家族信託とは「認知症による資産凍結」などを防ぐ法的制度です。

内閣府の高齢社会白書によると、2025年には高齢者の方の 5人に1人が認知症 を抱えていると推計されるなど、日本では超高齢化に伴い、認知症患者数が急増しております。

認知症になると意思能力を喪失したと判断されてしまい、いわゆる「資産凍結」状態になり、

  • 銀行預金を引き下ろせない(口座凍結)
  • 自宅を売却できない、賃貸に出せない
  • 株式など資産の整理、処分ができない
  • 生前の相続対策ができない

など、文字通り資産・財産が凍結されてしまいます。

このような事態に対応する方法として「家族信託」があります。
この記事では、近年急速に普及してきている家族信託の仕組み・メリット・デメリット・費用をご紹介します。

要約

  • 家族信託は「認知症による資産凍結」などを防ぐ法的制度
  • 認知症により意思能力を失うと銀行口座の凍結などの資産凍結に
  • 完全に意思能力を失うと家族信託は出来ないため早めの対策が必要
  • 家族信託契約は非常に難しい契約。過去には専門家が組成しても無効になったものもある
  • 家族信託の組成実績が豊富な専門家を選んで相談しましょう

家族信託をご検討の方へ

あなたのご家庭にとってなにが一番合った財産管理の方法なのか、ご状況に応じた適切な対策を一緒に考えさせて頂きます。

認知症による資産凍結に関するお悩みや、家族信託・成年後見を用いた具体的な対策方法など、専門家へお気軽にお問合せください。

プレスリリース: 45〜65歳の4人に1人が、親の認知症による「資産凍結」リスクを認識。資産凍結を回避する「成年後見制度」を45%、「家族信託」を27%が理解

家族信託とは

家族信託を一言で表すと、 「認知症による資産凍結」などを防ぐことができる財産管理の制度 です。

「自分の財産(不動産、預貯金など)を管理できなくなったときに備えて、自分が保有する財産の管理や運用、処分をする権利を家族に与えておく」という財産管理の制度です。

財産の管理を依頼する人「委託者(親)」と、依頼を受ける人「受託者(子)」の間で契約して利用します。

家族信託の仕組み

まず、家族信託の当事者は委託者、受託者、受益者の三者です。

家族信託の仕組み
委託者:財産の所有者で信託する人
受託者:財産の管理運用処分を任される人
受益者:財産権を持ち、財産から利益を受ける人

家族信託の仕組みは、財産を任された「受託者」に財産の所有権が移転し、財産の管理や適切な処分を行うことになります。

管理される財産を「信託財産」と言い、不動産などの信託財産から生じる利益を依頼者が「受益者」として受け取ることができます。

家族信託が注目されている理由

日本では、高齢者数の増加と平均寿命の増加が相まって、2020年時点で約630万人いた認知症患者が、2050年には1000万人( 人口あたり10人に1人が認知症患者 )を超えると推計されています。

認知症になってしまうと、意思能力を喪失したと判断されてしまい、あらゆる法律行為ができなくなるため、「資産凍結」状態に陥ってしまいます。

このため多くの方が資産凍結により、生活費の工面や、介護費用の捻出、生前の相続対策などが難しくなり困っていらっしゃいます。

このような「資産凍結」への対策として、近年家族信託が注目されるようになりました。

銀行に預金はあるのに家族でも引き出せない

銀行では大きな金額の払い出しや振込の際に、本人確認をすることがあります。

この際に口座名義人が認知症だと知られてしまうと、口座を凍結することがあるのです。

銀行口座が凍結されると、銀行での取引に制限がかかった状態となり、キャッシュカードでの引出しや振込みによる出金ができなくなります。

これは預金の不正な引き出しや預金口座が犯罪に悪用されることを防止することを目的としたものです。 高齢になると、振り込め詐欺や悪徳営業などのターゲットにされるなど、被害に遭う可能性が高くなるためです。

