家族が認知症患者の預金を引き出すための4つの方法

家族が認知症患者の預金を引き出すための4つの方法

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今、認知症患者の方の財産管理の問題が社会問題化しています。

重い認知症を患ってご自身で財産の管理をすることができなくなってしまうと、たとえご家族であっても、ご本人名義の預金を引き出せないという問題が生じているのです。

このような問題は、預金口座を管理する金融機関の側でも解決策が議論されており、令和3年には、全国銀行協会(※)から「預金者ご本人の意思確認ができない場合における預金の引き出しに関するご案内資料」が公表されるに至りました。

※ 全国のほとんどの銀行が加盟している業界団体のこと

この資料や、その他の全国銀行協会の発表を総合すると、ご家族が認知症の患者の方の預金を引き出すことを認められる場合があることが分かります。

この記事では、全国銀行協会が発表した資料や方針を踏まえ、ご家族が認知症の患者の方の預金を管理するための方法について、その全体像を解説していきます。

家族が代わりに預金を引き出すためにできること

重い認知症を患うと、ご自身で銀行預金を引き出す手続きをすることなどが困難になります。

その一方で、認知症の患者の方も医療費、介護費、生活費などのためにお金が必要になるため、ご本人に代わってご家族などが銀行預金を管理していく仕組みが必要です。

多くのご家庭では、銀行のキャッシュカードをご家族が預かって事実上管理をされているというケースが見受けられますが、この方法は、お勧めできません。

お勧めできない理由については、過去記事(銀行の代理人カードと家族信託どっちがいい?)でご説明しています。

では、ご家族がご本人のキャッシュカードを預かる以外の方法には、どのようなものがあるのでしょうか?

成年後見制度を利用する方法

認知症などの精神障害により、財産の管理が困難になった方の代理人を裁判所が関与して選任する制度が成年後見制度です。

成年後見制度を利用すれば、家庭裁判所が、認知症患者の方に代り財産管理をする人(成年後見人)を選任するため、以後、成年後見人が預金の引き出しなどを行うことができるようになります。

成年後見人には、専門家(司法書士等)が就任する場合と、家族が就任する場合がありますが、いずれの場合も、財産管理の状況を毎年裁判所に報告しなければいけなかったり、手続きを行うのに時間がかかったりと、デメリットが多く、利用を避ける方が多いのが現状です。

内閣府の推計(※)によると、日本には、約600万人の認知症患者が存在すると言われていますが、実際に成年後見制度を利用している人は、20万人程度しかいません。 この数字からも、多くの方が成年後見制度の利用を避けているということが見て取れるでしょう。

※ 参照:内閣府発行 平成28年版高齢社会白書(概要版)「第1章 高齢化の状況(第2節 3)」

全国銀行協会が発表した指針に基づく方法

成年後見制度の利用を避ける方が多い現状を踏まえ、全国銀行協会は、認知症の患者の方の預金をそのご家族が代わりに引き出すなどの手続きをする場合について、一定の指針を打ち出しました。

その指針には、次のような要件を満たす場合には、預金口座の名義人の方が認知症で意思表示ができない状態であったとしても、ご家族が代わりに預金を引き出すことができる旨が示されています。

要件1:ご本人が認知症などの診断を受けていること
※ この要件を満たしていることが分かる書類として、医師の診断書の提出が必要

要件2:引き出す預金が、ご本人のために利用されることが書類などによってわかること
※ この要件を満たしていることが分かる書類として、介護施設の請求書等の提出が必要

要件3:預金を引き出そうとする人が、ご本人のご家族であることが証明できること
※ 家族関係が判明する戸籍の提出が必要

このような要件を満たしていれば、銀行の判断でご家族による預金の引き出しを認めてもよいということになっています。

しかし、最終的な判断は、あくまで銀行(具体的には支店長など)に委ねられていますので、この要件を満たしていれば確実に預金が下ろせると保証されているわけではありません。

また、この方法は、継続的に家族が預金を管理することは想定していないため、最初の1回は、預金を引き出すことができたとしても2回目以降の引き出しには、成年後見制度を利用せざるを得なくなることも想定されます。

この全国銀行協会が発表した指針は、あくまで緊急の場合の特例として運用されるため、決して、「この方法があるから安心!」というわけではないことに注意が必要です。

任意代理人を金融機関に届け出ておく方法

成年後見人を選任する手続きには、非常に手間とお金と時間がかかってしまいますし、全国銀行協会の指針に基づく管理は、特例的な制度であるため、もっと簡単に継続的にご家族がご本人の財産を管理する仕組みが求められています。

一部の金融機関では、そのような需要にこたえるべく、任意代理人の届け出制度を設けています。

金融機関によって、その内容は様々ですが、一般的な任意代理人の届け出制度をご紹介します。

手続きを利用するためには、まず、ご本人がお元気なうちに家族の中の一人を代理人として届け出ておきます。

ご本人と代理人となるご家族が一緒に金融機関の窓口に出向き、手続きを行う必要があります。

任意代理人を届けておけば、ご本人が認知症になった場合に、代理人の方が代わりに預金を引き出したり、定期預金を解約したりすることができるようになります。

ただし、この制度は金融機関によって、取り扱いが無かったり、制度の内容が大きく異なったりしますので、ご利用の金融機関に問い合わせるか、適切な金融機関の情報を知っている司法書士などの専門家に相談することをお勧めします。

家族信託を利用する方法

任意代理人制度は、金融機関ごとに取り扱いがバラバラであることに加え、取り扱いがそもそもない金融機関がほとんどです。

金融機関や家庭裁判所の都合に左右されず、ご家族の中だけで財産の管理の仕組みを作る方法として「家族信託」という方法があります。

家族信託とは、認知症を患う可能性のある方から、信頼できる家族(子ども等)に対して、財産を託しておく制度です。

信託契約という契約書に基づいて、財産の管理の方法を取り決めますので、ご家族の中だけで財産管理の仕組みを作るのに非常に有効です。

また、家族信託は、銀行預金だけでなく、不動産も対象とすることができます。

認知症を発症してしまうと、不動産の売却や管理が困難になることが多いため、そのような場合に備えて家族信託を行う方が増えています。

家族信託の最大のメリットは、銀行や裁判所に対する特別な手続きを経ずとも、家族信託の手続きを行えることです。

認知症になる可能性のある人と財産を託される人との間で、信託契約を締結し、預けることとしたお金を、預け先の人の口座へ入金しておく手続きを行います。

家族信託を行う場合の注意点は、専門性が非常に高いことです。

信託契約書という契約書を作成するためには、信託法という法律や、税金に関する知識も必要になります。

専門家の力を借りずに契約書の作成などを行うことは、なかなか難しく、また、後々トラブルになるリスクがあると言えるでしょう。

家族信託を行う場合には、必ず、家族信託を取り扱っている司法書士などの専門家に相談をすることをお勧めします。

まとめ

この記事でご紹介した通り、重い認知症になってしまった後にできることは非常に限られています。

いざというときに、預金が使えなくなってしまう。ということが無いように、あらかじめご家族内で話し合い、専門家に相談するようにしましょう。

この記事の監修者
梶原 隆央(かじわら たかひさ)

司法書士
梶原 隆央(かじわら たかひさ)

神奈川県出身/平成21年司法書士資格取得 トリニティグループの信託部門にて、実家信託から信託財産数億円に及ぶ信託、自社株式の信託等、幅広く信託案件に対応。

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