【完全版】成年後見制度とは?司法書士がわかりやすく制度を解説

【完全版】成年後見制度とは?司法書士がわかりやすく制度を解説

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認知症を発症し判断能力が低下すると、だれでも自身の生活まわりや財産の管理が難しくなってきます。

預貯金の管理や支払いなども困難になることがあり、状況によっては金融機関に口座を凍結されることもあるのです。

認知症患者が急増する超高齢社会である日本では、この問題は大きな社会問題となり家族の負担となっています。

そのような問題を解決する方法として「成年後見制度」という制度があります。この記事では成年後見制度の概要と利用方法、そして利用する際の問題点について解説します。

成年後見制度とは?

成年後見制度とは、認知症・知的障害・精神障害などによって判断能力を喪失してしまった人の援助者を選び、法律的に支援する制度です。

家庭裁判所に申し立てて成年後見制度を利用すると、本人の代わりに「後見人」が代理権をもって法的な行為や財産の管理を行うことになります。

預金口座から自分のお金を払い出す行為も本人に限定された法律行為に該当するため、認知症などで判断能力が低下すると、金融機関としては本人の意思確認ができないことから取引不可と判断するのです。

そのため法律行為や財産管理をする目的で後見人を付けることにより、預金管理や手続きが可能となります。

例えば身寄りのない高齢者のサポートのため、利用先の介護事業所等が本人のために家庭裁判所に申し立てるケースもあり、成年後見制度は認知症の高齢者にとって必要な制度となっているのです。

成年後見制度はどのようなきっかけで利用されている?

成年後見制度を利用するきっかけとして最も多い理由が、「預貯金等の管理・解約」です。

裁判所が公表しているデータ(※)によれば、成年後見制度を申立てた方のうち約4割弱が、預貯金等の管理・解約をする必要が生じたことをきっかけに成年後見制度を利用しています。 (※参照:最高裁判所事務総局家庭局 成年後見関係事件の概況)

認知症の高齢者の家族が本人の口座から介護費用などを引き出そうとしても、銀行は本人でなければ引き出しに応じません。また、本人が窓口に来た際も、判断能力や意思の確認を行います。

つまり、認知症で意思能力を喪失してしまった場合、金融機関としては資金を凍結せざるを得なくなるのです。

しかし、年金などの入金もありますし、生活費の払い出しや介護費の支払いもあるでしょう。

この状況を打破するためには、成年後見制度を利用して、本人の法律上の代理人である後見人を家庭裁判所に選任してもらい、本人の代理で預金支払いを行う方法しかありません。

このほか、預金の管理以外にも、不動産の売却や相続手続き、保険金の請求など、各種手続きができなくなってしまったという理由から、成年後見制度を利用する傾向にあります。

詳しくはこちらの記事「成年後見制度を利用する理由で一番多いのは○○だった。」もご参照ください。

成年後見制度ができるまで

成年後見制度は、旧「禁治産制度(きんちさんせいど)」という制度が改正されて登場しました。

旧民法から続いた禁治産制度は弱者を守る制度でしたが、認定されると戸籍に登記され、差別的なイメージもあるなどの理由で、利用を避けられやすいという問題点がありました。

日本の高齢者の増加や認知症患者の増加に加え、障がい者の権利保護の考え方が社会に浸透してきたこともあり、1999年12月8日の民法改正(2000年4月1日施行)によって「成年後見制度」に名称や内容が改められたのです。

成年後見の種類

成年後見制度には2種類あり、「法定後見制度」と「任意後見制度」に分けられます。

法定後見制は、認知症などによって財産管理が難しくなる状況を迎えてから家庭裁判所に申し立てる制度です。

一方、任意後見制度とは、本人がまだ元気なうちに後見人となる人を契約で定めておく制度で、任意後見制度の方が本人の意思を反映しやすく、比較的自由度も高い制度と言えます。

法定後見制度は、さらに、「後見」「保佐」「補助」の3種類に分かれます。ここからこの3種類について解説しましょう。

後見

「後見」は、最も手厚い支援が必要な重度の認知症患者や精神障害を抱えた方のための制度です。

後見が開始すると、本人は日常生活に必要なもの以外のすべての法律行為が行えなくなります。

本人が行った法律行為は後見人が取り消すことができるので、訪問販売や通販などでご本人が必要のないものを買ってしまった場合でも、それが日常生活に関係のない物である場合には、後からキャンセルすることが可能となります。

保佐

「保佐」は中程度の支援が必要な方のための制度です。保佐の場合には、後見人ではなく、保佐人が選任され本人を支援します。

保佐が開始すると、重要な行為として法律で定められた法律行為(不動産の売却や借金をする行為等)を保佐人の同意なく行うことができなくなります。

また、重要な法律行為に限って、保佐人が取り消すことができます。

補助

「補助」は軽度の支援で足りる方のための制度です。補助の場合には、補助人が選任され、本人を支援します。

予め定められた特定の法律行為についてのみ、補助人が支援を行います。

後見制度は、なるべく本人の意思が尊重されるよう、本人の能力に応じてサポートする代理人の介入度合いを調整することができる構造になっています。

法定後見制度はどのように利用するのか?