ひとたび口座が凍結されると、 たとえ家族でもお金を動かすことができません。

銀行の窓口に来た人物の親子関係が明らかな場合でも、口座所有者本人の意思確認ができない以上は引き出しが認められなくなるのです。

ごく少額の生活費ならともかく、毎月の介護費や介護保険施設に入所する費用等は高額になってきます。立替えをするにしても身内に負担がかかります。

「年金があるから老後の生活費は大丈夫」
「もしもの時は定期預金を解約すればいい」

多くの方がこのように考えてしまっているため、

「口座にお金はあるのに、引き出しや解約がができない」

このような資産凍結が日本全国で発生しています。

口座凍結を解除できるのは「後見人」のみ

このような経緯で預金が凍結された場合、解除して払い出せるのは、家庭裁判所を通して選任された「後見人」のみです。

後見制度は、本人や家族などからの申立てにより、家庭裁判所に後見人を選任してもらう制度です。

利用が開始すると、後見人が財産の管理を行うことができるため、凍結された預金を解除して払い戻すことができます。

しかし後見制度では多くの場合において、

  • 費用が高い(後見人への報酬が高く、長期間支払わないといけない)
  • 財産の使途に制限が発生する(自由に財産を動かせない)
  • 途中で止めることができない
  • 財産が第三者によって管理されてしまう(家族で管理できない)
などの課題もあります。

後見制度については、後ほど詳しく説明します。

家族信託で高齢期のリスクに備える

資産凍結を防ぐためには、家族信託の活用がおすすめです。

家族信託をすると、財産は管理を引き受けた家族が「受託者」として管理し、不動産の処分なども本人のために代わって行うことができます。

家族信託は委託者と受託者の契約で成立するため、両当事者には契約能力や判断力があることが前提となります。

意思能力というのは、物事を理解し、その是非を判断できる能力のことです。

仮に認知症との診断を受けていたとしても、そのことで直ちに契約不可能となるわけではありませんが、家族信託の利用に際しては意思能力の有無は重要な条件となります。

弁護士や司法書士などの法律の専門家に相談の上、信託の契約が可能かどうかの判断を受けることになります。

家族信託の契約と手続き

家族信託の契約や設計には以下のような手続きが必要です。

信託契約

  1. 契約書の作成と契約締結
  2. 契約書を公正証書で作成
  3. 管理口座の開設と送金(管理口座の開設手数料)
  4. 不動産がある場合は信託登記の手続き(登記手数料)

信託開始後

  • 帳簿の作成(貸借対照表と損益計算書)
  • 信託財産の収益について「信託の計算書」を税務署へ提出
  • 受益者について「信託に関する受益者別調書」の提出

上記の帳簿の作成などは、資産管理を引き受けた「受託者」の義務として信託法で定められています。

手続きで難しいことがある場合、信託契約を相談した専門家に相談しながら進めていくと良いでしょう。

[関連記事]
家族信託をする上で気をつけたいデメリット・注意点を解説

家族信託を行うメリット

家族信託には以下のようなメリットがあります。

認知症に備えられる

認知症発症に備えて家族信託にしておけば、財産管理を託せます。万が一、本人が認知症になってしまったとしても、受託者によりスムーズな財産管理が行えるでしょう。

例えば、父親が財産の名義を長男にし、長男を受託者とする家族信託をしておくことで、資産管理を安心して任せられます。

委託者の体調や判断能力に影響されず財産管理ができる

例えば、預金を下ろしたい場合や家を売りたい場合でも、本人の意思能力が完全に失われている場合には実現できません。

家族信託を使うと、受託者に財産の管理運用権限が移転するため、本人の意思確認や手続きは本人に対して行われません。 つまり、本人の判断能力が低下しても財産の管理運用ができることになります。

委託者の判断能力に左右されないことは、家族信託の中でも大きなメリットと言えるでしょう。

柔軟な財産管理が実現できる

家族信託も成年後見制度も認知症を発症した場合のリスクに備えられる制度です。

両制度における大きな違いは、成年後見制度の方が負担と制約が多い点にあります。

成年後見制度では家庭裁判所に後見人の選任を申し立てする必要があるのが特徴。
家庭裁判所が関与するので、後見人の選任の条件は厳しいものになります。
また、毎年、報告義務があったり、財産の積極的な活用や生前贈与などの相続税対策がしにくいといったデメリットもあります。

