると法律上「意思無能力者」と判断され自らで介護施設への入所の手続きや自宅の売却などの法律行為を行うことができなくなってしまいます。

そこで、信頼できる家族などに「家族信託」という制度を使って財産管理をしてもらうことにより、財産管理ができなくなる、という危険性を取り除こう、というのが家族信託を利用する理由です。

家族信託の委託者・受託者・受益者

家族信託は、財産(預金・自宅・収益不動産・株式等)を保有する方が、その管理・運用・処分等を信頼できる親族などの第三者に託す行為です。

家族信託の仕組みは以下のような3者で構成されます。

  • 財産を託す人(委託者)
  • 財産を引き受ける人(受託者)
  • 信託財産から生じる利益を受け取る人(受益者)

受益者は必ずしも第三者である必要はなく、一般的には委託者自身が受益者として信託契約を行います。

これにより「認知症になって介護施設に入ることになったら資産を処分して資金を用意してもらう」ということが可能となります。

家族信託とはわかりやすく解説します!(概要・仕組み)

成年後見制度と比較した場合の特徴

財産を管理する権限を健康な家族に託すことができるというのは、成年後見制度と似ていますが、後見制度は家庭裁判所や弁護士、司法書士など第三者を介する方法です。

認知症が既に進行した場合に利用できる重要な制度ではありますが、財産の管理処分の範囲は制限が設けられますので、家族の希望に沿った財産の管理ができるとは言えません。

また、成年後見制度では、後見人となった弁護士などに報酬を支払う義務が生じますので、コスト面の負担も大きくなります。

このような背景もあり、後見制度に代わる制度として「家族信託」が非常に注目されているのです。

家族信託の注目される理由とは?わかりやすく解説します!

家族信託が注目される社会的理由

2007年(平成19年)に改正信託法が施行されたことで、本格的に家族信託の利用が可能となりました。

厚生労働省の「平成28年版高齢社会白書」によれば、2012年の時点で日本の認知症患者数は約462万人、65歳以上の高齢者の7人に1人が認知症に罹患していることになります。

さらに2025年には約700万人にまで増加し、割合としては高齢者の5人に1人が認知症になると試算されています。

また、2018年8月の日本経済新聞では、2030年には認知症患者が保有する金融資産が215兆円に達する見込みとされていました。

認知症患者が保有する財産は日本の各家庭が保有する財産の約15%にあたります。これは金融資産のみの話ですので、高齢者が有する不動産等も含めた場合には、この割合はさらに上がることになります。

認知症などになり「意思無能力者」とみなされると自らの力で自宅を売却したり、介護施設への入所手続きができなくなったり、銀行でお金を引き出すことができなくなったりしてしまいます。