法定後見制度の利用は以下のような流れで行います。

① 家庭裁判所に対して、後見人の選任を申し立てる

後見人の選任申立ての手続きは、通常、4親等内の親族から行います。

申立書などの必要書類をそろえて家庭裁判所に申立てを行い、その際に後見人の候補者を立てることができます。

申立人が自らを候補者として申立てを行うこともできますし、信頼のできる専門家(司法書士や弁護士など)を候補者とすることもできます。

ただし、この候補者が選任されるかどうかは家庭裁判所が判断し、例えば、親族が後見人になることを希望していた場合でも、他の親族がそれに反対していれば候補者が後見人になることはありません。

候補者がいない場合や、候補者として挙げられた方が適任ではないと裁判所が考えた場合には、司法書士や弁護士が後見人に選任されます。

実際に後見人として選ばれる職種の割合は次の通りです。弁護士や司法書士といった専門家が選任されるケースのほうが圧倒的多数となっています。

後見人の内訳

※成年後見関係事件の概況―令和2年1月~12月― 最高裁判所事務総局家庭局 参照

② 選ばれた成年後見人が財産目録を作成し整理する

後見人に選ばれた人の最初の仕事は、本人の財産を把握して、管理できる状態にすることです。

本人が保有している銀行預金や不動産、保険など財産の一切を把握し、財産目録を作成します。また、銀行預金は管理しやすいよう、口座を一本化するような場合もあります。

③ 後見人は財産の管理を行い、毎年報告する義務がある

後見制度が開始すると、以後、財産の管理は後見人が行います。

金融機関によって細かいルールは異なりますが、ご家族はもちろん、本人でも、預金を引き出したりすることはできなくなります。

後見人は財産の管理の結果や本人の収支の状況などを所定の書式にまとめて家庭裁判所に提出します。

その際に、後見人が報酬を求めた場合、家庭裁判所の決定した額の報酬を受け取ることができます。

親族が後見人になった場合は後見人報酬を受け取らないというケースにすることも出来ますが、専門家が後見人になる場合、この後見報酬は必ず必要となるのです。

成年後見制度の現状

成年後見制度は超高齢社会の日本において、非常に重要な役割を期待されています。

2025年には、認知症患者が730万人を超えると推計されているため、その方々の支援を行う受け皿が必要になります。

しかし、成年後見制度の利用者数は、令和2年時点で17万4,680人です。

同年の認知症患者は602万人とされているため、成年後見制度利用者は3%にも届かない数にとどまっています。広く利用されているとは言い難い状況ですね。

成年後見制度の普及を妨げる要因として、制度の使いづらさが指摘されています。

成年後見制度の利用を開始すると、基本的に亡くなるまで一生利用し続けなければならず、また、後見人に対して支払う報酬も高額になります。

こういった部分が成年後見制度の利用が避けられる大きな要因となっているようです。

政府はそのような状況を改善すべく、成年後見制度の抜本的な改正を検討し始めています。2021年末、成年後見制度の利用を促進する2022年度からの5カ年計画案を発表しました。

制度を短期間のみ利用することを可能にしたり、途中で後見人を交代したりすることができるようにする改正が検討されています。

現状としては使い勝手の面で問題があるといえますが、今後の展開に注目が集まっています。

成年後見制度を利用する際の3つのデメリット

このように成年後見制度は、認知症などにより判断能力が低下してしまった人の生活と財産を保護することを目的として運用されています。

後見を受ける本人の財産が極めて少ない場合には親族の後見人のみで後見がスタートする場合もありますが、基本的には裁判所や専門家がかかわることになるため一般的に使いづらさやデメリットと感じる点も多いのが実情です。