家族信託は、家庭裁判所の関与は必要なく受託者を選ぶことができるうえに、家族間で財産が管理できます。
委託者の判断力があるうちであれば本人が希望する人に財産管理を任せられるので、より自由度が高く本人の希望が叶う選択ができるでしょう。

成年後見制度より制約や負担が少ない

成年後見制度を利用すると、家族が被後見人の資産を自由に運用や管理、処分をすることはできなくなります。
また、親族が後見人となった場合でも、家庭裁判所に報告・提出する書類の作成などが必要となります。
家族信託であれば家庭裁判所の関与はありません。

資産承継の順位を決められる

相続順位を指定できるという点もメリットです。
資産を引き継がせたい人の順番を決めておくことができるので、遺産分割協議でのトラブルを防げます。

一般的な相続対策として生前贈与や遺言書の作成などがありますが、生前贈与や遺贈をした財産に対しては、相続が開始した際の相続人を指定できません。
ですが、家族信託なら最初に指定した受益者が亡くなってしまったとしても、その次の受益者を誰にするか指定できます。

遺言書よりも優先して適用される

家族信託は遺言書よりも優先して適用されます。

家族信託・遺言書のどちらも財産の継承先を決めておくことができます。
もし家族信託と遺言書で異なる内容となっていた場合には、家族信託の内容が優先されます。

二次相続の対策としても有効

一次相続とは、両親のどちらかが亡くなり配偶者と子どもが相続人になる場合の相続であり、 二次相続とは、一次相続後に残された配偶者も亡くなり子どもだけが相続人となる相続のことをいいます。

家族信託は二次相続を想定した相続対策としても有効といえます。
遺言書で指定できるのは「遺言者である被相続人が亡くなった時の一次相続のみ」です。
ですが、家族信託を利用すれば、財産をあらかじめ決めた人に、複数世代にわたって承継することができます。これを「受益者連続信託」と呼びます。

倒産隔離機能がある

家族信託のメリットの1つに「信託の倒産隔離機能」があります。

将来、受託者が「破産や財産に関係のない多額の債務を負ってしまったとしても財産は差押えられない」という機能です。
信託した財産は、受託者のものではなく、財産権を持っている委託者のもの。そのため受託者の債権者は差し押さえができません。

家族信託を行うデメリット

家族信託には以下のようなデメリットが考えられます。

受託者を誰にするかで争う可能性がある

家族信託の受託者は、財産を適切に管理・処分し信頼できる親族ということになります。

受託者として誰が選ばれたかによって、親族間での仲が悪くなってしまう可能性もあります。
受託者に選ばれなかった人は信頼されていないと感じ、不満を持つきっかけになるかもしれません。
そのため、受託者に選ばれなかった人への配慮はしっかりとしておきましょう。

節税効果は少ない

家族信託を行っても高い節税効果があるわけではありません。
家族信託は委託者には税金をかけられませんが、財産を取得する受益者には税金がかかります。そのため税金は受益者の負担が大きくなります。

節税だけが目的であれば遺言書や生前贈与など、他の手段を使った方が節税効果が高くなるケースもあります。

遺留分侵害額請求をされる場合がある

遺留分とは法定相続人に最低限保障された相続財産を指します。
家族信託の場合も、遺留分を侵害するような分配がされた場合、遺留分侵害額請求という請求手続きが可能となります。