つまり、何も対策を講じなければ2030年には日本の家庭が保有する財産の15%が動かない財産となってしまう可能性があるということです。

これまで主流だった「成年後見人制度」

これまで、「意志無能力者」となった人の財産管理は、成年後見制度によって家庭裁判所が選任した後見人が代理人として行ってきました。

この「成年後見人制度」は2000年から始まった制度で、大きく分けて「法定後見人制度」と「任意後見人制度」の2種類があります。

(1)法定後見人

法定後見人制度は、認知症がすでに進行した人の支援制度で、家庭裁判所が法定後見人を選定します。

法定後見人は本人に代わり、介護施設への入所手続きや不動産の売却、預金口座の解約などを業務として行う制度です。

(2)任意後見人

任意後見人制度は、本人の意志能力がまだある段階で任意の後見人をあらかじめ決めておく制度です。

後見人については自由に選ぶことができますが、実際に制度を利用開始するためには家庭裁判所による後見監督人の選任を待たなくてはなりません。

また、後見人の行為を後見監督人が監督することとなるため、第三者が必ず介入することになります。

(3)法定後見・任意後見のデメリット

これらの成年後見制度(法定後見・任意後見)ですが、デメリット面の多さが指摘されていることもあり利用はあまり進んではいません。

そのデメリットとは、

  • 財産の管理処分に制限がかかる
  • 後見人・後見監督人に対する報酬の支払いが必要となる
  • 一部の財産管理について裁判所が関与する

このように、利用者(本人・親族)にとって使いやすいとは言えない条件が付いてしまう点が挙げられます。

例えば、本人が住んでいる自宅を売却したい場合には、事前に裁判所の許可を得なければ売却ができなくなります。

介護施設に入るための資金など、自宅不動産を売却して用意したい場合など、裁判所の許可を取る必要があるため、売却に良い時期を逃してしまったり、許可が下りるまで資金準備ができなくなってしまうという問題が発生してしまうのです。

そこで代替の仕組みとして注目され始めたのが、家族信託です。
→『【調査リリース】2021年の家族信託利用者数、コロナの逆風下でも増加傾向を維持

意思能力を失うリスクとは

家族信託は社会の高齢化が進む中で注目されてきたもので、多くの方が認知症対策として利用しています。

両親など家族が管理運用を必要とする不動産や有価証券などの財産を保有しており、かつ認知症を発症する可能性・危険性があるという場合には、家族信託の利用がおすすめです。

そのときに起こりうるさまざまなトラブルを回避し、家族の誰もが納得のいく財産管理を行うことができます。

家族信託を検討・組成した方がいい人とは?どんな時に家族信託が必要に?

家族信託を利用するためには1点だけ前提条件があります。それは委託者と受託者、当事者双方に意思能力があるという点です。

つまり、高齢になった両親のために家族信託を利用する場合、本人が意志能力を失ってしまう前に信託契約を結ぶ必要があります。

「そろそろ親も高齢になってきたし、財産のことを決めておいたほうがいいかな」 「いつ認知症になるか分からないから財産をどうするうか決めておこう」

そう思ったときには、できるだけ早く準備を進めていきましょう。

家族信託なら相続対策も可能になる

昨今、認知症の問題だけでなく、相続をめぐる争いも増加傾向にあります。

平成29年度「司法統計年報」によれば、遺産分割事件(家事調停・審判)の新受件数は16,016件となっています。

昭和60年には6,178件だったため、平成というひとつの時代の間に2.5倍以上にも増えているということになります。

このような問題は本人が認知症になる前に老後の財産管理方法や相続時の分配などを家族信託によって明確にしておくことで解消できます。

家族信託は財産の管理・保全だけでなく、事前に資産の引き継ぎについて決めておくことが出来るため、相続問題の予防策としても機能するのです。

家族信託の「委託者」とは?

ここから家族信託の仕組みについて、主な役割である「委託者」「受託者」「受益者」の順に解説をしていきます。

家族信託での「受益者」と呼ばれる人とは?

家族信託での「委託者」とは、自分が所有する財産を受託者に託す人を指します。

家族信託の契約を済ませておけば、委託者が認知症になって意思能力を喪失してしまっても受託者に管理してもらうことが可能です。

信託契約では、信託財産の管理方法や処分方法など様々な決まりごとを設定できます。

(1)信託契約の内容

  • 誰に財産を管理してもらうのか(受託者)
  • どの財産を信託するのか(信託財産)
  • 信託財産をどのように管理してもらうのか(受託者の権限や範囲)
  • いつから信託をして、いつ信託が終わるのか(信託契約の期間)

信託できる財産の種類には特に制限がなく、法律上は、財産権と考えられるもの(価値がお金に換算できるもの)であれば、一部を除いて信託できるものとされています。

(2)委託者が信託できる財産の例

  • 預貯金などの金銭(預金債権を除く)
  • 土地や建物などの不動産
  • 株式や国債などの有価証券
  • 特許権や著作権などの知的財産権
  • 自分が経営する会社の事業や株式

