家族信託は、委託者(財産を預ける人)と受託者(財産を預かる人)の契約によって成立します。

委託者が親、受託者が子、という契約が一番多いパターンですが、契約そのものは親子間で成立すれば完了です。

その他の親族の同意は、法的には必要ありません。

ただし家族の同意を得ないまま信託契約を進めると、後に親族間でトラブルになるケースも多々あります。

この記事では、家族信託をする際の他の親族に対する注意点や、トラブルを防ぐ対策法について解説をしていきます。

家族からの理解を得るためのコツ

法律上、委託者と受託者、2者の契約で成立する家族信託ですが、他の家族に知らせず運用していると、将来トラブルに発展する可能性があります。

とくに将来、相続人となる親族から、受託者の行動を抜け駆けと判断するかもしれません。

家族信託を確実に行うためには、やはり事前に家族全体で認識を共有し、理解しておくことが重要だといえるでしょう。

  • 家族信託とはどのような仕組みなのか
  • 信託契約の内容はどのようになっているのか?
  • 家族信託の目的
  • 介護施設への入所費・利用料など、費用関係の明確化

これらの点について、契約締結前に家族間で認識の共有をしておきましょう。

相続の際に自分達が不利な立場にならないことを認識できるように納得してもらうことが大切です。

信託契約に親族の希望を盛り込む

相続では不利にならないとしても、受託者が有する強い権限を気にする方はいるでしょう。

受託者は信託契約の内容に従うとはいえ、信託財産について自らの意思で処分をする権限を有することになるため、財産管理について疑いをかけられやすい立場にあります。

このような場合、他の兄弟も信託契約の当事者にすることで解決を図ることができます。

例えば、受託者について、もしもに備えて身内を「第二受託者」として名前を記載しておく方法や、受託者から定期的に報告を受ける「信託監督人」の立場として明記する、といった方法が考えられます。

また、定期的に親族に信託財産の状況を報告するといった条項を加えておくだけでも同意を得られやすくなります。

身内の理解が得られやすい方法を検討してみてはいかがでしょうか。

家族の同意が得られない時の注意点

身内の同意が得られればよいのですが、中にはどうしても家族の同意を得ることができない、長年にわたる不仲の状態にある、というケースもあるでしょう。

このような場合、説明や同意を得ないまま資産に関する話を進めるため、下記のような点に注意していきましょう。

主に書類の法的な正しさを整える点や、入出金の記録を確実にとっていくという点を押さえていきます。

【1】信託契約書は公正証書で作成する

まずは信託契約が法的に正しく成立していることを証明する必要があります。

契約当初は元気であっても、親本人の認知症が進んでしまうと契約当初のことを忘れてしまう可能性があるからです。

本人の同意を得ずに契約書を作ったのではないかという疑念を避けるためにも、また、契約書の正当性を証明するためにも、公正証書で作成する方が安心です。

公正証書であれば、公証役場にて本人確認が行われ、意思確認の上で契約書が作成されていることを証明することができます。

契約内容を本人が了承している旨の証明にもなりますので、公正証書での作成がおすすめです。

家族信託契約の公正証書化について、その重要性や手続き方法を下記記事でも解説していますので併せてご覧ください。
→『家族信託は「公正証書」が必要なのか。私文書では危険?

【公正証書で作れない】私文書で信託契約を作成する際のポイント

信託契約書について、どうしても公正証書で作ることができず、やむを得ず私文書での契約になるケースもあると思います。

例えば意思能力の低下により、公正証書で信託契約を作れないケースです。

そのような私文書による契約書の場合、身内の疑念を少しでも防ぐ方法をご紹介します。

契約の正当性を担保する対策として、公証役場で出来る方法です。

① 確定日付の付与

私文書で作成した契約書も、書類に「確定日付」を付与してもらうことで書類の存在を証明してもらうことができます。

これは公証役場や法務局にて申請できる方法で、その文書が特定の日に存在したことを証明してもらう制度です。

代理人にて手続きをすることも可能です。公証役場に支払う手数料も700円と高くありません。

② 私署証書の認証

公証役場にて、文書の署名・押印が確かに本人によるものであるということを証明してもらう制度です。

手数料は約5000円〜1万1000円の範囲内になります。

③ 宣誓認証

私文書の作成者が公証人の面前で当該私文書の内容が真実であるということを宣誓し、認証してもらう制度です。手数料は1万1000円です。

宣誓認証では、公証役場に文書を1通保管してもらえるという利点があります。内容の改ざんの恐れもなく、①②の内容も兼ねてクリアできることになります。

なお、私文書で信託契約書を作る際の注意点について下記記事でも解説していますのでご参照ください。
→『家族信託の契約書を公正証書で作れない!私文書締結の際の注意点

【2】入出金の記録を確実に

財産を管理している受託者が他の親族に疑われないためにも、出金状況や使途については細かく記録を残すことをお勧めします。

  • 信託された金銭を使ったときには、領収書を必ず保管する。
  • 支払先の記録が残るように銀行振込で支払う。
  • 通帳をこまめに記帳し、領収書と紐づけて、記録する。

このような方法が有効でしょう。

また、口座引き落としのできる支払先は、できるだけ口座からの引き落としで支払う方法に変更していきましょう。

【3】受託者義務の「年度末報告書」を完備

家族信託を規定する信託法では、「年に一回、財産を預かっている人が、預けている人(受益者)に対して報告書を作成して報告しなければいけない。」というルールを定めています(信託法37条)。

この規定通りに報告書類を作成しているのであれば、親族の求めに応じて報告書を提示することができます。

もともと義務として作成すべき書類ですので、法律上のルールに沿って作成し、親族にいつでも提示できるように整えておきましょう。

●参考記事:『 仲の悪い家庭で家族信託を利用するときの注意点 4選

親族間トラブルの対策を

家族信託では財産管理が長期間続きます。本来、家族の同意のもとで行うことが理想ですが、なかなかそうもいかないご家庭もあるでしょう。

家族信託の直接的な目的は財産の適正な管理・保全ですが、親族間の様々なトラブルを想定して対策を立てる必要があります。

親族への説明が難しい場合は契約書作成などに関与する専門家がいる場合は、親族への内容説明を依頼する方法もあります。

身近な存在だからこそ、小さな疑惑から大きなトラブルに発展しやすいため、身内同士のいさかいを見逃さず、対策を打っていくことが大切です。