【完全版】家族信託の契約書の書き方や注意点を司法書士が解説

【完全版】家族信託の契約書の書き方や注意点を司法書士が解説

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家族信託の契約書はどのように作るのでしょうか。

個人でも作れるものなのかどうか、また、専門家に依頼した場合のメリットや費用の面について解説します。

家族信託の契約書とは?

家族信託とは信託契約の一つで、財産の処分や管理の権限を、家族に依頼する契約を指します。

家族信託をしておけば、親や自分が亡くなった後はもちろん、認知症などで判断能力を欠いてしまった場合でも、子供や孫に財産を管理、運用してもらうことができるのです。

家族信託で契約書がなぜ必要なのか

家族信託は家族間の取り決めであることから、立派な契約書が必要なのだろうかと考える人もいるかもしれません。

確かに、家族信託契約は書面を交わさなくても成立させることができます。しかし口約束だけでは後になって揉め事になる可能性もあります。

たとえば、親に子どもが何人かおり、そのうちの一人だけを指定して家族信託をしたとします。

この場合、正式な契約書面が残っていないと契約内容を証明することができず、家族で争いの原因になることもあります。

その他、家族を信頼して財産を預けたのに、意図せず財産が悪用されてしまうかもしれません。

このような失敗を防ぐためにも、家族信託は契約書を交わしておく必要があるのです。

家族信託の契約書にはどのようなものがある?

家族信託の契約書の具体例としては、

(1)認知症対策のための信託
(2)不動産共有名義を避けるための信託

などが挙げられます。

(1)認知症対策のための家族信託とは、たとえば賃貸不動産の大家が認知症になってしまったような場合に備えて、大家を委託者、大家の子を受託者とするような契約です。

(2)不動産共有名義を避けるための家族信託とは、共有名義のデメリットを防ぐための契約です。

不動産の相続人が複数いる場合、そのまま相続すると共有名義になる可能性があります。

共有名義は一見、平等な相続に見えますが、実際には不動産の処分についても名義人全員の同意を得なければならず手間がかかるという面があるのです。

そのため、家族信託で管理者として受託者を1人決め、受益者を相続人全員とすることで、デメリットを解消しながら利益を平等に分配することができるようになります。

家族信託の契約書の記載事項

家族信託の契約書には必要な記載事項があります。下記[1]~[5]のような内容を盛り込みましょう。

[1]契約の趣旨

当該契約が、信託契約であるということを明らかにするために記載します。

[2]信託の目的

家族信託契約の目的について記載します。明確に記載しましょう。

[3]委託者、受託者、受益者

財産を預ける人(委託者)、財産を預かって管理する人(受託者)、財産から経済的な利益を受ける人(受益者)の情報を記載します。

一般的には「委託者=受益者」として設定して、贈与税を課税されないように注意します。

[4]信託財産信託財産の管理方法

信託した財産をどのように管理するのかについて記載します。受託者の権限の範囲についても記載しましょう。管理だけなのか、売却までの権限を与えるのか、などの内容です。

受託者に監督人(弁護士などの専門家)を付けることも可能です。

もし、親族内から受託者について批判がある場合などは、よく話し合いの上で意見を組み込みつつ、後年のトラブルにならないよう、慎重に決めていきましょう。

[5]信託の終了時期ついて

信託がいつ終わるのかについて定めておきます。

家族信託契約書の作成方法とは?わかりやすく解説

家族信託の契約書は、一定のルールを守れば、それぞれの家族に合わせた内容を自由に設計できます。

以下、具体的な契約書の内容についてご紹介しますので、参考にしてみてください。

最低限記載すべき事項(ひな形)

家族信託契約書は、通常必ず以下の冒頭文及び1条〜3条を入れます。こちらのひな形は、認知症対策として家族信託契約を締結する場合のものです。

「委託者〇〇(以下、甲)及び受託者××(以下、乙)は、本日、以下の通り信託契約を締結する(以下、「本契約」という。本契約による信託を「本信託」という。)。本契約締結の証としてこの家族信託契約書を作成し、正本1通を乙が保管し、写しを甲が保管する。

第1条(本契約の趣旨)
委託者甲は、受託者乙に対し、第2条記載の信託の目的を達成するため、第3条記載の財産を受託者乙に信託し、受託者乙はこれを引き受けた。

第2条(本信託の目的)
本信託は、受託者による適切な資産運用及び管理、保全を通じ、委託者甲の判断能力低下後においても、受益者の健康で文化的な生活の安定に寄与すること、及び、本信託を通じ、資産の円滑な承継を図ることを目的とする。