他にも、保有している貴金属やゴルフ会員権なども信託の対象にすることができます。

言うまでもなく相続が発生したときは全ての財産を相続することになりますが、家族信託ではこれらの財産の中から信託したい財産のみを選び信託する事ができます。

(3)実務上、信託することが困難な財産

法的には可能であっても、現状では実務上、信託することが困難な財産もあります。

有価証券

現金や預貯金などは信託のための受託者名義での口座を開設することができます。しかし、証券会社では受託者名義での口座開設に対応していないところが多いのです。

受託者には、自分個人の財産と信託財産を分けて管理しなければならないという義務があり(この義務を「分別管理義務」と呼びます)、そのため法的に信託する事はできても、実務上、信託財産の分割管理をすることが困難であるために信託ができないケースもあります。

もちろん、証券会社でも積極的に家族信託の対応をする会社もあるので、そういった証券会社であれば家族信託の信託財産として扱うことは可能です。

信託契約を検討している段階で、金融機関ごとの取扱いについて確認をしておきましょう。

借金などの負の財産/年金受給権・生活保護受給権などの一身専属権

借金などの負の財産や、年金受給権・生活保護受給権といったその人自身に属する権利(一身専属権)についても、信託する事ができません。

(4)委託者の意思能力の重要性

委託者がすでに意思能力を失ってしまった場合には、家族信託を結ぶことはできません。意思能力がない人は、法律行為・契約行為ができなくなってしまうためです。

そのため家族信託の制度を利用するなら、出来るだけ早く準備を進める必要があります。

また、信託契約を結んだ後、不備があることが分かった段階で契約内容の変更をすることも可能ですが、その段階でもやはり委託者に意思能力があることが前提となります。

そのため委託者の意思能力は非常に重要であり、同時に、信託契約内容についてもできるだけ不備のない内容で作成しておくことが重要となるのです。

(5)家族信託の終了と相続対策について

家族信託の契約では、「委託者」の死亡と同時に信託が終了すると決めておくケースが大半です。

この場合、信託契約の中に、信託が終了した場合には、誰が信託財産を引き継ぐのかについても定めておきます。

この定めは遺言と同じように機能するため、信託した財産については遺言を残したことと同じ効果が得られます。

家族信託をご利用の際は、ぜひ相続にかかわる部分まで想定して信託契約を組成していくことをお勧めします。

家族信託の「受託者」とは?

家族信託の受託者は「委託者の財産を委託者から信じて託された人」のことです。もともと財産を持っていた人から財産を預かり、その財産を委託者の為に管理をする人になります。

(1)受託者の権限の範囲

家族信託で「受託者」と呼ばれる人は、財産を所有していた人(委託者)から信託財産の移転を受け、委託者との間で結んだ信託契約に基づいて、信託された財産から恩恵を受ける人(受益者)のために信託財産の管理・処分等を行います。

受託者は、信託の目的に沿いながら、信託された財産の管理や保存をしていきます。

例えば、不動産などを信託された場合には、その不動産の賃貸収入を得るための行為を信託契約上認めておく形で信託を組みます。

また、信託の定めによっては不動産の購入や借入をすることもできます。信託の目的に沿って、様々な権限を受託者に持たせることができるのです。

ただ、当然ですが、受託者には賃貸収入を得るための行為をする権限が認められているにすぎず、賃貸収入自体はあくまでも「受益者」のものとなります。

一般的には委託者が受益者として設定されるため、もともとの資産所有者である委託者(兼受益者)が利益を得ることになります。

(2)受託者の義務

受託者には多くの権限が定められているのと同時に、信託法により各種義務が定められています。

① 分別管理義務

受託者は信託として預かった財産と個人の財産を混ぜてはならず、分けて管理(分別管理)しなければならない、というものです。

② 善管注意義務

受託者は善良な管理者の注意義務をもって信託事務を処理しなければならいという定めが信託法に存在し、この義務を「善管注意義務」と呼びます。

これは、自分の財産を管理する場合よりもさらに注意深く、管理の対象物を取り扱わなければならない、という義務です。

③ 忠実義務

受託者は信託の目的のもと、受益者の利益のみのために行動しなくてはなりません。この義務を「忠実義務」と言います。

例えば、信託された不動産を売却する際に、不動産会社Aは接待をしてくれるが売値は安い、不動産会社Bは接待はしてくれないが売値は高い、といった場合に、売却面のメリットを考えると不動産会社Bに依頼するほうが都合が良いことになります。