必要な制度ではあるものの、利用する場合には以下のようなデメリット面が想定されます。

《成年後見制度のデメリット面》

[1]後見を受けている人の生活や財産に関して裁判所の監督下となり、専門家の後見人・後見監督人が介入する

[2]後見事務・後見人に対する報酬(費用)が発生する

[3]相続税対策や資産運用などができなくなる

制度の利用が始まると基本的に途中で停止することは出来ませんので、これらのデメリットについて見込んでおく必要があるといえます。

[1]専門家の後見人・後見監督人が入る点について

家庭裁判所により後見人が選任されて後見が開始すると、それまで滞っていた預金の払い戻し等が可能となります。

後見人には希望に応じて親族が認定されることもあれば、弁護士や司法書士といった専門家が就任することもあります。統計的には、全体の8割が専門家の後見人です。

親族が後見人を希望して認定された場合でも、後見人を監督する立場として「後見監督人」が選任されるケースもあります。

つまり、後見制度を利用する場合には後見人または後見監督人として、弁護士・司法書士などの専門家が関与する可能性が高くなるのです。

[2] 後見事務・後見人に対する報酬(費用)が発生する

認知症の場合は基本的に本人が亡くなるまで、後見人を通して財産の処分を行うこととなります。

本人のための支出についても、家族が生活費を立て替えた場合は後見人に対して領収書を提示して請求しなければなりません。

専門家が後見人や後見監督人につくと、報酬の支払いも発生します。これらが長年継続することになるのです。

支払いは後見を受けている本人の財産から支出しますが、決して少なくない報酬の支払いが続くため、この点でも負担が大きいといえるでしょう。

報酬についてはこちらでも解説しています
【完全版】成年後見制度の費用・後見人への毎月の報酬について解説

専門家の後見人は後見制度を厳格に運用する責務があり、家庭裁判所も管理を担うため、一般の感覚よりも厳しい管理内容となることを事前に知っておく必要があるといえます。

[3]相続税対策や資産運用などができなくなる

家庭裁判所は 「本人の財産保護の観点」からその監督を行うため、親族にとっては以下のような点が負担になることがあります。

  • 同居の親族と共同生活をしている場合でも生活費の負担割合を明確にしなければならない。
  • 本人の財産を他の親族の利益のために使用・活用することができない。
  • 不動産投資や株式投資など、積極的な資産運用ができなくなる。
  • 相続税対策としての不動産購入や保険の加入などができなくなる。

後見が始まると、原則的に本人の財産は本人のためにしか使用できなくなります。

もし親族が本人の収入により生活を賄っていた場合、後見が始まると自らの生活費を工面する必要が出てきます。

例外的に、扶養義務がある場合など、親族の生活費を本人の財産から負担して問題ないものと判断するケースもありますが、その金額は「相当の範囲」に制限されます。

本人が潤沢な財産を持っていたとしても、その財産を活用して親族のために活用することは原則、認められていません。

また、資産運用していた場合でも、後見人は本人の資産の積極的な運用はできる限り控え、預金など、少なくとも元本が減少するリスクのない形で資産を保持することになるのです。

したがって、後見開始後は上記のようないわゆる資産運用はできなくなり、また、すでに収益目的で所持している不動産や有価証券は徐々に現金などに換価されていくことになります。

相続税対策についても本人の直接の利益にならないと判断される傾向があります。

相続税対策が途中の段階である場合などは、後見制度の利用を開始するか慎重に検討する必要があるといえるでしょう。

こちらの記事でも成年後見制度の利用前に押さえておきたいポイントを解説しています
成年後見制度のデメリット3つ

誰にとっても課題となる認知症対策

認知症などの判断能力の低下は、高齢になると誰もが抱えるリスクです。

今は大丈夫であっても将来は適切な判断ができなくなるかもしれません。万が一に備えて準備しておくことは大変重要な課題だといえます。

そのような中、成年後見制度は一定の優れた機能を持っていますが、デメリットをよく確認した上での検討が必要だといえます。

例えば家族信託であれば、本人の判断能力のある内に、自身の資産をどうすべきか、だれに依頼して手続きを代行してもらうのかを指定しておくことができます。

預金だけでなく、相続についても指定が可能となりますので、本人の意思・判断能力がしっかりしている内に希望や意向を反映させることができるのです。

しかも、資産の管理を指定された受託者が行うため、希望に応じて家族の中でお金の管理を取り扱うことができます。

例えば持ち家を売却して老人ホームへの入所資金にするなど、希望に合わせた資産の管理・処分が可能となるのです。

ここまでの内容を参考に、家族とってどのような対策が有効か、どのような選択肢があるのか、ぜひ検討をしてみてください。

●参考記事:家族信託と成年後見制度、どちらを使うべき?

カテゴリー: 成年後見制度

この記事の監修者
梶原 隆央(かじわら たかひさ)

司法書士
梶原 隆央(かじわら たかひさ)

神奈川県出身/平成21年司法書士資格取得 トリニティグループの信託部門にて、実家信託から信託財産数億円に及ぶ信託、自社株式の信託等、幅広く信託案件に対応。

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