第3条(信託財産)
本契約で定める信託財産は以下のものとする。 ~信託財産を記載する~」

実際に作成する際は一言一句、同じにする必要はありませんが、誰が読んでも解釈が分かれることのないよう、正確に記載する必要があります。

4条以降の項目について

続いて、第4条以降について、一般的にどのような条項が入ることが多いか、解説していきます。

第4条:受託者…受託者の住所、氏名、生年月日、職業を記載します。

第5条:受託者の任務終了…万が一受託者が死亡した場合や、認知症などで判断能力がなくなってしまった場合の任期終了について記載します。

第6条:委託者、受益者…委託者および受益者の住所、氏名、生年月日、職業等を記載します。

第7条:信託の期間…家族信託の期間終了日は、受益者が亡くなったときと設定することが多いです。

第8条:事務代行…信託に必要な事務を特定の人に代行させることができる旨を記載します。

第9条:信託財産の管理および処分…信託財産を受益者の生活費や医療費などの支払いに充てる旨を記載します。

第10条:その他…その他、決めておきたいことがあれば記載します。たとえば、事務処理や代行費用にかかる支出が信託財産の額を上回った場合、誰がいくら負担するのかなどについてです。

第11条:契約変更…契約内容を変更したい場合は、当事者の合意により変更できる旨を定めておきます。

第12条:精算…清算後に残った財産について、誰が引き受けるのかについて記載します。

以上が4条以降の記載事項としてよく使われるものになります。

これ以外にも当事者で決めておきたいことがあれば、契約書に盛り込むことができます。後からトラブルにならないよう、話し合った内容を契約書に残すようにしましょう。

なお、信託財産の目録に金銭について乗せる場合には「金銭 金○○円」と記載し、口座番号などの情報は載せません。

なぜならば、金銭を口座番号で特定しようとすると、金銭ではなく、銀行に対する預金債権を信託したものと見えてしまうためです。

これは、預金債権は譲渡禁止債権であるため、信託そのものができないことが理由です。

つまり、委託者の口座番号について、信託財産として名義だけを変更して受託者が引き継ぐことはできないということも意味します。

そのため受託者は、信託財産を管理するための口座を別途開設し、委託者がその口座に送金して資金を移すことで信託をスタートする必要があります。

このように記載内容には気を付けるべき点もありますので注意しましょう。

家族信託契約書作成の際に注意すべきポイントを解説

家族信託契約書を作成する際、トラブルを避けるために気を付けるべきポイントを2点、解説します。

【1】契約書は公正証書にする

家族信託では、長期間を想定した内容の契約を結ぶことが一般的です。また、相続人が何人もいるなど当事者の範囲が広い場合もあります。

こういった契約では、契約内容の解釈を巡って相続人同士で争いが生まれることもあります。そのため、公正証書で契約書を作成することで契約についてのトラブルを回避できる可能性が高くなるのです。

公正証書であれば正確な契約内容を証明することができ、また、公正証書は役場で原本を保管してくれるので、もし紛失したとしても役場で内容を証明できます。

以上のことから、家族信託契約書は公正証書で作成しておく方が安心なのです。

信託契約書を公正証書で作成する重要性について
家族信託の契約書を公正証書で作れない!私文書締結の際の注意点

【2】ひな形の書式をそのまま真似しない

家族信託契約書の作成について専門的な知識がないまま、書籍やネット上のひな形に頼り過ぎて契約書を作成すると、自身が望む内容の契約書が作成できない可能性があります。

家族信託の内容は当事者によって千差万別です。書き方によっては税務上の問題に当たる可能性もあるのです。

ひな形はあくまで参考程度にとどめておき、自身の状況に合った内容で作成していきましょう。

また、内容については家族の事情を相談の上で、専門家からアドバイスを受けた方が、家族の意向を組み込んだ契約書を作成できる可能性が高くなります。

信託スタート後、修正や契約のやり直しが必要になったりするリスクを減らすためにも、最初の作成時に柔軟性を含んだ内容で作成することが重要です。

契約内容を後から変更する件について、こちらの記事でも解説していますので参考にしてみてください。
家族信託の契約内容を後から変更することはできる?

家族信託契約書は個人で作成できる?メリットとデメリット

インターネットで検索すれば、家族信託契約書のひな形を載せているサイトが出てきます。そういったサイトを参考にすれば、一人でも作成することは可能です。

ただし、以下のようなメリット・デメリットがありますので確認しておきましょう。

個人で作成するメリット

自分の力だけで家族信託の契約書を作成すれば、専門家に依頼するために必要な費用や手間がかかりません。

家族信託についてある程度知識があり、契約書の作成にあまり費用や手間をかけたくないという人にとってはメリットといえるでしょう。

個人で作成するデメリット

家族信託に関する専門知識があまりない場合、個人で最初から契約書を作成する作業は大きな負担となります。

家族信託は、自分や受託者などが亡くなった後のことも考えて契約内容を考えることも多いため、契約の当事者が複数人、かつ長期にわたる契約となるため、かなり複雑な内容となります。