利益を得る「受益者」にとってのメリットを考えて、受託者は当然ながら不動産会社Bを選ぶべきである、というのが忠実義務に該当します。

(3)受託者の資格

これらの受託行為を行う「受託者」について、信託法では一部制限を設けています。まず、「未成年者」は受託者に就けないものとされています。

家族信託の受託者は、財産を預かり管理運用をしていかなければなりません。

未成年者は原則として単独で有効な法律行為(契約など)をすることができない(民法第5条)ため、受託者になることは信託法で禁止されています。

また、成人であったとしても、信託財産を管理する受託者は、信託においてとても重要な役割を担う立場に置かれます。

そのため、受託者を決める際にはその役割を担うに相応しい人物を選任することが大切です。

信託契約では受託者にもしものことがあった場合に備えて、次の受託者についても選定しておくことができます。受託者の選定方法のみを定めておくことも可能ですので、契約に盛り込んでおくと安心です。

家族信託の「受益者」とは?

家族信託の「受益者」とは、信託財産から利益を受ける人のことを指します。家族信託では、「委託者」と「受益者」が同一になるケースがほとんどです。(=委託者兼受益者)

例えば、認知症になって自分が介護施設や病院に入ることになったら、自分の財産から出して欲しいときなどに活用されています。

介護費用などで自分の子供や親族に金銭的な部分で負担をかけたくないと思っている方にとっては非常に有効です。

受益者を別の人物に設定するメリット

もちろん、委託者以外の人物を受益者にすることも可能です。例えば委託者の配偶者や子供などの親族を受益者として、信託をするケースも多くあります。

《受益者を委託者以外の人物に設定する活用法》

委託者:高齢の父
受託者:子
利益を受ける受益者:高齢の母

委託者:父
受託者:子
利益を受ける受益者:障害のある子

このような構成にすることで受益者の生活を守るための信託を作ることも可能です。

《受益者の設定に関するバリエーション》

受益者はその他の工夫をすることも可能です。

  • 個人だけでなく法人も可能
  • 複数名も可能(家族全員を受益者と留守ことも可能)
  • 生まれる予定のお子さん
  • 現在は存在しない将来の孫

このように、子孫についても受益者に設定することが可能であり、相続を意識した設計をすることが可能です。

このような内容は遺言書では作成できないため、家族信託契約は非常に実用的で希望をかなえやすい方法だといえるでしょう。

家族信託を組成する4つのメリット

【メリット1】認知症になっても口座凍結されない

認知症などが進行して意思能力が低下していると判断されると、金融機関での利用が停止されることがあり、自らで財産の管理をすることができなくなってしまいます。

年金が振り込まれても引き出すことができないなどの不都合が生じるため、家族信託のような事前契約をしておくことで資産を動かせるように備えておくことが可能となります。

また、信託契約では預貯金以外の資産も依頼することができるため、必要な時に備えて財産の管理や処分をお願いしておくこともできます。

▼ 成年後見制度を利用する場合

仮に認知症になって口座を凍結された後に解約を希望する場合、家庭裁判所を通す「成年後見制度」の方法もありますが、実際に利用できるまでには期間がかかります。

後見人や後見監督人には専門家などの第三者が就任するケースが多いため、報酬を払う必要も出てきます。

そのような事態に備える方法として、家族信託があります。

本人が認知症になる前に信託契約を結んでおくことで、家族や親族が必要な時にスムーズに財産管理、処分できるようになるのです。

【メリット2】家族信託であれば財産管理に自由度がある

家族信託では、本人が健康なうちの意思を尊重した財産の使い道を決めることができます。

家族信託で財産を託された受託者は、本人の希望した財産管理ができ、それが必ずしも本人の財産を守る行為でなくても(例えば、元本割れのリスクのある投資商品の購入など)信託契約にそれを許す定めがあれば実行することが可能です。

