家族信託では、自分の財産を家族等の信頼できる人に託す仕組みですが、万が一その信頼できる人が財産を勝手に使い込んでしまったらどうなるのでしょうか?

家族信託を検討するとき、このような不安を感じる方もいるのではないでしょうか。

今回の記事では、受託者(=財産を預かる方)が勝手に財産を使い込んだ場合の対処法について、事例を使ってご紹介いたします。

【トラブル後の対策】受託後の使い込みが判明した事例

数年前、自身の認知症を不安に思ったA男さん(父)は、B太郎さん(長男)と家族信託をしました。

財産を預けた人(=委託者兼受益者)がA男さん(父)であり、財産を預かった人(=受託者)がB太郎さん(長男)です。

ところが数年後、グル男さんが信託財産を使い込んでいたことが分かりました。このような時、A男さん(父)はどうすれば良いでしょうか。

(1)使い込んだお金の返還請求

万が一、受託者が財産を使い込んでしまった場合、受益者は受託者が減らしてしまった財産を元に戻すように請求することができます。(信託法第40条)

上記事例でいうと、受益者(かつ委託者)であるA男さん(父)が、受託者のB太郎さん(長男)に使い込んだ財産を元通りに返すよう請求することができます。

仮に話合いで解決しない場合は、訴訟を提起し、裁判によって解決していくことになります。

(2)受託者の解任

家族とはいえ、財産を預かる受託者には様々な義務が課されます。その義務の中でも忠実義務という重要な義務があります。(信託法第30条)

受託者は受益者の利益のために、忠実に財産の管理をしなければならないという義務です。B太郎さん(長男)は、父親のために忠実に財産管理をしなければなりませんでした。

この義務に違反し、自分のためにお金を使い込んでしまったため、B太郎さん(長男)はしっかりと財産管理ができるかどうかは怪しく、委託者と受託者の間での信頼関係はもはや崩れてしまっています。

このような場合には、委託者と受益者から受託者を解任することもできます。委託者兼受益者の父親は、受託者である息子を辞めさせることができるということになります。

(3)受益者が既に認知症になっている場合は…

受益者は使い込んだお金を元に戻してもらったり、受託者を解任することができますが、その受益者が、既に認知症になってしまっていた場合はどうすれば良いのでしょうか。

この場合は「受益者代理人」を選定しておくことで受益者代理人から受託者へ損失分を請求することができます。

つまり、父親は代わりの人(受益代理人)を選定しておくことで、トラブルが起きた際に請求することができます。

受益者代理人を指定する場合は、信託契約書を作成する際に「受益者代理人を選任、指定する旨」をあらかじめ定めておく必要があります。

受益者代理人の仕組みについて、こちらでも解説しています。
参考:家族信託の重要人物!!受益者代理人について徹底解説

【事前の対策】使い込み等のトラブルを防ぐには

大切な財産が使い込まれてしまった場合の対処法を説明してきましたが、実際に使い込まれた後で財産を返してもらえるかは分からないし、訴訟するのも大変…と思う方もいると思います。

あらかじめ、防止する仕組みがあれば、安心ですよね。

A男さん(父)のようなトラブルを防ぐには、受託者を監督する「信託監督人」を置いておく方法があります。

受益者自身が受託者を監督することが困難な事情があるときに、受益者を保護する目的で設置されるのが信託監督人です。

信託監督人は信託法により、受託者を監督するために必要な権限が認められています。詳細はこちらにてご案内しています。(『家族信託の重要人物〜信託監督人~』)

また、家族信託の受託者は、信託事務の処理の対価として信託報酬を受け取ることができます。

報酬については信託契約であらかじめ定めておく必要がありますが、信託資産の使い込みのようなトラブルを防ぐためにも、有効な方法となるのではないでしょうか。

こちらの記事『家族信託の受託者の報酬はいくらが適正か?』も参考にしてみてください。

まとめ

万が一、受託者が信託財産を使い込んでしまったときにどのような対処ができるのかを説明しました。

受託者のもしもに備えるため、あらかじめ受託者を監督できるような仕組みを作っておき、万が一の使い込みを起こりにくくするように信託内容を設計することも重要です。

信託監督人には、司法書士や税理士などの専門家が就くことも可能なため検討してみてはいかがでしょうか。