家族信託は「公正証書」が必要なのか。私文書では危険?

家族信託は「公正証書」が必要なのか。私文書では危険?

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信託契約書の作成パターンは主に2つあり、公正証書で作成するパターンと、私文書で作成するパターンがあります。

家族信託も信託契約になりますので信託法のルールに沿って作成することになるのですが、信託契約書の公正証書化までは求められていません(自己信託を除く)。
法的には公正証書で作成しなくても問題はない、という解釈になります。

ただし、信託契約書を公正証書で作成した方が良いケース、公正証書にすべきケースもあるのです。今回は「公正証書化」が必要なケースについてご紹介します。

公正証書で信託契約書を作成した方が良いケース

信託契約書を公正証書で作成したほうが良いケースとして、主に金融機関との取引が想定されているケースがあります。そして、将来の相続人が複数いる場合についても公正証書化をお勧めするケースです。この2つのケースについて確認しておきましょう。

[1]不動産や株式を信託する場合

例えば、信託財産に不動産がある場合など、金融機関とのやり取りが予定されている場合には公正証書で信託契約書を作成しましょう。

不動産に抵当権等の担保が設定されている場合や、受託者が信託不動産を担保に借入れを行う予定がある場合などが該当します。

金融機関が関連してくる場合には、金融機関から公正証書で信託契約書を作成することを義務付けられるケースがほとんどです。

これは、株式を信託する場合の証券会社の対応も同様で、公正証書で作成した契約書でないと金融機関の規定上、手続きができないからです。

公証人という第三者の目を通して作成された公正証書の方が、信用力も各段に高いという理由があるため、金融機関では公正証書での契約書が求められるのです。

[2]推定相続人が複数名いる場合

次に、将来の相続人が複数いる場合です。

例えば、父を委託者、長男を受託者、父の死亡後に受益権は長男に承継されるとするような信託契約の場合で、他の推定相続人(例えば次男、三男・・など)が存在するケースを考えましょう。

もし信託契約に納得をしていない人がいると、後日、「信託契約は無効」「当時、既に認知症になっていて、契約ができる程の意思能力はなかったはずだ」という主張をされたときに、私文書の契約だと信託契約の有効性(契約時点で意思能力を有していたこと)を証明するのが難しくなります。

このような場合には、公正証書で信託契約書を作成しておくと安心です。

公証人という第三者が、父の本人確認・意思確認をするので、契約当時も父が意思能力を有していたという客観的な証拠になりうるからです。

契約を公正証書で作成する意義とは

公正証書は公証役場で作成する書類であり、公証人が当事者の意思確認の上で作成します。引いては当事者の判断能力があることを認めた書類となるのです。

金融機関との関連でも、信託財産を動かす時だけでなく、信託口口座を作成する際にも金融機関で提示を求められることがあります。

また、信託財産を動かす時や相続など、家族信託がスタートして何年も経ってから提示を求められる可能性があります。

つまり公正証書での契約書は、家族信託のスタート段階を含めて、突然、必要になる可能性もあるのです。

しかも後から公正証書にしようとしても、公証役場では当事者の意思確認が行われるため、年数が経った時に、契約時点と同じ程度の判断能力が維持されているかどうか分かりません。

そのため公正証書はできるだけ早い段階で作成すべきだといえますし、家族同士の信託契約といっても最初から公正証書を作成しておく方が無難だといえます。

残念ながら、相続を機に兄弟間の仲が悪くなるケースは多いようです。信託契約をした当時と相続発生後では、環境・状況の変化もあるからでしょう。

そのため、契約時において兄弟間で信託契約の内容に納得されていたとしても、また、兄弟間の仲がけっして悪くなかったとしても、できる限り公正証書で作成することをおすすめします。

●参考記事:家族信託の危険性、実際にあったトラブルや失敗事例を司法書士が解説

私文書で公正証書を作成するケース

ここまで、公正証書で契約書を作成したほうが良いパターンについてご紹介しました。上記のパターン以外であれば、私文書で作成しても基本的には差し支えないといえます。

例えば、金銭のみを信託する場合や、既存の借入がなく、かつ、今後も借り入れ予定がない不動産(例えばご自宅等)を信託財産とする場合などです。

ただし、信託契約書を私文書で作成する場合であっても、できる限り専門家に作成を依頼した方が良いといえます。

というのも、家族信託は「家族ごとのオーダーメイド」と言われる通り、意外に検討事項や注意点が多いのです。

そして公証役場で作成する際、明らかに内容が誤っていれば公証人から指摘を受けることもあるかもしれませんが、家族ごとの問題点や詳細な部分までは公証人でも感知することができません。

また、ネット等で公開されている家族信託契約書のひな形やサンプルもありますが、実際にはサンプルを使ってそのまま契約書に出来るケース(そのまま使っても問題ないケース)はかなり少ないのではないでしょうか。

信託契約の最初から相談を受け、現在進行形で運用しているご家族を多数見守っている専門家としては、契約書のひな形やサンプルを拝見しながら心配になるケースが多々あります。

家族信託だからこそ、各家族ごとの資産や税務上の課題、10年単位で想定されるリスク、相続の時点で想定される問題点など、気を付けて作成すべき部分は多種多様なのです。

気づかないうちに課税対象となる文言を入れてしまっていたり、他の家族にとっては問題のない箇所であっても、あるご家族にとっては予期せぬ課税を受けて財産を減らしてしまうことも考えられます。

契約書の記載方法によっては法的に無効になる可能性もあるのです。

とくに税務の問題は一般の方にとって複雑な部分も多々あるかと思います。

仮に私文書で信託契約書を作成する際も、できるだけ専門家に依頼をして作成をした方が安心だといえるでしょう。

公正証書・私文書で作成するときの注意点について、こちらの記事でも解説しています。
家族信託の契約書を公正証書で作れない!私文書締結の際の注意点

法的な契約書だからこそ専門家へ相談を

今回は信託契約書を公正証書以外で作成しても問題ないかという点について解説しました。

結論としては、法律上は問題ないですが、関連する様々な手続きを進める上では、公正証書での作成を義務付けられることがあるので注意が必要です。

また、契約が無効となってしまうことや、予期せぬ課税を受けてしまうことを避けるため、私文書で信託契約書を作成できる場合であっても、できるだけ専門家に信託契約書の作成を依頼される方が良いといえるでしょう。

家族信託を成立させる上での詳しい流れや費用面について、こちらの記事でもご紹介していますのでぜひ参考にしてみてください。
家族信託とは?メリット・デメリット・費用をわかりやすく解説

この記事の監修者
鈴木 大崇(すずき ひろたか)

司法書士
鈴木 大崇(すずき ひろたか)

東京都江戸川区出身/令和2年司法書士登録 トリニティグループの家族信託部門にて、信託財産数億円に及ぶ家族信託から自社株式の家族信託まで、幅広い家族信託案件に対応している。

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