家族信託を計画しているとき、株式や投資信託などを信託財産にしたいと思っている方も多いのではないでしょうか。

その場合には証券会社での手続きが必要となりますが、どのような手順が必要なのでしょう。

この記事では、上場株式や投資信託などといった金融商品を家族信託する場合の証券会社での手続きや注意点などについて解説します。

なお、この記事で説明する株式とは、投資目的で保有する上場株式を意味します。

家族信託について詳しく知りたい方や、家族信託のメリット・デメリット・費用について調べたい場合は、こちらの記事をご参照ください。

要約

  • 株式や投資信託なども信託財産にできる
  • 銀行の信託口口座とは別に、証券会社での信託口口座も開設する必要がある
  • 信託契約書は、公正証書で作成する必要がある
  • 株式や投資信託を信託財産にする場合の注意点もいくつかある
  • ①株式の保有だけなら成年後見制度でも十分な可能性も
  • ②管理運用できる受託者がいるかの事前確認が必須
  • ③投資信託は信託口口座を作成した証券会社でも取り扱いがある商品でないと移管できない
  • 証券会社で信託口口座を作るために必要な要件を満たせるよう事前確認が重要
  • 最適な方法を選択するため全ての財産を確認し、お早めに専門家へご相談を

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株式や投資信託を信託財産にできる?信託するメリットは?

老後の生活資金のために、株式や金融商品を保有されている方もいらっしゃると思います。株式や投資信託などの金融商品から定期的に収入があれば、老後の生活についても安心できますね。

しかし、認知症などになってしまった場合、自分で株式や投資信託を管理し、適切なタイミングで売買するなどの判断をすることができなくなってしまいます。

判断能力が衰える前に、株式や投資信託を売却して預金に換えておけば、いざお金が必要になったときにはいいかもしれませんが、配当金が受け取れるなどの金融商品特有のメリットがなくなってしまいます。

金融商品を保有しながら、いざというときにはその処分などもスムーズにできる方法として「家族信託」が有効となるでしょう。

家族信託の信託財産には特に制限があるわけではなく、株式や投資信託といった金融商品を信託することは可能です。

家族信託を使えば自分の判断能力が衰えてからも運用を続けることができ、信頼できる家族に株式や投資信託の運用や管理を託しつつ、配当などは自らが受け取ることが可能となります。

株式を信託財産にする際の手続きについては下記記事をご参照ください。
→『上場株式も家族信託できる!実際の手続きや注意点を司法書士が解説

証券会社で信託口口座を開設する手順

上場株式や投資信託といった金融商品を信託財産にする場合には、証券会社で信託財産を預かるための信託口口座を開設する必要があります。

預貯金用の銀行等の信託口口座とは別で、証券会社での信託口口座の開設が必要です。

ただし、信託口口座を取り扱っている証券会社は限られており、大手の証券会社の中では野村証券、大和証券、楽天証券などで開設が可能となっています。

証券会社で信託口口座を開設する手順は基本的に以下の通りです。確認していきましょう。

(1)信託契約の内容や取扱商品について証券会社に確認

証券会社で信託口口座を開設する予定がある場合は、あらかじめ締結する予定の家族信託契約の内容について、証券会社に照会して問題がないかを確認しておきましょう。

証券会社では、規定の条件を満たしている信託契約書を口座開設の条件としているケースが多く、契約書は公正証書での作成が必要です。

そのため契約内容について事前に証券会社に相談をしておく必要があります。

また、投資信託商品や株式など商品によっては開設先での取扱いがなかったり、信託に関しては取扱い商品に限りのある場合があり、そのまま移すことができないケースもあります。

保有株式のうち、信託口口座にどの商品を移すことができるか、事前に証券会社に確認をしておきましょう。

(2)信託契約書を公正証書で作成

家族信託の契約自体は私文書であっても問題はないのですが、証券会社などの金融機関との取引がある場合、一般的には公正証書で作成された信託契約書が必要となります。

公正証書で信託契約書が作成されていることで、信託契約が法的に問題なく有効であることや、委託者の本人確認や信託契約についての意思能力について確かであることを担保することができるからです。