これを成年後見制度と比較すると、財産の処分に関して大きな違いがあります。

《成年後見制度の特徴》

  • 成年後見人は本人の財産を守ることを目的とした支出に限られる
  • 認知症になる以前に本人の希望があったとしても、本人以外の家族のメリットなどを想定した財産管理・処分はできない
  • 家族が後見人になったとしても、家庭裁判所や後見監督人への定期的な報告義務がある
  • 総資産を家庭裁判所や後見監督人へ開示しなくてはならない

このような特徴があります。

一方、家族信託は信託したい財産を選択して信託を組むことも可能であり、部分的に管理を第三者に任せるような方法も可能です。

《成年後見制度については事前に特徴の把握を》

認知症が既に進行してしまった場合に成年後見制度は非常に有効な制度ですが、財産所有者の意思能力が契約可能な段階にあるのであれば、家族信託の契約が可能となります。

後見制度については最終手段として考え、また、制度上の特徴についても事前に確認しておきましょう。成年後見制度についてはこちらの記事もご参照ください。→『利用前に必ず抑えておきたい!成年後見制度のデメリット3つ

【メリット3】家族信託を遺言代わりに活用する方法

家族信託の契約では、委託者の死亡(相続発生)などを家族信託の終了と定めることができ、その時点で財産を誰に継がせるかについて事前に決めておくことが可能です。つまり遺言書の代用となります。

