地主さんのご家庭などでは、先祖代々引き継いできた土地を直系の人物に承継させたいという意思が強く、「将来的には(まだ生まれていない)孫に財産を承継させたい!」という話をうかがうことがあります。

家族信託の仕組みを使うことで、将来、直系の子を受益者にしたいという希望は叶います。

これは、自身の相続人(子)の死亡の時期によっては、その配偶者に財産が渡ってしまったり、資産が分割される可能性もあるため、そのような事態を避けたいというのが理由です。

では、まだ生まれていない子を受益者とする家族信託の契約を作ることは可能なのでしょうか?

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結論!受益者になれます!

いきなり結論ですが、「まだ生まれていない子」も「受益者」となることができます。

例えば、受益者としたいものが現状では胎児である場合、そもそも懐胎すらしていない子である場合、将来設立される法人である場合などなど、受益者の定め方は信託契約において自由に設定することが可能です。

ただし、法令により財産権を享有できない者を受益者とする信託(例:父の年金受給権を信託して子を受益者とするなど)を除きます。

結論は上記のとおりですが、「まだ生まれていない子」を「受益者」にした場合、課税関係はどうなるのでしょうか?

以下、その点について解説していきます。

家族信託の「受益者」には誰がなれる?

信託法によれば、受益者となれる者に特段、制限はありません。

そもそも「受益者が現に存しない場合」を前提にした規定もあるため、まだ生まれていない子も受益者になれるのです。

ただし死者を新たな受益者にすることはできないと解されています。

【信託】まだ生まれていない子を受益者にする場合の注意点

受益者は信託財産からの利益を受ける権利を持つ一方で、受託者の信託事務に関する行為を監督する権限もあります。

そのため「受益者」は、利益を得るだけではない一定の役割を有しています。

《「受益者」が有する権限の例》

  • 受託者の権限違反行為の取消権
  • 受託者の利益相反行為に関する取消権
  • 受託者に対する信託事務等の報告を求める権利
  • 受託者の解任権
  • 新受託者の選任権

このように信託法上で様々な権限が認められているのです。

しかし、まだ生まれていない子を受益者にする場合は、「受益者が現に存しない場合」に該当するため、上記のように受託者を監視する人がいません。

この場合には、受益者不在の間に受託者の監視を行う権限を有する、「信託管理人」を選任して対応することになります。

《信託管理人》

受益者不在の間に受託者の監視を行う権限を有する信託管理人は、

  • 受益者が現に存しない場合に、受益者の権利に関する一切の行為をする権限を有する
  • 受益者がいない代わりに信託管理人が受託者を監視する

このような役割を負うことができます。

まだ生まれていない子を受益者にするような「受益者が現に存しない場合」のケースが想定される場合は、信託管理人となるべき人物を指定しておいたり、指定する方法を定めておくことで対応することになります。

また、受託者の仕事を監督する目的で、別途、「信託監督人」を設置することも可能です。

【税務】まだ生まれていない子を受益者にする場合の注意点

次に、家族信託で「受益者が現に存しない場合」の税務上の取扱いについて検討しましょう。まず、信託税務は原則として「受益者が課税対象者」です。

一般的な家族信託の「高齢親=委託者=受益者」であれば、利益を得る人物(もともとの資産保有者)が課税されます。

では、「まだ生まれていない子」の場合はどうなるのでしょうか。下記を例に、課税関係について確認しておきましょう。

法解釈と税務上の解釈が異なることも多々あるので要注意です。

《例》

  • 委託者(兼受益者):父
  • 受託者:子
  • 父の「死亡後」、将来生まれてくる孫:受益者

まず、上述の通り、信託税務は原則として受益者が課税対象者です。

しかし、「受益者が現に存しない場合(=お父さんの死亡後)」は、課税対象者がいないので、この場合は課税対象者は受託者である子になります。

そして、「受益者が現に存しない場合」、その信託は法人課税信託とされます。

受託者が個人であっても、所税法上及び法人税法上の「受託法人」とみなされ、所得税法上及び法人税法上は「会社」として取り扱われます。

  • その信託の「受益者が現に存しない場合」、法人課税信託となる
  • 受託者が個人であっても「受託法人(会社)」とみなされる
  • 受託者は「会社」として信託財産の贈与があったとみなされ、法人税法上の受贈益課税がなされる
  • 受託者は「個人」として相続税法上、遺贈があったとみなされ相続税が課税される

すなわち、税務上、受託者である子は個人としての人格と、会社としての人格の二重人格になるのです。

その結果、受託者である子は「会社」として法人税法上の受贈益課税がなされ、さらに「個人」としては相続税法上、遺贈があったとみなされ相続税が課税されます。

以上のとおり、「受益者が現に存しない場合」に該当する場合、課税関係が複雑となり、また、税務上も有利であるとは言えない場合が多くなります。

そのため、受益者が現に存しない状況をなるべく作らないように、信託組成時に工夫をする必要があります。

《受益者代理人》

受益者代理人とは、文字通り「受益者」を「代理する者」です。

信託法上は、「代理する受益者の権利に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有する者」と規定されています。

ここまで解説の通り、家族信託では「まだ生まれていない子」や、「幼い子ども」も受益者とすることが可能であるため、判断が必要な時に備えて受益者の代理人を置けるように備えることができます。

まとめ

以上のとおり、将来生まれてくる孫を受益者としたい!という信託を組むことはできますが、信託の組成方法や税務上で注意すべき点が多くなります。

孫が実際に生まれ、成人するまでの間、資産承継に不安があるのであれば受託者を監督する「信託管理人」を設置したり、「受託者」そのものを複数人とする方法もあります。

財産の運営方法にはさまざまな対策法があり、家族信託の組成方法を工夫することも可能です。

そのため、このような家族信託を検討している場合には、家族信託に強い専門家にぜひご相談ください。

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