証券会社に事前に照会して認められた契約内容で信託契約書の草案を用意し、公証役場で公正証書にしてもらいましょう。

また、家族信託の運営や相続の際にトラブルが想定される場合等も含めて、信託契約書はできるだけ公正証書での作成をお勧めします。

(3)信託口口座の開設

公正証書の信託契約書ができたら、必要な書類をそろえて委託者及び受託者が証券会社で口座開設の申し込みを行います。

証券会社によりますが

  • 委託者・受託者の本人確認書類
  • 公正証書による信託契約書

これらは最低でも必要となりますので、必要な書類を確認しておきましょう。

また、株式や投資信託などを管理する信託口口座だけでなく、同一支店内で「委託者個人の証券口座」や「受託者個人の証券口座」の開設を要件としている場合もあります。

無事に信託口口座が開設できたら、委託者の株式や有価証券のうち信託財産としたいものを信託口口座に移す手続きを行います。

上場株式や投資信託などを信託する場合の信託契約書の内容

上場株式や投資信託などの金融商品を信託財産にする場合については、上述の通り、信託契約の内容は証券会社で定める要件を満たす必要があります。

その要件について少し掘り下げてみましょう。

(1)証券会社では「委託者=受益者」「個人」であることが要件

家族信託契約では、財産を託す「委託者」と財産の収益を受け取る「受益者」については、同一人にすることも別人にすることも法的には可能です。実際には、ほとんどの場合に初めは委託者イコール受益者という形の契約をします。

ただし証券会社の口座開設にあたっては、「委託者と受益者が同一人」であることが基本的な要件となっています。

また、この場合の「委託者兼受益者」について規定があり

  • 委託者兼受益者は「日本国内に住んでいる」「個人」「一名」であること
  • 委託者兼受益者が亡くなった時点で、信託契約は終了すること
  • 信託財産の具体的な記載

このような内容が求められます。

家族信託の契約では、委託者兼受益者が亡くなった場合でも、受益者の地位を引き継ぐ人を指定して信託を継続することが可能ですが、証券会社との取引がある場合は、基本的に受益権が引き継がれる契約にすることは認められない場合がほとんどです。

また、信託財産(株式・投資信託商品等)については、証券会社指定の記載方法に沿って具体的に記載する必要があります。

(2)受託者の要件について

信託財産の管理運用を託される立場の「受託者」は、法的には法人が就くことも可能で、複数人を指定することも可能です。

ただし証券会社との取引では

  • 受託者は「日本国内に住んでいる」「個人」であること
  • 受託者が配偶者や子どもなどの一定の範囲内の親族であること
  • 受託者の地位を引き継ぐ「後継受託者」の指定
  • 受託者の権限(株式や投資信託等についての投資運用の権限)の明記

このような内容が求められるケースが多くなります。

証券会社の規定によっては2親等内までの親族(親子、配偶者、きょうだい)に限定している場合もあります。

また、受託者の権限として、株式や投資信託等についてどのような金融商品での運用を認めるのか、投資運用の権限などについて信託契約の中で明確にしておく必要があります。

(3)信託契約書の作成者について

信託契約書は専門家が作成しなければならないという決まりがあるわけではありません。

しかし証券会社で口座開設のために提出する信託契約書は、弁護士や司法書士などの専門家が作成したものであることを求められる可能性が高いでしょう。

家族信託の実績があり信頼できる専門家を探して依頼することをお勧めします。

ここまでの信託口口座の作成方法については、下記記事でも解説しています。

家族信託を利用する場合、信託法で受託者は「分別管理義務」を負い、信託された財産と個人の財産とを分別して管理しなければならないとされています。この記事では信託口口座の特徴や口座の開設方法などについてご紹介しますので参考にして下さい。
家族信託の口座(信託口口座)のつくり方について解説