加えて、家族信託契約とは別に遺言書を書いておくことも可能であるため、信託していない財産を、別途、遺言書で定めておく方法もあります。

もちろん、信託契約によっては家族信託の継続も可能で、当初の委託者が亡くなった後も受託者が引き続き財産を管理し続けるという契約を結ぶことも出来ます。

▼ 二次相続にも対応できる

家族信託は、本人から財産の承継を相続人へ相続させる遺言の効果を持つだけでなく、その相続人の次に財産を承継する人を指定することができます。

例えば、代々管理している資産がある場合、自分が亡くなった後は妻へ、妻がなくなったら長男へ、という指定をすることも可能です。

資産の分散を防ぎ、安定的な継承も可能となるのです。このような財産承継の指定は、遺言では不可能であるため、家族信託の大きなメリットだといえるでしょう。

家族信託の5つのデメリット

メリットも多く、活用度の高い家族信託ですが、注意点やデメリット面もあります。確認しておきましょう。

【デメリット1】成年後見と違い公的な監視役が不在

成年後見制度の財産管理の厳しさと比較した時の裏返しとして、家族信託では公的な立場の監督者などが不在であるという特徴があります。

つまり、受託者が勝手に財産を処分するような可能性もあり、家庭裁判所のような公的な監督者は存在しないことになります。

代わりに家族信託では委託者・受益者が受託者の行動を制限することが可能であり、また、信託契約で定めれば「信託監督人」監督役を設定することは可能です。

もともと監視可能な委託者・受益者が元気なうちは牽制できても、高齢となるにつれて監視の目が届かなくなる可能性もあります。

後から契約の変更も可能ですが、信託監督人に関する取り決めは当初より盛り込んでおく方が良いでしょう。

ただし身内同士ということもあり、公正で厳格な管理が難しくなる可能性もあります。

少子化により、親族の人数が減っていく可能性もあるため、もしもに備えて受託者の欠格事由を定めておくなど、信託契約に各種規制的な内容も盛り込んでおく方法もあります。

【デメリット2】遺言を全てカバーできるわけではない

家族信託の利点として、信託契約に遺言の機能を持たせることができますが、財産の承継について遺言の機能をすべて網羅できるわけではありません。

例えば資産のうちの一部のみ信託資産にしているケースや、実務上、株式等の有価証券を信託財産に含めることができなかった等のケースもあるからです。

また、現に農地である土地等は信託財産の対象外となっています。

そのため相続対策を想定している場合は専門家等への相談をお勧めします。また、家族信託契約に加えて遺言書の作成もセットで準備をすると良いでしょう。

【デメリット3】直接的な節税対策にはならない

上述のように家族信託は認知症対策になり、相続に備える方法にもなりますが、相続税を節税する方法としては間接的なものにとどまります。

例えば、多額の預貯金を保有している高齢者が遺産の評価額を下げる(節税対策)ために不動産の購入を検討している場合は間接的な対策をすることが可能です。

高齢で認知症が進行しても、子などの受託者が良い不動産が見つかった段階で不動産の購入やその管理等を引き受けてくれるからです。

このような税金対策を計画している場合は間接的に節税対策となる可能性がありますが、家族信託を組むことが即、節税となるわけではないため注意が必要です。

【デメリット4】受託者としての義務が負担になることも

家族信託により子などの受託者に資産の管理を依頼することが出来るようになりますが、受託者となった人物は信託法上の受託者としての義務を負うことになるためその負担について想定しておく必要があります。

  • 信託法と信託契約に沿った管理者としての役割を担う
  • 信託資産について所定の記録を付け、一定期間保管することが義務付けられている
  • 信託事務として債務を負った場合には、個人の資産についてもその債務を負うことになる

とくに信託資産が多い場合や、収益不動産が遠方にある場合など、受託者の本来の仕事を圧迫する可能性もあります。

このような場合は不動産管理の委託を検討したり、管理方法を指導する引継ぎ期間が必要になるでしょう。

また、受託者をサポートする役割の人を定めておいたり、受託者が相応の報酬を得られるよう規定を設けておくなどの方法も検討しましょう。

【デメリット5】家族信託を熟知した専門家が少ないケースも

家族信託は、財産に直接関係する制度の為、サポートを依頼する専門家選びを慎重に行う必要があります。

ただし家族信託はここ10年程度で広がってきた制度であるため、家族信託に精通した専門家は限られているのが現状です。

まだ判例なども少なく、全ての法律の専門家がサポートできるというものではありません。

居住地域に家族信託に精通した専門家がいない可能性もあり、相談をしたいけれど見つからないというデメリットも想定されます。

そのため、まずは家族信託に精通した司法書士法人等に問合せをすることをお勧めします。全国組織を持つ規模の法人であれば、最寄りの優れた事務所を探し出しやすくなるからです。

メリットの多い家族信託ですが、デメリットについて下記記事でも解説しています。
→『家族信託をする上で、気をつけたいデメリット・注意点を解説

家族信託の始め方とは?実際の手続きについて

では実際に家族信託を始めるには、どのような手続きとなるのでしょうか。

信託財産や受託者が管理できる範囲、財産の管理方針などを決めておきます。信託が終了する時期や財産の引き継ぎ先など、自由に決めることができるため、各項目を決めていきます。

(1)まずは身内で情報共有を

家族信託の計画については、当事者(委託者と受託者)だけでなく他の家族とも話し合いをして情報を共有するようにしておきましょう。

もし他の家族から家族信託の同意が得られない、反対を受けて実行できないというような事態になった場合は、第三者の専門家を家族会議に参加させることで解決できる可能性もあります。