あらかじめ遺留分が発生しないよう設計するか、法定相続人間で協議をしておくなど、防止できるよう働きかけることが必要です。

実例が少なく相談できる専門家が多くない

家族信託は新しい制度であり、現状、家族信託に精通している専門家は多くないといわれています。

当然、契約を締結する専門家の数は増えてきていますが、契約後や想定外の事態への対応など、家族信託の終了までを経験している専門家は少ないでしょう。

家族信託・他信託サービス・後見制度の特徴の比較

認知症になったときの対策として複数の方法があります。

  • 身内で家族信託を設計する方法
  • 信託銀行等で信託契約をする方法
  • 成年後見制度(法定後見・任意後見)を利用する方法

対策となる各種制度

信託銀行の信託 家族信託 成年後見制度 任意後見制度
代理人 身内に規定されることが多い 本人の希望で選任できる ・家庭裁判所が選任 ・弁護士・司法書士など専門家の後見人が多い 本人の希望で選任できる
信託内容 必要資金の支出を中心として、
規定されていることが多い
相続対策、
認知症対策など自由度が高い
制限が多い 依頼内容を公正証書で締結
費用面 事務管理の手数料や
運用報酬が必要
身内を受託者にできるため
コストを抑えられる
・専門家後見人への報酬が必要 ・コスト負担が大きい傾向にある 身内を受託者にできるため
コストを抑えられる
メリット・デメリット 信託できる財産に限りがある ・財産に制限なく少額からでも利用可能 ・第三者が介入しない ・利用開始までに数か月かかる ・原則として本人の死亡まで継続 家庭裁判所で任意後見監督人が 選任されて初めて効力が生じる

(1)信託銀行などの信託サービス

信託と言えば信託銀行というイメージがあるかもしれません。

信託銀行は銀行業務と信託業務の両方を行うことができる金融機関で、遺言の保管や遺言執行業務、不動産売買の仲介業務も認められている金融機関です。

信託銀行や、信託業務を専門としているサービス会社にて信託手続きを依頼することも可能です。

ただし、費用が比較的高めになるケースが多いため、利用前に確認しておきましょう。

(2)法定後見

成年後見制度の中の「法定後見」は、認知症などの理由により銀行から財産を凍結された場合に家庭裁判所に申立てて後見人を選任してもらう制度です。

法定後見人が財産の管理を行います。

成年後見制度

法定後見制度は、すでに預金口座が凍結された後でも手続きが可能だというメリットがあります。

ただし、親族が後見人に希望しても就任できない場合があります。統計的には約7割のケースで弁護士や司法書士などの専門家が後見人として選任されているようです。

専門家による後見という安心感もありますが、毎月の報酬も必要になります。基本報酬だけでも年間数十万円の報酬が見込まれます。

また財産管理は後見人の権限となり、財産を守ることに特化されます。相続のための節税準備や自宅の売却などが実質的に難しくなる傾向にあります。

さらに、認知症を原因とした後見の利用をすると、原則本人の判断能力が回復したと認められない限り、制度の利用を途中でやめることはできません。

長期間にわたり報酬の負担が大きくなる点に注意しましょう。

(3)任意後見

法定後見制度の「任意後見」は、本人の意思能力のある段階で任意の人物と後見契約を結んでおく制度です。

契約書は公正証書で作成し、利用開始の際は家庭裁判所に申立てます。後見監督人が選任されると利用できるようになります。

また、法定後見人と同様、後見人・後見監督人への報酬が必要です。

このように親の老後・認知症対策の方法としていくつか選択肢がありますが、それぞれ制約やメリット・デメリットがあるため、特徴をよく比較して利用することが大切です。

なかでも、受託者を身内から選任でき、第三者を入れずに報酬コストを抑えながら身内の間で財産管理をしたい場合に適している方法が「家族信託」だといえます。

[関連記事]
家族信託と成年後見の違いは?どちらを使うべき?

受託者の仕事と義務

家族信託は利用しやすく設計しやすい制度である一方、「信託法」により受託者がしなければならない仕事が定められています。

信託法上の受託者義務

義務の種類 義務の内容 根拠条文
善管注意義務 善良な管理者の注意をもって
信託事務を処理する義務
29条
忠実義務 受益者のために忠実に
信託事務の処理をする義務
30条
分別管理義務 信託財産と個人の固有財産を
分別して管理する義務
34条
信託事務を
第三者に委任した場合の
選任・監督義務
第三者に信託事務を委託した場合に、
当該第三者として適切な人物を選任し、
監督する義務
35条
公平義務 受益者が複数いる場合、
受益者のために公平に職務を行う義務
33条
帳簿等作成、報告、保存義務 信託財産に係る帳簿を作成し、
受益者に対してB/S、P/Lについて報告し、
書類を一定期間保存する義務
36条, 37条
損失てん補責任等 受託者が任務を怠ったため信託財産に
損失・変更が生じた場合、受益者の請求により
損失のてん補または原状の回復の責任を負う
40条