出来るだけ後から変更しなくて済むように契約書を作成しようとすれば多大な手間がかかるでしょう。

また、もし契約書に不備があった場合、不動産が売却できない、銀行で手続きができないなどのトラブルが起きる可能性もあります。

そのような点に注意しつつ、個人で作成しても大丈夫かどうか検討してみましょう。

家族信託契約書の作成を専門家に依頼するメリットとデメリット

家族信託には、契約書を作る、受託した資産を信託財産として区分けする、信託登記する、などの作業があります。

自分個人で出来る部分もあるとは思いますが、専門家に依頼するとどのようなメリットがあるのでしょうか。また、どのようなデメリットがあるのでしょうか。それぞれ説明していきます。

専門家に依頼するメリット

専門家に依頼するメリットとしては、第一に、契約書の作成を専門家に依頼することで内容の不備や誤りなどを無くしていくことができる点にあるでしょう。

依頼主に合った家族信託契約の仕方についてアドバイスを受け、より良い契約書を作成することで、トラブルの回避につながります。

信託契約は、家族構成、資産、親族間のトラブルを想定して作成する必要があり、また、将来、相続が発生した時の資産の引継ぎなども含め、税務上も出来るだけ負担とならないよう、作成していきます。

契約書は個人で作成することも可能なのですが、実務経験のある専門家に依頼することで問題点を回避する内容で作成することができるようになります。

また、家族信託契約が成立してスタートした後も、資産や家族の状況により、信託契約に変更が必要となる可能性もあります。そのような際に、専門家から適切なサポートを受けることができれば、無用なトラブルや課税を防ぐことができるようになるといえます。

専門家に依頼する場合のデメリット

専門家に依頼する場合、個人で作成するよりも専門家報酬などの費用がかかります。

家族信託契約書の作成にあまりお金をかけたくないという人にとってはデメリットかもしれません。

また、どの専門家に依頼すべきか事前にリサーチする必要もあり、相談するための時間も手間もかかるといえます。

専門家に依頼することで得られるメリットとのバランスによる部分があるため、依頼するかどうかについては悩むところだと思います。

初回のみ無料相談をしている専門家も多いようですので、様子を見るためにも相談に行ってみてはいかがでしょうか。

家族信託契約書の作成を依頼すると費用はどれくらいかかる?

家族信託契約書の作成を専門家に依頼した場合、報酬は一律ではありませんが、相場は信託財産の1%程度とされています。

家族信託については報酬の下限を30万円に設定している専門家が多いため、金額的には30〜100万円の間となるケースが多いようです。

また、信託財産に不動産が含まれているかどうかによっても金額が変わります。不動産が含まれていない場合は、30〜70万円くらいを想定しておくとよいでしょう。

一方、不動産が含まれていると、信託財産全体の金額が多額になりやすく、信託登記をする必要もあるため、その費用も加算されます。おおよそ50〜100万円の間くらいになることが多いようです。

複数の不動産がある、遠隔地に分散している、などの事情により、さらに高額になる可能性もあります。

家族信託の費用についてはこちらの記事でも解説しています。
家族信託とは?メリット・デメリット・費用をわかりやすく解説

専門家に依頼する際に気を付けるポイントとは

相談先については以下のような専門家が考えられます。それぞれの特徴をご紹介します。

弁護士に依頼した場合

弁護士はあらゆる法律に精通した法の専門家です。司法書士や行政書士と比べても法律問題に関する権限が広いため、安心して家族信託の契約書作成を依頼できるでしょう。

ただし、その分費用が他の法律専門家より高くなる可能性もあります。

司法書士に依頼した場合

司法書士は、不動産登記や相続に関する処理など、民事関連の法律の専門家です。弁護士よりは権限の幅が狭く、あらゆる法律問題に対応できるわけではありません。

ただし弁護士に依頼するよりは費用を安く抑えられることが多いです。

また、信託財産に不動産が含まれている場合、その登記を依頼することもできます。

司法書士に依頼する場合は、家族信託の契約書作成に特化した司法書士に依頼するとよいでしょう。

行政書士

行政書士は、弁護士よりも契約書作成の費用を安く抑えられる可能性が高いです。

契約書の作成依頼にあまり費用をかけられない場合は、行政書士に依頼するのも手です。
家族信託の契約書の作成に慣れた行政書士を選ぶようにしましょう。

専門家への相談は充分に検討を

家族信託について検討し始めた場合は、信託の目的や信託財産の管理方法など、早めに考えをまとめていきましょう。

契約書そのものは個人でも作成できますが、法的な抜け落ちがあったり、記載が不十分だったりする可能性もあります。

信託財産について、どのような目的を持っているのかを明確にしつつ、相続を含めて後々トラブルを招かないようにすることが重要です。

そのためにも、契約書作成のプロに依頼したほうが安心だといえる部分があります。

ただし報酬の面やどの専門家に相談すべきかなど、比較したり調べたりする必要があるため、家族と相談しながら検討を重ねていってみてはいかがでしょうか。

この記事の監修者
梶原 隆央(かじわら たかひさ)

司法書士
梶原 隆央(かじわら たかひさ)

神奈川県出身/平成21年司法書士資格取得 トリニティグループの信託部門にて、実家信託から信託財産数億円に及ぶ信託、自社株式の信託等、幅広く信託案件に対応。

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