株式や投資信託を信託する場合の注意点

株式や投資信託を信託財産にする場合には、どのような点に注意すればよいでしょうか。

(1)株式の保有だけなら成年後見制度の方が適しているケースも

株式や投資信託等の金融商品を家族信託しようとする目的は、自分が認知症などで判断能力を失った場合に備えるためというケースが多いでしょう。

ただし、単に株式や投資信託等の金融商品の保有のみを想定している場合は、必ずしも家族信託契約が必要になるとは限りません。

あえて家族信託契約をする必要性は低いケースもあります。

(2)株式等の管理運用できる受託者がいるか

家族信託契約では、財産の管理・運用を託すことができる信頼できる家族がいるかどうかが重要です。

そして、株式等を信託財産にする場合には、受託者が信頼できる人柄であることに加え、資産を管理、運用する能力や金融リテラシーがあるかどうかも慎重に判断する必要があります。

株式等の運用には必ずリスクのある取引も発生するため、これまで運用経験等が全くない場合や、知識が乏しい場合には受託者として適任者であるとは限りません。

そのため、受託者を選ぶときには、慎重に判断する必要があります。

(3)投資信託は移管できない場合がある

証券会社で信託口口座を作った場合、その口座に他の証券会社で預かっている委託者の株式を移す(移管する)ことができます。

ただし、投資信託などの場合には、信託口口座を作った証券会社でも取り扱いをしている商品でなければ移管することができません。

移管したい投資信託などの金融商品については、信託口口座を作る証券会社でも取り扱いがあるのか前もって確認しておきましょう。

証券会社を選ぶときのポイント

次に、信託口口座を開設する証券会社を選ぶときのポイントについてご紹介します。

(1)口座開設の要件をクリアできるか

口座開設を希望する証券会社があっても、その会社の口座開設の要件を満たしていなければ口座開設することはできないため、どのような要件があるかを確認しておく必要があります。

証券会社によっては、最低預入金額を定めており、その金額以上を預けることを条件に信託口口座の開設を認めている場合もあります。

それ以外にも各社で口座開設の要件があるので、自分が要件を満たしているかを事前に確認しておきましょう。

(2)手数料などが妥当な金額か

家族信託に限った話ではありませんが、証券会社で株式の売買など各種の取引をすれば手数料が発生します。

証券会社には、インターネットでの取引のみを行うインターネット証券会社と、担当者との対面取引もすることができる総合証券会社があります。

証券会社によって手数料は異なるため、納得のいく料金体系になっているか、希望の商品を購入し売却できるかどうかなどの特徴を確認したうえで証券会社を選ぶとよいでしょう。

保有株式の大きさによっては、担当者が付いてくれる総合証券の方が適している場合があります。委託者の保有状況や希望の取引形態によって、口座開設する証券会社を選びましょう。

(3)信託契約の目的を実現するのに適した商品を取り扱っているか

証券会社によって取り扱っている金融商品の種類やラインナップは異なります。

国内上場株式については、どの証券会社でも取り扱っていますが、投資信託や社債、人気の米国株などの金融商品については、証券会社によって取り扱いに差があります。

家族信託契約の目的を実現するために適した商品が十分にあるかどうかも確認したうえで証券会社を選ぶとよいでしょう。

認知症になって判断能力が低下し、それを金融機関に知られると預金が引き出せなくなる、不動産の売買などの法的手続きもできなくなる、等々、大きなリスクがあることはよく知られています。では、株や証券の売買についてはどうなるのでしょうか?今回は、証券会社で信託を利用する場合の取り扱い方法や注意点について解説します。
認知症患者の口座凍結問題〜保有株式の売却もできなくなる?

まとめ

株式などを信託財産にする場合には、証券会社で信託口口座を作る必要があります。

信託口口座を作るためには、証券会社が規定する要件を満たしている必要があるため、事前の相談や確認が重要です。

信託口口座を開設できる証券会社は徐々に増えています。しっかりと調査をして、自分の要望に合った証券会社を見つけましょう。

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