受託者は上記のような受託事務を担当します。

信託財産の管理を行うため、帳簿等作成や報告、書類の保存義務などが重要な仕事です。

帳簿等作成の義務 貸借対照表・損益計算書の作成・報告・保存義務
・信託財産について帳簿を作成する義務 ・信託財産からの支出についてその資金の動きの記録、領収書等の保管 ※委託者の生活費や介護費、医療費などを支出した場合 ※信託財産である不動産を売却した場合 ※作成から10年間保存 ・毎年作成し受益者(委託者)への報告 ・信託終了まで保存

家族信託の受託者の負担を軽減するために

ここまでの解説の通り、家族信託には家庭裁判所などの手続きも不要で、比較的柔軟に資産管理ができるようになります。

しかしその一方で、受託事務の引き受けが負担となったり、また、勝手に財産を処分してしまうなどのトラブルも起きるかもしれません。

そのため、受託者の選任や、仕事を進めやすくなるような対策についてご紹介します。

[1]受託者に適した人物

家族信託の「受託者」は信託財産の管理や手続きを行うため、それらの事務を理解し、手続きに慣れていく必要があります。

受託者は成人に限られます。もし身内に適した人物がいない場合は、残念ながら家族信託を利用することは難しいといえるでしょう。

受託者は家族でなくても依頼可能ですが、多くの場合、信頼できる家族が引き受けています。

将来の相続(予定)人との信頼関係にも関わりますので人選は重要です。

[2]受託事務を引き受けにくい場合

複数の不動産の管理がある場合など、受託者の仕事を負担だと感じて元割られるケースもあるかもしれません。

また、遠方に居住している、仕事が多忙、健康面の不安など、さまざまな理由もあると思います。

そのような場合、信託資産の種類を減らしたり、受託者のサポート役を設定するという方法があります。

【対策法】監督役を設定する

信託契約上の「信託監督人」「受益者代理人」という受託者の監督役ですが、実務上、サポート役として設定することも可能です。信託契約に盛り込むことで設定できます。

また、弁護士や司法書士などの専門家が、これらの監督役に就くことも可能です。

【対策法】受託者を法人にする

受託者の負担を減らすため、法人を設立して受託者とする方法もあります。

例えば、受託者(候補となる人)と委託者を構成員として法人を設立し、受託者が慣れるまでは委託者がその法人を運営して財産を管理する方法です。

受託者が受託事務に慣れれば、そのタイミングで管理をバトンタッチすることができます。(法人の設立には登記費用が必要です。)

家族信託をご検討の方へ

あなたのご家庭にとってなにが一番合った財産管理の方法なのか、ご状況に応じた適切な対策を一緒に考えさせて頂きます。

認知症による資産凍結に関するお悩みや、家族信託・成年後見を用いた具体的な対策方法など、専門家へお気軽にお問合せください。

家族信託の制度上の注意点

家族信託を利用する際の注意点をまとめました。税金の面など専門的な知識の必要な項目もありますので、ぜひ専門家にご相談ください。

<1>契約内容により贈与税の課税となる可能性

一般的に家族信託は委託者と受益者を同一人物として設定します。

財産の持ち主である「委託者」が利益を得られるよう「委託者=受益者」として信託契約を組むからです。

しかし信託法では、利益を受ける「受益者」を別の人にすることも可能です。

ここで贈与税の課税関係が出てきます。

  • 財産所有者ではない人が利益を得ると、贈与税の課税対象となる可能性があります。
  • はじめ「委託者=受益者」で契約していたとしても、将来、管理を担当している受託者が信託財産を受け取るような契約にしていた場合、受託者への贈与税課税の可能性が出てきます。