家族信託の重要性や活用度の高さ、将来への対策、税金面の不安など、専門家が関わることで疑問が解決でき、納得感のあるスタートを切ることができる可能性があります。

困ったときにはアドバイスを受けると良いでしょう。

(2)信託契約を作成し公正証書化する

家族間で同意が得られたら、決めた内容を契約書に起こします。信託財産や依頼する範囲を盛り込んでいきましょう。

家族信託は私文書の契約書でも成立しますが、金融機関に信託口口座を開設する場合は信託契約内容に一定の規定を盛り込む必要があるケースもあります。

金融機関との取引を要する場合は事前に相談の上、内容のチェックを受けることになります。金融機関に提出する必要がある場合、信託契約書は公正証書にするのが一般的です。

公正証書で作成することで委託者の意思確認も受けるため、意思能力の有無についても証明を受けることを意味します。

このように信託契約書の作成には取引先の要求を取り入れる必要のある部分もあり、また、税務上問題がないか検討を要する部分もあるため、専門家に相談の上での作成をお勧めします。

(3)信託財産の名義変更

信託契約が作成出来たら、信託財産の名義変更を行います。

預貯金など

金融機関にて「信託専用口座」または「信託口口座」を開設し、委託者が資金の移動を行います。銀行によって信託関連の口座について対応が異なるため、事前に確認しておく必要があります。

不動産

不動産の場合は登記情報の変更をします。信託登記については通常の登記申請とは異なる特殊な記載となるため、司法書士に依頼するのが一般的です。 手続きが完了したら受託者が不動産の管理を行います。

各種名義変更手続き

建物を信託したなら火災保険の名義、区分所有物件なら管理組合への届出、収益不動産なら振込先口座の変更等があります。

このように、信託契約の締結後に受託者が行わなければならない業務は多岐にわたります。

家族信託の費用はどのくらい?

家族信託にかかる費用は、主に以下の3つがあります。

  • 公正証書の作成費用
  • 信託財産に不動産がある場合は信託登記に関する登録免許税
  • 専門家への依頼費用(報酬)

[1]公正証書の作成費用

信託契約書を公正証書で作成した場合、公証役場で支払う費用が掛かります。信託財産の価額により費用は変わりますが、3~10万円が目安です。

[2]不動産を信託する場合の「登録免許税」

不動産を信託した場合、信託登記のため固定資産税の評価の0.4%が「登録免許税」として課税されます。

例えば評価額1千万円の不動産の場合は登録免許税が4万円、評価額5千万円の場合は20万円が目安です。

土地については令和5年までの間、軽減措置の適用で、信託に関する登録免許税は0.3%に軽減されています。

[3]専門家へ依頼する場合の報酬

家族信託をするために専門家のサポートを受けた場合には、専門家に対するサポート報酬の支払いが必要となります。

家族信託を組む際に必ずしもサポートを受ける必要はありませんが、後のトラブルや不本意な課税を避けるために専門家への相談をお勧めします。

専門家のコンサルティングを受ける場合、一般的には、信託財産の総額の1%程度のコンサルティング費用が目安となります(最低額30万円にて設定されているケースが多いようです)。

ご相談は多数のノウハウを有する専門家へ

家族信託は人生100年時代と言われる昨今において、非常に重要な役割を果たすと考えられます。ご自身や、ご家族の老後の人生設計を考える際に、ぜひ検討していきたい制度だと思います。

元気なうちに対策することはもちろん、認知症が進行する前にできるだけ各種制度を知り、対策していくことの大切さを感じていただけたのではないでしょうか。

我々トリニティグループは累計480件以上の家族信託のご相談をいただいており、多くのご家族をサポートしてきました。

蓄積してきたノウハウもありますので、家族信託を検討されている場合は、是非我々にご相談ください。

この記事の監修者
浅沼 礼奈(あさぬま れいな)

司法書士
浅沼 礼奈(あさぬま れいな)

東京生まれ、新潟・鹿児島・千葉育ち 年間80件近くのご家族にお会いし、家族信託・相続・事業承継のご相談に対応。それぞれのご家族オリジナルの財産管理・承継の仕組みをお客様と一緒に考えます。

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