このような課税の可能性については、設計の段階で改善したり、契約内容を適正に記載することで回避することも可能です。

そのため信託を組み立てる際、家族信託の課税を熟知した専門家へのご相談をお勧めします。

<2>委託者口座に振り込まれている公的年金について

委託者口座に振り込まれている公的年金について

資産の中には、信託できない財産があります。代表例として「年金受給権」や「有価証券等」です。

まず、年金受給権は譲渡できない個人の権利(一身専属権)であり、信託専用の口座を振込先に指定することができません。受託者名義の口座だからです。

そのため、公的年金については、支給された後に残高を信託用の口座に振り込むことになります。

<3>信託に対応している証券会社は限られている

株式や国債、有価証券等については、銀行口座とは別に証券会社で受託者名義の口座の開設が必要です。

現在、家族信託のための口座を開設できる証券会社は、野村證券、大和証券、楽天証券など一部の証券会社に限られています。

また、信託用の口座が開設できる証券会社であっても、信託分としての受け入れ商品に制限があることが多いため、実務上、信託が難しいといえます。

<4>受託者として債務を負った場合は受託者個人としても同様の債務を負う

家族信託で、受託者は信託財産の管理者となります。

そのため、受託者が信託財産の管理の一環として借入れ(信託内借入れ)を受けた場合、個人としても同様の債務を負った状態として扱われます。

信託内での借り入れですので、返済は当然、信託財産の預貯金から行いますが、万が一、信託財産がなくなった場合には、その穴埋めを受託者が個人の財産で行う責任を負います。

ケースとしては少ないと思われますが、これは受託者として信託財産を適切に管理するための規制でもあります。家族信託の特徴の1つとして認識しておきましょう。

<5>家族信託が間に合わない場合は法定後見を利用

すでに委託者の判断能力等が低下してしまった場合、家族信託の契約が不可能となる場合もあります。

その場合、家庭裁判所を通して法定後見制度を申し立てれば、選任された後見人が代理人として法律行為をすることが可能です。

状況によっては法定後見制度の利用を検討しましょう。

ただし、預金管理や不動産の売却など、財産の管理権限や決定権は後見人(多くは専門後見人)に移ります。

利用開始以降、親族が財産管理に関わることは出来なくなりますので、事前に法定後見制度の特徴をよく理解しておきましょう。

家族信託の活用事例

ここからは家族信託の活用事例についてご紹介します。

【1】自宅不動産を老後資金に

将来、介護施設への入所などのタイミングで自宅不動産を売却したい場合、不動産の売買などの契約行為をするため、名義人の意思能力や契約についての理解力が必須となります。

しかし意思能力などが低下してしまうと、資金化できる資産はあるのに実行できないという事態に陥ってしまいます。

そのような事態に備えて家族信託を契約しておくことで、受託者である家族が代わりに手続きできるようになります。

<老後の生活費・介護費について>

介護施設へ入所する際には、居住費・食費・管理費などの月々の支払いに加えて、入所一時金が必要になるケースがあります。

入所一時金は前払い・一部前払い・月額払い(月払いに含める)などのパターンがありますが、まとまった資金を見積もっておかなくてはなりません。

一時金は数十万円から数百万円と幅があるため、生活や介護のための資金を見積り、預金通帳や権利証などの書類も確認しておきましょう。

【2】贈与税の発生を回避して資産管理を任せる

多くの資産を保有している場合、相続対策として生前贈与の方法もありますが、贈与による高額な贈与税(生前贈与)が課題となります。

贈与税は基礎控除額が110万円と低いため、相続税に比べて税率が高くなるという特徴があるからです。

贈与税が非課税になる住宅購入資金や教育資金の一括贈与などの制度もありますが、その目的は住宅購入や教育資金に限定されます。

また、住宅については贈与を受けた人の前年の合計所得金額が1,000万円を超える場合には非課税制度の適用を受けることができません。

家族信託であれば、これらの贈与税に関する課税や制限を回避しながら、資産承継について年数をかけて計画できるようになります。

【3】将来の資産承継に備える

家族信託では、将来相続が発生した時に信託財産を誰に渡すかを定めておくことが可能です。

これは遺言書でも指定できる内容ですが、生前から将来の相続財産の管理を任せることができる点にメリットがあります。

例えば、管理が必要な収益物件などを所有している場合、早めに承継者に信託しておくことで管理の実務の助言をしながら任せることができます。

また、信託契約の利用により、将来の遺産分割について一時相続、二次相続まで、財産の引き継ぎ先を指定しておくことができます。

遺言書よりも希望をかなえやすく、スムーズな資産管理の引継ぎが可能となります。

家族信託の利用を検討中の方へ専門家からのアドバイス

家族信託の利用を検討中の方へ専門家からのアドバイス

家族信託の特徴を中心に解説してきました。

将来、家族や自分が加齢によって自分の暮らしや財産の管理が十分にできなくなる事態はだれにでも起こりえます。

本人が終活を意識していても、いつ困難な事態に直面するか分かりません。身内としても、いざ現実的に財産を動かせない事態に直面するとサポートすら難しくなるのです。

そういう事態に備えて家族信託を組成することで、もしもの事態に備えることができます。

また、契約内容の設定次第で幅広く様々な形に対応することが可能です。

  • 預金口座が凍結されたら生活費を引き出せなくなる
  • 将来、不動産を売却して老後資金の足しにしたい
  • 有価証券などの資産を身内が売却しやすいように準備しておきたい
  • 終活の一環として、資産の管理を身内に任せたい

このような、さまざまな問題に対処できる方法となります。

両親の笑顔

ただし、法的な手続き、また税金の面などで知識や経験の必要な部分もあります。

家族信託は便利な制度ですが、組み立て方を間違えてしまうと不要な課税となるリスクもあり得るからです。

実際に手続きを進める際には、家族信託の経験が豊富な専門家のサポートを受けることをおすすめしたいと思います。

[関連記事]
家族信託に必要な費用を解説!費用を抑えるポイントとは?

家族信託をはじめるなら専門家へご相談を

専門家にご相談

現在、家族信託の相談を最も多く受けている専門家は司法書士です。

弁護士や税理士も相談を受けていますが、家族信託の統計によると、その7割が司法書士という結果があります。

第一の理由として、家族信託が長期間にわたるサポート関係になるという面で司法書士が選ばれているといえます。

家族信託は契約の締結が本当のスタート地点です。信託契約を締結すると、受託者にはさまざまな仕事が待っています。

  • 信託契約に従って財産を管理する
  • 帳簿の作成や貸借対照表等の計算書類の作成
  • 不動産の売買など受託者の立場で実施

これら信託法上の受託者の義務があり、負担も大きくなりがちです。

そのため家族信託の相談先としては、信託関連に精通し、長期にわたりサポートを受けやすい専門家へ依頼するという選択がよいでしょう。

弁護士は専門性に優れた士業ですが、事業範囲が幅広く、その専門性の高さゆえ費用の面で高めとなる傾向にあります。

また、税理士・会計士は当然のことながら税部門に秀でていますが、家族信託には成年後見制度・遺言・信託登記等の幅広い民事手続きの知識が必要です。

司法書士は弁護士・税理士・会計士よりも普段の業務から相続登記・遺言・成年後見をメインに取り扱っているため、家族信託に必要な専門知識量も豊富な傾向にあります。

以上のような理由から、家族信託については司法書士が選ばれています。

また、家族信託は契約締結で終わりではありません。家族信託の運用は5〜10年続くと言われています。
司法書士にご相談の際は、信託締結後も継続的なサポートを受けられるかどうかをぜひ確認していただきたいと思います。

当社でも初回のご相談を無料で承っており、相続に関する全般的なご相談から家族信託の実際の手続き、疑問や質問事項の説明、サポート段階まで承っております。

家族信託について知りたいことがありましたら、ぜひお気軽にご連絡ください。

家族信託をご検討の方へ

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